FreeCAD入門 ver1.1devで使いやすくなったSketcher 図面から依頼品を作る 押し出しのみのワークフロー
今回はFreeCADの開発最新版、Ver1.1devにおける新機能の紹介と、これを使った依頼品作成の流れの紹介です。特にスケッチ回りが強化され、より使いやすくなっているのがトピックです。正式なバージョンアップが楽しみです。このバージョンだと、押し出し中心であればFreeCADのハードルが結構下がっていることを感じられるのではないでしょうか?
FreeCAD入門 記事複数あります
当ブログにはFreeCADの記事が結構あります。今Fusionをお使いの方が挫折しにくいように書いているつもりですが、やはりFusionは素晴らしいソフトです。一方FreeCADは不自由な面も多いのですがライセンスや商用利用における心配がない、オープンなCADですしVer1になって以降も活発に開発が行われている伸びしろがあるソフトだと思うので楽しんでいただければ幸いです。比較的新しいものがこちらになります。
過去いくつか機能を紹介してきましたが、今回はたまたまご依頼いただいたマキタ用のオフセットプレートを例に、Ver1.1の改善点を中心にお伝えします。FreeCADユーザーとしては純粋にできることが増えた感じです。Fusionユーザーからすれば「今まではできなかったのか!」の機能かもしれませんが、使いやすくなったのは良いことですよね!
最新版は1.1dev ボディの移動やSketcherがより便利に
FreeCADは複数の開発者の方が機能を追加、提案し日々成長しています。安定版としてVer1.0があるわけですが、FreeCAD weeklyとして開発版は文字通り毎週変化していっています。もちろん開発中なのでトラブルなども可能性はありますが、Ver1.1はスケッチ回りやボディの移動に機能が加わりました。
下図はボディの移動機能ですが、移動の基準位置が動かせるようになりました。・・・そう、今までこの機能はなかったんです。(アセンブリでは出来る)また、その基準を元に、他のボディに動かすことも出来るようになっています。これで移動機能もFusionに近づきました!この機能、個人的には大きいです。



Sketcherの新機能 プロジェクション機能の刷新
Fusionでも多用されると思われるスケッチのプロジェクション。FreeCADでもプロジェクションは行えたのですがあくまで参照線としての使用に限られており、プロジェクションした線をそのまま押し出すなどの作業が今までできませんでした。・・・できないことに驚かれましたか・・?でも今までは線を引きなおす必要があったのです。円や直線だとまあそれほど問題はないのですが、スプラインなんかだと結構面倒で、スケッチをコピーして持ってくるのが今までの主な手法だったと思います。
今回紹介するこの部品も外側部分は正確な寸法がない曲線で作られており、今までだとなぞるのが面倒なものになりますが、今回は直接プロジェクションした線を利用することもできます。(ただ、Fusionのように柔軟に線を切り貼りしたり、線の一部で囲まれた面を押し出すことはできません。)
また、あらたに交差プロジェクション(external intersection geometry)という機能が追加されプロジェクション機能が2つに増えています。今回は使いませんが、これはスケッチ平面と他の形状が交差する交点をプロジェクトする機能になります。そう、これも今までなかったんですよ。
下の3.4枚目がこの交差プロジェクションですが、スケッチ方向と垂直なエッジを選択すると、そのエッジとスケッチの交点がプロジェクトされます。Fusionでもこの方法は使うので嬉しいところです。




Sketcherのジオメトリ切り替え機能でプロジェクション機能を押し出しに使う線にするか、参照線にするかを選べます。(構築ジオメトリとの切り替えと呼びます。)白状態でプロジェクトすれば実線として扱われ、青状態なら構築ジオメトリとして扱われます。特に複雑なボディのラインを再利用して押し出す際に有用だと思います。図だとちょっと色がわかりにくいので、Sketcherの設定から変更で好みの色に変えてください。ちなみに今回はボディの色を変えました。新規のボディの色をランダムにする設定があり、私はそれをオンにしています。気に入らなかったら後から色は変えればよいので。





依頼品の作成① 図面の取り込みとスケッチ
FreeCADのVer1.1devを起動してパラメトリックパーツの作成を選びます。Part Designワークベンチが立ち上がって準備完了。過去記事にも書いていますが、現在のFreeCADはPart Designワークベンチから外に出なければかなり使い勝手が向上しているのでとっかかりとしておすすめです。
今回ご依頼いただいたのはマキタのトリマ用のオフセットベースというものです。寸法の概要を頂きましたのでまずはそれを取りこみます。FreeCADではビットマップ等を下図として利用できます。ドラフトワークベンチを私は使わない(使えない)ので、先ずは画像を普通に読み込みまずは向きと寸法調整です。取りこんだ図面をダブルクリックすると設定が表示されます。下の方、画像サイズ部分で調整を押して基準点を2点をドラッグして実際の寸法を記入します。図面はある程度透明にしておくのがいいでしょう。ここでは70%にしました。
縮尺があったら原点にしたい部分までの移動は、この画面ではなく右クリックの変換で可能です。至適位置に移動が終わったら、選択はされないように、ビュータブのselectableをFalseにしておけば選択できなくなります。なお透明度もこのタブからでも変更可能です。




