3Dプリンターで子供の夢を叶えよう 5歳児の「ぼくのかんがえたさいきょうのくるま」製作

今回は、3Dプリンターを使った実践編?として、私が最近5歳児に頼まれて製作した、ミニ四駆サイズの完全オリジナルカー「さいきょうのくるま」について紹介させていただきます。作っていて思いましたがこういうのって集大成で今までの経験やノウハウが濃縮されるんですよね・・・。たかが2.5年のノウハウですが、このブログ内にほぼ全ての情報が蓄積はされているので、3Dプリンター始める皆さんの役に立つといいなぁ。

子供のイラスト??を実現できる形に調整

うちの末っ子長男は車が好きで、よく自分で絵を描いたり、レゴで作ったりしています。今回はある日突然言われた、「この車を3Dプリンターで作って」という無茶ぶりからスタートしました。なお、子供が持ってきたイラストがコレ・・・。

5歳児が描いて突然持ってきた絵 これを作れと・・?

うん、車ってことはまあ、わかる。私自身は子供の絵は見慣れているので、後ろのがリアスポイラー(長男はしっぽとよく表現します)なのはわかりました。他は正直、よくわからない。いやこれ3Dでモデリングするの、普通に考えて無理でしょ・・・というのが僕の1stインプレッションでした。話を聞くと5歳児としては色々詰め込んだようですが(笑)

でも正直、子供の物を考えて作るのって自分のモデリングの勉強にはなるんですよね。なので詳細な情報をヒアリングして足りない情報を補足しながらモデリング出来そうな車にまとめることにしました。大まかなところを箇条書きにしておきます。(5歳児談)

  • スポーツカー
  • F1ぽいフロントウイング
  • 大型のしっぽ(リアスポイラー)付き
  • エンジンじゃなくてジェットが2つ
  • ライトは縦3灯
  • 1-2人乗り(どっちでもよさそう)
  • カッコよくて速い

これを聞きながら絵心がないなりにiPadで私が描いた「さいきょうのくるま」がこれになります・・・え?全然違う?でも本人が「そうそう、こんな感じ!」とテンションが上がっていたのでまあ良し。コンセプトと実際が少し異なるなんてよくあることですよ(笑)

iPadで描いた私の絵。そう、絵が上手くなくても3Dは出来ます!

シャフトは3Dプリンターで作れない ダイソーで入手

動力はまあハードルが高いとして、3Dプリンターで車のおもちゃを作るときに考慮すべき点が一つあります。それはシャフトをどうするかです。使ってらっしゃる方はよくご存じと思いますが、3Dプリンターではシャフトのような、細くて丸い棒を作るのは難しいです。特に細ければ、おもちゃとして実用的な強度になりません

代替案は色々あると思いますが、以前当ブログでも紹介した「ダイソー版ミニ四駆」をもう一台買ってきて、そのシャフトを流用することにしました。ハトメもついているので滑らかにころがすことができます。結果として車のサイズもミニ四駆サイズに決定しました。ダイソーミニ四駆についてはこの記事も参考にしていただければうれしいです。

Moi 3Dでプロトタイプのボディを作製

当ブログにもおおくきじがありますが、私は普段、Fusion360を使用してモデリングをしています。個人、趣味用途では無料で利用できるこのソフトですが、極めて高性能で素晴らしいです。ですが、今回はたまたま体験版を利用していたMoi 3Dというフランス製のソフトを使ってみることにしました。

このソフトはFusion360と同様、NUBUSのモデリングツールです。自由曲面を使うモデリングを感覚的に行えたり、様々なスクリプトで色々便利に使える、Fusion360のフォームモデリングとちょっと似ているツールです。あまりメジャーではないですがかなり気に入ったので体験版終了後に私は購入する予定です。そのうちレビューさせていただきたいですが、習熟には時間がかかりそうです(笑)

ホイールベースとタイヤサイズだけ決定してボディをモデリングしました。Fusion360であればフォームでやるところだと思いますが、1枚目のようにまずはベースを作りました。このソフトの凄いところはここからで、このつぎはぎのボディを色々操作していくと、すべてが滑らかに連続したUVも整ったボディが出来上がる点です。Fusion360のフォームモデリングで変なしわが寄ったり、サーフェスモデリングで継ぎ目が気になったりした経験がある方も多いと思うのですが(私が未熟なだけです、スイマセン・・・)Moiを使用すると非常にきれいな面が作れました。

こうしてまず出来たのがクレイモデル的なボディです。これはAnkermakeで作りました。試作は速いほうが嬉しいですよね。。あ、よく言われることですが、車のボディをきれいに作るときはこの写真のように傾けて造形するのがおススメです。屋根やボンネットは地面と平行に近いので、まっすぐ造形すると積層でガタガタになります。時間とサポートが増えますが、傾けて造形するとこんな感じできれいに出来ると思います。ぜひお試しを。

