高速印刷対応PLA 3種類を購入 フローレートがギリギリな状況で効果を発揮

2024年3月31日

昨年頃から見かける高速造形に対応したというPLA。興味本位でeSUN、Creality、Polymakerの高速造形対応PLAを購入してみました。物理的に何が変わっているのかは勿論分かりませんが、普段使いとしてはPLAと大きな差はない印象で、エクストルーダーに余裕がない場合には良い選択肢になると思います。後はコスパ次第ですかね・・・。

高速印刷対応のPLAって?

最近ブログでもちょくちょく話題に挙げていますが、最近発売されている3Dプリンターの印刷速度はかなり早くなりました。Snapmakerではせいぜい通常80mm/s程度の速度ですが、CoreXY機や一部のプリンターでは250mm/sとか500mm/sも珍しくなくなっています。そうした最新のプリンターにマッチするように開発されたのがこの高速印刷対応のPLAになります。

とはいえ、皆さん普通の材料で特に問題なく印刷出来ているとも思うんですよね。一体何が違うのだろう・・?ということでちょっと気になって購入して使ってみたのが今回のブログになります。購入に当たってまずは違いを各社HPの資料から確認してみました。リンクもこちらに貼っておきます。

リンクのうち上2つはプロダクトそのもののページに記載されたないようですが、Polymakerだけは技術的特徴をコラムにしており、詳しく記載されていました。どのメーカーも基本的には同様で以下の3点が改善点と謳われています。

  • 流動性の改善
  • 冷却特性の改善
  • おそらく結果としての高速印刷時の精度や強度の改善

樹脂が加熱されやすくなったり、ある温度での流れがスムーズになったり、柔らかくなりすぎるとオーバーハングに弱くなってしまうのでノズルからでたら速く冷える、そんなイメージでいいんじゃないかと思います。要は

「熱し易く冷め易いフィラメント」という理解で良さそうだと思います。なお、最近このシリーズではPETGも販売されているようです。ただ、元々PETGはフローレートという観点から言うと速度を出しにくいフィラメントなのでその辺りがPETGの良さを活かしたまま改善されているのかは興味がありますね・・・。

購入した3種類

今回購入した3種類のフィラメントは色がちょっと異なりますがリンクにもあげた3社、eSUN、Creality、Polymakerです。右にAmazonリンクも貼っておきますのでよかったらご利用ください。

なお、申し訳ないのですがeSUNのものは印刷したものが何かわからなくなってしまい、既に使い切ってしまったので今回写真がありません。ごめんなさい。

でも購入して実際使用してみて思ったのは、この3種類、あまり差を感じないんですよね・・・。特にCrealityってeSUNのOEMとかではないのかな?と思ってしまいました。印刷した感じが全然変わらないんですよね。なのでCrealityの結果がeSUNの結果と思っていただいて個人的には問題ないと感じています。

どちらにせよ、この「高速対応PLA」という商品、明らかに各社の登場時期が被っていて樹脂の素性なんかもおそらく非常に近いんじゃないかと思います。まあ、素人の感想なのですが・・・。

ということで高速対応PLAを試すなら安いものが良さそうです。Polymakerがちょっとお値段は高くなる傾向ですが手に入るものでお試しいただければ。

なお、一応3社の推奨温度などは若干の差異があります。全く同じものであればここも同じになりそうなので、若干は違うのか、会社によって基準が違うのか、それともテストしたプリンター側の因子(ホットエンドの性能差)で変わったのかは分かりません。いずれにせよ似たような温度ですし、通常のPLAの設定で問題ないと思います。

Ankermakeでは印刷品質が明らかに向上

ということでAnkermakeで使ってみた結果です。個人的な感想になってしまいますが、Ankermakeでは非常に良い結果を得ることができました。温度220度、速度は確か250mm/s程度です。特にコーナー付近で差が顕著です。Marlinで制御されているAnkermakeは現時点できちんとInput shaperが当てられていないためか、高速造形時のゴーストがでたりややぎこちない制御な印象があります。フィラメントの色の差もあるとは思うのですが、同じリニアアドバンスが調整されている状態でも、コーナー周りの流れが綺麗です。オーバーハングもなめらかでAnkermakeの性能がちょっと上がったような印象を正直受けました

とはいうものの、ハードウエアが変わるわけではないので、向上した分は実は制御の問題ではなく、ホットエンド側の問題も混合していた可能性が浮上しました。Ankermake M5のホットエンドは公称でフローレートが24 mm³/sとちょっと低いんですよね。高速造形時の樹脂の絶対的な流動性の改善が効果的であった可能性があるんじゃないかな、と思います。

