高速対応PLAフィラメントの新顔 SK本舗 RAPIDUS 500レビュー Bambu labを意識した定期購入というアイデアも面白い

2024年7月12日

2024年7月12日に新発売されたSK本舗さんの高速対応PLAフィラメント、RAPIDUS500。コンテストの賞品として頂きましたので使い勝手をレビューさせていただきます。PLA+としてきれいに出ますし、値段も高くないので定期的にPLA使われる方にはお勧めできると感じました。あ、単品でも買えます(安くはないけど)

はじめに

私は先の3Dプリンターで作るおもちゃコンテストでこのRAPIDUSを頂きましたが、別にSK本舗さんから直接何か依頼されたわけではありませんのでこの記事を書くにあたって特に忖度はありません。使ったままのレビューですのでそこはご安心ください。ただまあ、SKのマットフィラメントは以前から愛用しており、今回のフィラメントにも期待していたことは確かです。コンテストの記事はこちらです。

SK本舗の新フィラメントはPLA+ キーワードは定期購入

まず、このフィラメントはPLA+です。今までSK本舗オリジナルは私の記憶が正しければ最初はPLAとマットPLAがラインナップされ、現在はABS、ASA、TPUが追加されています。私は主にマットPLAでお世話になっていて1kg2800円で安く購入できる事が多かったのですが、最近は原料や円安の影響もあるのでしょう、1kg3800円が基本になっており、決して安いフィラメントではなくなっていました

今回新たにPLA+がラインナップに加わるわけですが、普通に購入した場合は同じ3800円/kgになります。が、非常に興味深い購入方法である「定期購入」だと、なんと半額になるんですよ・・・!また、価格もそうですが販売方法も挑戦してきたのは非常に面白いと感じています。PLAを定期的に購入する層にしか響かないわけですが、Bambuなど多色印刷を行うと大量にフィラメントを消費するので需要は確実にあると思います。なおキャンペーンページはこちらになります。

フィラメントの特徴 Bambu等を意識した仕様

私はBambu labのプリンターは所有しておらず、うちの子たち(Snapmaker、Ankermake、VORON 0)も元気なので現世代の多色印刷機に手を出す予定はないのですが、Bambu機は総じて優秀な子みたいですし確かに誰かに勧めるなら私もBambuにしておいたら?と言いますね。AnkermakeはAnkerのやる気も不透明ですし・・。

ということでこのフィラメントRAPIDUS 500は(おそらく)BambuやCreality K2 Plus Combo他、今後各社から出てくるであろう高速多色印刷機を念頭に置いたフィラメントです。私が主に感じた特徴は以下の通りです。

  • なんといってもプラスプール
  • エンクロージャーなしで使用できるPLA+
  • 高速印刷対応
  • 色のバリエーションが最初から豊富

そう、AMS等多色機で悪名高い?段ボールをロール部分に使用せずプラを使用しています。そのうえで芯は段ボールにしてるんですよ!ロール部分のプラのデザインもなかなか良い感じ。

そのうえで多色印刷にも向いているPLA系で高速印刷に対応し、色も豊富で定期購入の場合は2回目以降の色選択も自由な仕様としています。多色印刷3Dプリンターのニーズにこたえた優秀な商品設計だなぁ、と感心しきりです。

懸念点は?

先に懸念点も挙げておきます。写真を見ていただければわかりますが、このスプール、芯は段ボールでフィラメント終端が結構折れ曲がっています。AMSってこれくらい折れ曲がっていても問題なく最後まで使い切れるのかな??ちょっと現物がないのでわからないのですが一番の懸念点がここです。

幸い目視できるのでこの部分をあらかじめ切ってしまうなど対応が必要になる可能性があると思っています。ぜひ皆さんご確認を。

ほかは日本の夏場、湿度管理しない方が色々な色を購入して、その辺に放置してしまうのではないか、という懸念です。PLAは湿気に弱く、長期保存で材料の劣化が進みやすいです。いざ使おうとなったらパキパキ割れてしまった…なんて悲しいですよね。。

なお、使って放置しておくと、このフィラメントは折れやすいと感じます。使おうと思って引き出したらポキッと折れているシーンにたびたび遭遇します。やはり基本硬いフィラメントなんですよね。PLA+らしいといえばらしいですが。

個人的には定期購入に際して、SKさんから長期保管の際の注意点や劣化についてはしっかりアナウンスしておいたほうがいい気がします。今まではかなりコアな?ユーザーが多かったので表面化しませんでしたが、今後ユーザー層が拡大するにあたってあまり特性を意識せず購入される方が増えると思うので。湿気の悪影響については良かったら以前の当ブログもぜひご参照ください!