スケッチはもうお馴染みですね。基準位置から寸法を入れていくとともに、拘束していきます。今回は外縁部分は詳細な指定がなく、こだわらないとのことでしたので適宜似た感じにしました。ミラーリングしていますが、拘束は一部です。FreeCADはミラーリングで過剰拘束になってしまうこともあり注意が必要だと思います。なお、拘束の自動削除は一見便利なのですが、いつの間にか必要な拘束が外れてしまうこともあり現在はOFFにしています。ということで必要に応じてミラーリングは寸法入力の前に行ったほうがトラブルが少なくなるかもしれません。今回はVer1.1の新機能も使用するためリブ部分は後回しにします。
なお、ネジ穴は後述するザグリになっていますが、中心さえ決まっていれば後でどうにでもなるのでリブ側のみを意識した穴径にしています。なお、3Dプリンターでこういった穴を作る場合、私は直径で0.2mm程度拡大しています。padで板状にしてみました。


依頼品の作成➁ リブ部分の作り方
ではプロジェクション機能を使ってみましょう。一旦ピンクの穴の開いていないボディを用意しました。padした上面に新たにスケッチを描きます。表示されているボディの外縁を全部プロジェクションしましょう。上部のツール群が青線の状態で操作を行うことでこの線は参照線になります。参照線が引けたら上部のツール群を白線の状態に戻してドラッグで全選択、オフセットします。オフセットの際はオフセット拘束を入れると拘束された線が引けます。大体の位置にしてからオフセット寸法を変更すればOKです。これでオフセットされた線が引けました。その後はポケットで3mm凹ませています。
なお、リブ部分の作り方は色々あると思いますが、FreeCADでは後から曲面をオフセットすることが仕様上出来ませんので、気を付ける必要があります。




では、ねじ穴を参考にリブを作っていきます。穴をオフセットして壁を作ります。先ほど紹介した新機能があるので穴をプロジェクションしてそのまま使用しましょう。下のネジ穴部分等は開けるべき穴と重なってしまっていますが後で穴を開けなおせば問題ありませんので放置で問題ないです。




また、今回はマキタのトリマが付く位置に合わせてリブを追加します。トリマの取り付け部分の図を頂いたので同じように画像を読み込んで配置し、この部分がカバーされるように円形のリブ部分を追加します。先ほどと同様に既存の穴が埋まっても気にしなくてOKです。他のリブもそれぞれの円の中心同士をつなぐ感じでスケッチを追加し全ての補強のリブを追加します。(下の絵では全てあけなおしていますが、実際はザグリ穴化をすぐ下の記事部分で行うので大きな穴部分のみでもOKです)






スケッチ周りの癖はやはりありますが、こういった押し出し作業であればFreeCADでも不自由を感じる機会は明らかに減っていると思います。興味を持っていただいた方は当ブログの他の入門記事もぜひ参照ください!
依頼品の作成③ 皿ねじ用のザグリ穴
今回は皿ネジが入る部分にザグリ穴が必要です。フラットな裏面からネジが入るのでねじ用の穴を作成します。穴を選択しホールを選ぶと各種パラメータの設定が出来ます。前述のように穴あけは私は直径から+0.2mm程度広げています。3Dプリンターの場合は積層する際の事を考える必要がありますので注意してください。
一般的に0.2mmで積層をしていくならザグリのヘッド部分の深さも含め、高さ方向の数字を偶数(0.2mm毎)にするべきです。依頼は0.5mmの深さでしたが、0.6mmに変更しています。他にも樹脂の収縮による寸法変化は考える必要がありますが、スライサー側で対応することも出来ますし今回は割愛します。私は設計等含め完全など素人ですが、3Dプリント前提の設計って普通のものとちょっと違ってくると思うと興味深いです。



依頼品の完成 強度を得るためには壁を厚くしましょう
出来上がったら印刷です。今回は硬さがあったほうが良く、熱への配慮が不要で寸法も狂わないので相談の上PLAとしました。こういうモノならPETGや強化線維入りもいいんじゃないかと思います。手元で合わせられないと材料の収縮があるABSはちょっと不安があります。底面の平面性もどうしても失われがちですし。
個人的には、今度Polymakerから比較的熱に強いPLA(どういうことかわかりませんが)が出るとのことで、汎用性の高い材料になることが期待されます。どこかネガティブ要素がないといいけれど、出たら買ってみようと思います。
さて、実際の印刷ですが、強度を得るために素材は勿論、印刷設定で壁を厚くする必要があります。強度に寄与するのはインフィルよりも壁です。材料が必要ですが場合によっては寸法に注意しつつインフィル100%で印刷するのも手ではあると思います。また、リブ部分の見た目を重視するのであれば表面のみ壁1層で行うと統一感が出ます。
実際にお送りして依頼主さんのところで取り付けていただいたところ、寸法、ザグリ穴等含めばっちりだったとのことです。長く役に立つといいなぁ。ところで、このプレートなんかかわいいですね・・・。




進化するFreeCAD 今後もよろしくお願いいたします
ということで最新Ver1.1の情報でした。Fusionは便利で素晴らしいのですが、FreeCADもだんだんと使いやすく変化してきています。特にこの1年での進歩は素晴らしく、大いに期待できますよね。私は開発などを行ったりお手伝いする力がないので使わせていただいている一方ですが、このブログのような形で「FreeCADってどうよ?」の声に答えていけると嬉しいです!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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