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Fusion使っている人向けFreeCAD 入門 Curvesワークベンチ実践編 薄い押し出し風テクニック

複数回に分けていろいろな機能をお伝えしているFreeCAD入門。今回はやはりCurvesワークベンチから、ちょっと使いに便利なテクニックのご紹介です。それがCurve on Surface。興味がある方、是非お付き合いください。ハードサーフェス系モデリング等に役立つと思います。

Curvesワークベンチの基本はこちらから

シリーズものなので、必要になるのがこのCurvesワークベンチの基礎。このワークベンチは癖がありますがめちゃくちゃ有用なので、よかったらこちらもご覧ください。

また当ブログはFreeCADの情報の日本語情報としてはそれなりに多いと思っています。ぜひ記事を色々検索していただければと思います。

今回作ってみたのはこちら 小さいものです

今回ちょうど題材になる簡単なモデリングは先日からTV放送が始まっている機動戦士Gundam GQuuuuuuXに登場する軍警ザクが持っている銃のバナナマガジンです。このプラモデル、欲しすぎて購入したのですが、ザク伝統の円形ドラムマガジンではなくてバナナも作りたくなったため作成しました。ちょうどFreeCADブログのネタとしてもよかったし・・・(笑)

実際は0.1mmノズルで制作する非常に小さいモデルです。これをFreeCADで作ってみます。

FreeCADでは薄い押し出しはできない

このマガジンのモデルを大きな形を作って削るのか、それとも小さい形を組み合わせて作るのかは好みがわかれるかもしれませんが、今回は加算方式で作っています。そこでFusionですとお世話になりやすいのが薄い押し出し機能。しばらく前Twitter(X)でも話題になっていましたが、スケッチの線をそのまま指定した厚みでソリッドに出来る素晴らしい機能です。

Fusionではスケッチを引いて、押し出しを選択してから押し出しタイプを変更することで下のような押し出しが可能です。溝やリブを作る際には本当に便利な機能だと思います。数年前に追加された機能だったと記憶していますが、当時おおーっと思ったものです。そう、Fusionは素晴らしいです。個人、非商用無料で使えるCADとして、3Dプリンターで何か作ろうという方にはまずFusionがいいと思います。FreeCADから入る必要は全くありません。手の内を増やすためにFreeCADは使えばいいんじゃないかなと。当ブログも最初からずっとFusionを使っていますので是非色々ご覧いただければ嬉しいです。

この薄い押し出し機能、当然FreeCADにはありません。今回はこの代替的な機能、並びに曲面でも使えるテクニックとしてCurve on surfaceの機能を使いましょう。なお、Curvesワークベンチではあくまで面を作るところまでしかできなくて、別途Partワークベンチでソリッドにする必要があります。・・・Fusionだと一瞬です、これ。

ただ、曲面にも適応できる等、Fusionとは違った使い道は結構あると思います。使い方を知っておくと幅が広がる機能です。

Curve on Surfeceの使い方

これはモデリングにあまり時間をかけていないのですが、銃の形状を以前レビューしたVEGAでさっと3Dスキャンして違和感のないサイズにしました。別に個のモデリングに3Dスキャナは不要なのですが、感覚がつかみやすいメリットがあります。では以下、具体的な手順をどうぞ。

元のソリッドはあとで左右対称化するので薄いです。(後で幅が足りないことに気づいたのですが・・・)FreeCADでスキャンの位置合わせを何となくしたら、適当にスケッチを書きます。この断面は完全拘束にこだわっていませんが、こんな感じ。これを単純に押し出します。PartでもPart designでも同様です。

では、今回の本命、でっぱり部分のカーブを引いてみましょう。スケッチャーで引いてしまってOKです。今回はこんな感じでやりました。このスケッチは当然、閉じていないのでFreeCADでは押し出せません。そこで、Curvesワークベンチに移って、CurveOnSurfaceを使用します。具体的にはカーブとソリッドの表面をCtrlで複数選択してCurveOnSurfaceをぽちっとします。すると、そこに新たなオレンジのカーブが出来上がります。(平面の場合はスケッチをそのまま投影した感じになります。)

さて、このオレンジのカーブは単なる投影ではありません。データタブをみてもらうと変更できるパラメータが複数あります。初期ではこれがCurve onlyになっているのですが、これをBinormal faceにしてみると、あら不思議。面が出来ました!なお、CurveOnSurfaceは1つのラインごとに行わなければいけなくて面倒ですが、このデータタブの変更は実はCtrlで複数選択して行うと一気に全部変えられます!ここは大事なポイントです。一つ一つやるのは大変ですからね・・・。ここでは幅は1mm、対称にしています。

これでサーフェスが出来たので、これをPartワークベンチに持って行って3Dオフセット(ソリッド化もチェック)すれば出来上がりです。

なお、このBinormal faceを「Normal face」に変更すると面の向きが90度変わります。同じラインから2方向の面を作れるのでハードサーフェス系モデリングの際に使い分けられるのではないでしょうか。当然、全部選択した状態でwidthを変更すると一気に適用されます。あとで変更したい場合はまとめておくと便利かもしれません。

今回はザクのバナナマガジンなので、横だけでなく縦にもリブのラインを入れます。ちょっと高さを低くしてみました。向かって上面は別ソリッドで押し出ししてミラーリングし、隙間を埋めたのが3枚目の状態です。

これで完成、と思ったのですが、もともとのマガジン取り付け部分が思っていたよりも大きいことに気づいたのがこの時点。そのままだと幅が足りませんでした。Partで横方向に拡大しても良かったのですが何となくