インストールすら不要のモデリングソフト Womp が面白い 3Dプリンターで「カワイイ」を手軽に作ろう 無料でOBJ、STLに出力可能です

Webブラウザ上で動作し、ハードウエア不要無料で遊べるモデリングソフト「Womp」のご紹介です。Googleアカウント等があればインストールすら不要で、通信環境さえあれば誰でもカワイイが作れる・・はず。非常に個性的なので向き不向きはあるあるものの、初心者から熟練者まで、3Dプリンターユーザーの皆さんにはぜひ遊んで欲しいソフトです。

Wompとは? 「カワイイ」ものに特化

Wompは2022年にアルファ版としてサービスが開始されたモデリングソフトです。日本であまりユーザーは多くないようで紹介記事も少ないですが、ものすごく特徴があり、インストールすら不要です。主な特徴は下記の通り

  • webベースのクラウドソフトウエア
  • インストール不要 必要なのはネットワーク環境のみ
  • マテリアルを含めた描画もサーバー上で行われるため負荷は最小限
  • メタボールベースの基本形状 出来るのは加算、減算のみ(有料版は交差も可能)
  • ソリッドに特化 STLのみならずobj形式で他ソフトへのエクスポート含め無料

Wompのページを見るとわかるのですが、出来るのは基本的に可愛いものです。自分が主に利用しているFusion360をはじめとするCADソフトは、基本的に寸法など含めカッチリしたものを作るのに向いている(と私は思ってます)のですが、このWompはその対極にあってゆるふわなモデリングです。自分もそうですが、芸術的センスがあまりなくても可愛いものが作れてしまうこのソフトは、3Dプリンターユーザーのすそ野を広げるためにも大いに役立ちそうな気がします。

特に最近、マルチマテリアル、多色造形可能な3Dプリンターも広がり一大トレンドになっています。これを機に可愛いものを作れるようになっておくと幅が広がりますよね。また、今後増えてくるかもしれない?3Dプリンターを買ったはいいけど、モデリングはしたことないなぁ、というあなたにもお勧めしたいです。是非最後までお読みください!
なお、リンクはこちらです。

基本的はメタボール 自由がないゆえに扱いやすい

このWomp、モデリングソフトとしてパッと見ると、極めて自由度が低いです。Blenderのような万能モデリングソフトと対極にあり、決して競合することは無いと思います。逆に言えばツールが限定されているがゆえにモデリング初心者にとって非常に敷居が低く、迷わないという利点があります。何せブラウザで動作しますから、PCどころかタブレットやスマホですら利用が可能です。(画面の制限などはありますが)

まずは全体のUIです。PC画面ですが、左に追加した形状、右に選択した形状の設定というオーソドックスな感じです。下側はショートカットのようなもので、形状やマテリアルのシャッフル等が選んでいるモノによって表示されます。最初に表示されるこの形状でなんとなく機能が分かるのも良いところです。

この最初のものは3種類の形状からできています。異なるマテリアルの立方体と球が癒合しつつ、立方体の中にはnegative volume (ネガティブ、引き算の形状です)の球が入っています。基本はこれのみ。形状が3つなのに、かわいいですよね。これを積み重ねると色々表現が出来る、というのが面白いところです。試しに左側のタブで形状を変えてみましょう。球を円柱に変えるとこんな感じ。また、中央のネガティブになっている球体をポジティブに変えると4枚目のように四角に埋まった玉になります。

これらの操作をするのは右側のタブで、合算される形状(Union)毎に各形状を追加していきます。それぞれの形状についてポジティブか、ネガティブか選択できる感じです。基本形状(四角、円柱、球)の他、球が連続したカーブ形状やそれらの応用図形を選んで造形を行います。UIは英語ですが、かなり簡単なものですし、イラスト付きなのでそこまで苦手意識を持つ必要はないと思います。

同時に形状の細かさなども設定が出来ます。特にカーブ等の形状ではこの値によってガタツキ感が変わるので、シーンが大きい場合は調整が必要だと思います。Healthタブに切り替えるとサーバー側のメモリの使用量が確認できますので、最終的に出力するときにはなるべく細かくするのがお勧めです。・・でも最初は何も考えず楽しく作ればいいと思います!

右側のタブでは各形状の調整が出来ます。特に形状全体の癒合しやすさ(範囲のようなものです)を調整するChild’s Goopと、各形状毎の癒合しやすさを調整するGoop、また、立方体形状の角の丸みを調整するRoundnessは形状に大きく寄与します。言葉で表現するとちょっと難しく感じますが、実際試すと感覚がなんとなくつかめるのではないでしょうか?例えば大きなネガティブボリュームで上から押さえれば球がゆがんだり、くっつけた後から丸みを変えるなどすれば形状はリアルタイムに変わるので、わかりやすいと思います。非常に簡易ではありますがミラーもあります。

右上には主に視点等の調整等の機能があります。遠近の見え方調整、視点を中心に持ってくる、スナップのオンオフ等がまとまっています。特に迷うことはないでしょう。3DCGソフトが初めてで英語が出来なくても問題なく使えると思います。

マテリアルは形状毎に設定したりブロックごとに設定できます。レンダリングも含めサーバー側で行われるので負荷がかからないのも美点です。ただ、最近有料プランが設定され、ベースとして選べるマテリアルには制限があります。またライティングも上部のタブから変更、追加が可能です。ライトは角形、球形、ドーム型を選んでオブジェクトとして追加していきます。