あと、この辺はこだわりの問題なのですが、SK本舗さんのフィラメントは以前から製品のデータシート(SDS,TDS)がないです。SDSは安全性データシート、TDSはテクニカルデータシートでどちらもあると利便性も高まりますし、特性もよりわかりやすくなるのですが・・・

この辺がしっかりしているのは私もよく使用しているPolymakerさんですね。。下記にリンクを置きますが、製品ごとにちゃんとデータシートが公開されています。

印刷時はPressure (Linear) Advance調整を推奨

当方で色々印刷した限りでは、PLAなので一般的な条件で特に困ることはないと思います。高速対応PLAフィラメントについては当ブログでも下記記事がありますのでこちらも良かったら参照ください。当方のざっくりとした印刷条件はこんな感じです。PLAと同じですね・・・

  • ノズル温度210度
  • ベッド温度60度
  • フロー 0.98
  • リトラクション0.5mm リトラクション速度 40mm/s 
  • 速度、加速度はお好みで!

最近、糸引きが多い、との話題を見ました。当方ではあまり気になっていないのですが、フィラーが多いのが原因かもしれません。私は普段、Z-hopをOFFにしています。Z-hopはノズルと印刷物の衝突を防ぐのに有効ですが、特にフィラーが多いフィラメント(+とか)だとホップした際に糸引きの原因になってしまうので、OFFにしてます。

個人的にはこのRAPIDUSもこれら高速対応PLAと同様の特徴を持っていると思います。Bambuだと自動なのかもしれませんが、流れやすいフィラメントですし初回使用時はPressure Advance(Linear Advance)調整をやっておいたほうがいいです。今回、Ankermakeの場合ですと0.02程度になりました。リニアアドバンスについて興味がある方は一度下記記事もぜひお読みいただければと思います。

また、夏は冷却不足に陥りやすいですので、壁3層の場合はOrcaslicerやBambu studioでは壁の印刷順序をinner/outer/innerにすると壁のクオリティを保ちやすくなると思います。オーバーハングには弱くなる可能性が高いので必要に応じて使用してください。

なお、最近は測定用パターンの印刷はこれです。とても見やすいんですよね・・・下にリンクを貼っておくので是非見てみてください。Ellisさんに感謝を!角が分厚くもスカスカにもならないところが至適値です。ベッドのサイズや速度等入力することで測定用Gcodeを作ることが出来ます。ただ純正スライサー使うわけではないので、ご利用は自己責任でお願いいたします。

実際の印刷

まず先程のリニアアドバンスを調整していない状態で印刷したものがこちらになります。一見問題ないように見えますが速度が変わる角等で厚みが変わっているのがわかります。こんな感じになった場合はリニアアドバンス調整が役立ちます。

速度を上げすぎるとオーバーハングが荒れます。オーバーハング耐性が今までのものより改善しているとの事ですが私にはわからなかったです。エアコンをつけていない室内で昼間印刷したら、オーバーハングはふつうにダレました。特に箱型のプリンターは温度が上がりやすいので注意が必要だと感じます。今の時期は遠慮なくFanは100%にしましょう。

色々と条件もわかりましたので大物も印刷してみました。速度は欲張らず、これで5時間くらい。最近作っている車です。車は積層を均すために斜めに傾けて印刷するのですが、サポートが結構必要になります。Treeサポートは非常に使い勝手が良いのですが、PETG等フィラメントによってはサポートとモデルが剥がしにくくなります。またマットPLAでは層間密着性が良くないとモデルやサポートが折れてしまうこともあります。

このRAPIDUSは今回使った範囲ではサポートもかなり固く非常に安定しているほか、モデルの分離もしやすく優秀でした。百聞は一見に如かず、下記をご覧いただければと思います。積層は0.2mm、ノズルも0.4mmですが印刷品質は良好です。ツリーサポートのz距離は0.2mmで積層と合わせています。力をかけてもサポートが破断しないのはPLA+を感じますね。

サポート本体や剥離面には細かい繊維?が見えます。この辺がPLA+の所以かな??表面にはないですしすぐ取れるので悪影響はないと思います。サポート単独でもかなり強い感じでなかなかへし折れません。なお、PLAなので高温には弱いです。ベッド温度60度だとふにゃふにゃです。

PLAは通常使う範囲で基本的に印刷の失敗が少ないフィラメントですし、そういった意味でも時間がかかる多色印刷には対応しやすそうだと感じました。つや感はホワイトの感想になりますが、マットでもつるつるでもない、中庸な感じです。おそらくPLA+のためのフィラーがこの質感を出しているのだと思います。従って小径ノズルはやめておいたほうが無難そうです。

PLAを多く使うなら損のない選択肢

まとめです。初心者の方が積んでしまう懸念はありますが、非常に挑戦的な価格で、まさに今のニーズに合った新しい販売方法を提案してきたSK本舗には拍手です。

PLAで多色印刷をメインにやられる方など、非常に有用なのではないかと思いますね。一方商品として何か作る場合はPLAだと温度面等で制限が入りやすい為注意は必要になります。PLA中心に色々作られている方はぜひこの定期購入を検討されてはいかがでしょうか?

ということで、今回は初めて当ブログに来られた方にも色々情報を提供できるようにリンクなどが多く入っています。3Dプリンター始める方がこのブログを見て、色々役に立ててくれたらうれしいなぁ。今までお付き合いいただいている皆様も含め、最後までお読みいただきありがとうございました!