なお、シートやエンジン等の小物、タイヤもMoiでモデリングしています。形状を変更したり、タイヤの溝などは平面に溝の形状を作って後からタイヤ表面に配置するなど、まだ勉強中ですがとても面白いことが出来るソフトだと思います。

シャシーの設計 組み立て式プラモっぽくしてみる

ボディやジェットエンジンはMoiで作りましたが、シャシーや組み立て用のボルト穴等を作ったりするメカニカルなモデリングはFusion360の独壇場です。設計したボディに合わせて、M3ネジで各部品が止まるように、クリアランスを考慮して設計します。概して3DCADはブーリアンで形状を分割したり結合する際に形状がほぼ重なっているとエラーの原因になります。はやめにパーツ同士のクリアランスを確保しておいたほうが変なエラーが発生しにくいのでお勧めです。

プリントのしやすさや形状の細かさを考えた結果、シャシーはなるべくシンプルにサポート不要の形状とし、サスペンションを表現する部品など小さい部品は0.2mmのノズルを使うことにしました。コクピット部分もシートを違う色にしたかったので部品を分け別形状にしています。

設計完了

形が出来るところで、先日ご紹介したSnapmakerのデュアルエクストルーダーが到着しましたので、ボディ等も2色に出来るようになりました。2色造形する方法はいくつかあるのですが、一番シンプルなのはCAD上で色ごとに形状を分割する方法です。基準となる面などを作って形状を分割します。ボディやライト部分を分割して色を付けイメージが完成!Fusion360はレンダリングもできるので造形前に感じがよくわかります。

なお色毎にパーツで分けた際は、メッシュとしてエクスポートする際に3MF形式を選択するのが簡単です。3MF形式なら複数のパーツ情報を持ったままなのでスライサー上で位置合わせなどを行う必要がありません。取り込むときは1つのパーツとして読み込めば大丈夫です。パーツ毎に色を設定し、諸設定を行うことで多色印刷が可能になります。デュアルエクストルーダーの運用については下記記事も良かったらぜひ。

ガラスの表現は難しい

さて、パーツを作っていくわけですが、一つ問題になるのはガラスです。FFF(FDM)方式のプリンターでは透明部品を作るのはかなり難しいです。今回はフレーム部分は細いノズルで造形、補助形状を3Dプリンターで製作、ダイソーのレジンを用いて透明パーツを作るという手順で行いました。以前ご紹介したこれとはちょっと異なる方法ですが、参考にぜひご覧いただければうれしいです。あまり上手に出来ませんでしたが・・・。

3Dプリンターによる2色造形

造形を進めていきます。今回、メインのボディとタイヤ、コクピット部分は2色造形で製作しました。なおメインのボディは途中でワイプタワーが倒れて面白いことになりました。途中で気づいたのですが、ワイプ部分は後で取れるのでそのまま継続。出来上がりはこんな感じのもじゃですが、中に造形物が隠れています。ちょっと掃除すればきちんと2色造形が出来ていました。これ、ボディ本体には14時間くらいかかっているんですよね。最後のほうの失敗なので行けるかなと思ったのですが本当に良かったです。

他の造形も適宜進めていきます。0.2mmノズルでの造形も含め、このあたりのノウハウや設定もすべてブログ内にあります。良かったらブログ内を散策してみてくださいね。

ということで部品たちが無事に完成。これ、設計が完了した後は部品の造形しなおしはほぼしていません。部品は全てSnapmakerで造形していますが、クリアランスや穴径など、どんな造形設定でうまくいくかは概ね把握しています。こればかりは3Dプリンター製品固有の癖などもあるかと思いますので、一貫して同じプリンターを使うことで分かってくるところかなと思います。

まとめ

さて、出来上がった車はこれです!!現在私のTwitterのコテツイにもしてありますが、いかがでしょうか?Fusion360で表現されたものとほぼ同様になっているんじゃないかなと思います。5歳児も非常に喜んでくれましたし、父としても応用編として非常に勉強になりました。

3Dプリンターを使いこなしている皆さんからすれば「まあこれくらいは」かなと思いますし、これから買おうと思っている2.5年前の私のような方からすれば「いやこんなの作れる気がしないけど」かもしれません。でもヒアリングして企画して修正して製造して・・・というのは間違いなくモノづくりの基本プロセスだと思います。私は2次産業の人間ではないですが、ちょっとその気分(苦労?)を味わえたような気がします。

Twitterを見ていると最近3Dプリンターに興味を持っていただいてる方も増えているみたいです。当ブログをきっかけに3Dプリンターの人口が増えればいいなあと思っています。当ブログの最初のほうの記事を見ればきっと皆さんも「やったら出来るかも?」になりますよ!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!