・・・まあ、3Dプリント用途であれば関係ないですが、多色造形で色を分けたり、塗装前提で考える場合などイメージがわきやすいのでありがたい機能です。なお、環境マップもいろいろ選べますが一部はPro機能です。

3Dプリンターとの相性が良い

ちょっと難しい話になりますし、すでに3Dプリンターで色々制作されている方には釈迦に説法になるのですが、3Dプリンターで印刷するためにはデータが体積を持っている必要があります。これ、滅茶苦茶大事です。厚みがない、面だけの形状は3Dプリントできません。よく板ポリゴンとか呼ばれるもの、もしくはサーフェスと呼ばれるものがこれにあたります。3Dプリントするためには厚みがある必要があるんです。よく考えれば当たり前なんですが・・・。そういった意味では一般的なCGソフトは必ずしも3Dプリンター用ではないと思ってください。

その意味ではこのWompは3Dプリンター向きです。メタボールという最初から体積を持った物体を組み合わせて形状を作っているため、基本的には必ず体積を持った形状(ソリッド形状)を作ることができます(薄くしすぎて印刷できない等はあり得ます)。そのため後述しますが、Womp上で作ったデータは概ねそのまま3Dプリントできてしまうのです。主観ではありますが、特にモデリング初心者にはうれしい仕様ではないかと思います。装飾にこだわらなければ、現状交差以外のモデリング機能は無料版でも制限されていません。

せっかく買った3Dプリンター、やはり自分で作ったデータを印刷してみたいですよね?やはりこのソフト、そんな方の初めてにはもってこいなのではないかと思います。何も必要ないのは、やはり強い・・・!

空飛ぶロケット新幹線や猫のハロウィングッズをモデリング

ということで、私もWompを使って「かわいい」を作ってみました。今回紹介する一つはTwitterでご縁のあったやまごんさんに原画(?)を頂いた空飛ぶロケット新幹線です。このロケット新幹線、めちゃよくないですか?元のツイート見て「これ欲しい、作ろう!」と思わず思ってしまった経緯があります(笑)

もう一つは私も使用しているテクダイヤの国産ノズルkaikaが企画するハロウィングッズです。当ブログでもKaikaノズルの記事はいくつもあるので是非見てみてくださいね!

この2モデルは、どちらも普段私がCADで製作するちょっとかっちりしたモデルと比較して基本的にやわらかく、「かわいい」データだと自負しております(笑)

最終データは後述する通りBlenderに一度持って行って修正、加工を行っています。元データに興味がある方はリンクからWompのページに飛ぶことができるのでぜひ。Wompのアカウントが必要ではありますが、ぐるっと見ることが出来ると思います。

一見複雑に見えても、結構適当な形状で構成されているんですよ、これ。

たとえば空飛ぶロケット新幹線は、大まかなカーブ形状に対して赤色の複数のネガティブボリュームを設置し新幹線の主な形を作っています。また、猫のハロウィングッズでは猫の形やカボチャの形状とも、基本的にカーブ形状を癒合させているだけで難しいことは一切やっていません。

こんな感じで、非常に緩いモデリングが誰にでも楽しめる、これがWomp最大の特徴だと思います。CADを普段使われている皆さんもこれで緩いモデリングするのは全く別な味わいなので、すごく楽しいと思うんですよね・・・。

STLやobj形式で出力 パーツ毎の出力もBlenderでの加工もOK

あと、この手のソフトウエアとして、少なくとも2023年時点で無料でエクスポート出来るのは非常にうれしいところです。3Dとしてエクスポートする際は他のソフトで扱えるよう、形状毎に別メッシュにする「General」と、そのまま3Dプリンターに持っていけるようすべての形状をマージしたメッシュにする3D printが選べます。やはり当初から3Dプリンターで利用することを想定しているソフトなのが判ります。

後処理を別ソフトで行う場合はGeneralとし、OBJ形式にするのがBlender等に持っていくにはいいと思います。とりあえず全部をプリントしたいなら3D Printを選んでSTLで保存し、そのまま3Dプリンターのスライサーで開けば大丈夫です。本当に敷居が低くて素晴らしいですね。こういった基本機能はこれからも無料で使えるとうれしいですね。

他2枚はBlenderに持って行ったあとのデータです。wompは膜状の物体を作るのは難しいのと、ジャックオーランタンの顔などをブーリアンしてくりぬくのはBlenderのほうが楽です。新幹線も台座やロケット下部の灰色部分を別パーツに分けるなどもBlenderでやりました。汎用性のあるOBJで出力すれば加工もやりやすいですし、場合によってはスカルプトで修正したりも行えます。

シェアもお好みで可能 ぜひ遊んでみてください!

いかがでしたでしょうか?私はこのソフトを非常に高く評価しているのですが、実は最近の有料化の流れで他の方の作品のリミックスが有料になりました。今までは「これ、どうやってできているんだろう?」という形状があったらそれをリミックスすると構造が判明し「なるほどー!」と思えたのですが、今後有料化します。無料のトライアルがあるので、トライアル期間に気になるものをリミックスで自分のプロジェクトとして持っておくとよいのではないかと思います。

また、作った作品はWomp上でシェアすることが出来ます。海外の方からコメント頂いたりも出来るので興味があればそういったコミュニケーションも面白いかなと思います。癖はあるもののこれだけ面白いソフトなのである程度有料化は仕方ないと個人的には思っていますし、必要に応じて応援したいですね!

ということでぜひ皆さんに遊んで欲しい、非常に魅力あふれるこのソフト。一緒にカワイイを作りましょう!(ちなみにこの記事、Wompとは全く利益相反はありません。)それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!