ちなみにAnkermakeの方はMarlinファームウエアではありますが、近日Power Boost 3.0というInput shaperの技術?が入る事が予告されています。最近の高速造形機(BumbuとかK1とか、Adventurer5Mとか・・・)と較べられると弱い印象のAnkermakeなのでコスパ面含め頑張っていただきたいところです。

これくらいの速度で印刷しています

他にも色々印刷しましたが、どれも非常に結果が良く少なくともAnkermake との相性は非常によかったです。以上からホットエンド側にゆとりがない場合はかなり威力を発揮してくれそうな印象があります。デフォルトで使いたいくらいの結果です。

我が家のVORONでの効果は速度次第

では、VORONだとどうか?というところですが、わが家の通常の印刷速度、250mm/sくらいだと正直あまり差がわかりません。フィラメントの個体差、というくらいで普通のフィラメントでも全く問題なく印刷できてしまいます。VORONすごい。

コレにはおそらくホットエンドの差も大きいと思います。我が家のVORONはホットエンドがハイフローのPhaetus Rapidoになっており、公称で40 mm³/sとかなりゆとりがあります。250mm/s程度だとノーマルのフィラメントでも十分なフローが出るんじゃないかなと。冷却についてもサイドフローもついてますし、パーツクーラーもDragon Burner Toolheadなので径が大きいです。結果として大きな差が出なくなっているんじゃないかと。まあ、個人の感想ですが。

ということで温度は200度のまま、速度を500mm/sに上げると、差が見えてきます。お出しするのは例の船です。側面のフローが通常のフィラメント(これはSKのマットライトグレー)だと乱れてきます。これはやはりフローがやや不安定になっているせいではないかと思うんですよね。ということで200度という標準的な温度でフローギリギリで出してみました。結果がこちら。上が気に入っているノーマルのSKマットPLAです。側面を見ると結構差があるのがわかると思います。乱れが少ないですよね。ただ、冷却性能については正直よくわかりませんでした。

これはPolymakerのものですがCrealityのものでも同様の結果です。Hyper PLA白での結果が下のものになります。

次に温度を220度にあげてみました。SKのフローが良くなったり、冷却を見てみようかと思ったのですが・・・結果としてはあまり変わりませんでした。左が200度、右が220度です。SKのライトグレーも誤差の範囲な気がします。黒のPolysonic PLAについては温度が高くなったことで逆にやや結果が悪化したように思います。ハイスピードの推奨温度ど真ん中なんですが、原因ははっきりしません。ちょっとつや感が変わっているもののVORONでは温度を上げる必要は感じず、200度でいいんじゃないかと思います。オーバーハング的にもこれからの季節、積層間強度等の問題なければ低めの温度が良さそうです。(温度が下がると強度が下がる場合がありますのでご注意下さい。)

というか、とくに高速対応PLAとはいえ速度オール500mm/s、加速度1万mm/s2なのに綺麗すぎると思いませんか・・・?Prusaslicerで特にひねりもなく普通に印刷して20分くらいでできるんですよこれ。さっきも言いましたがVORONスゴイ。

日本だと夏場に効果が発揮できるかも

ということでこの高速印刷対応フィラメントが活かしやすいケースを考えてみると、個人的には以下の2点があると思います。冷却性能のほうは今回はあまりよくわかりませんでしたが・・・。

  • ホットエンドのフローレートが理論値に近づく程度高速印刷時(250mm/s以上?)
  • 冷却不足が懸念される時(環境温度が高い オーバーハングを綺麗にしたいなど)

特に個人的には今年、高速造形機が一気に普及してから初めての夏がやってきた時が一つのポイントかもしれません。みんな夏場しっかりエアコンが効いた部屋でプリンターを使うわけではないと思うんですよね。特にPLAは夏が苦手です。ただでさえ冷却不足に陥りやすくなるので、日本の夏場にはもしかしたら高速印刷対応フィラメントは福音になるかも?と感じました。夏になってみないとわかりませんが、また夏場に機会があったら購入してみようと思います。

あとはお値段 コスパ次第で一度お試しの価値はあります

いかがでしたでしょうか?高速印刷対応PLA、興味湧いてきましたか?個人的には所詮はPLAということでそこまで単価が高くないのは良いことだと思います。もちろん安いPLAよりはしますが、試しに購入してみる価値は十分あるんじゃないかなと。特に使いにくい側面はなく、今回試した範囲では純粋にPLAのやや上位互換、といった印象なのでコスパが良ければ良い選択肢になると思うんですよね。あとはこの夏場の状況次第で、予想通り夏場高温環境での特性が良ければ日常的に使いたくなる方も多そうです。

コスパ次第でご検討いただければいいのではないか?というのが今回3kg使ってみての感想です。
それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!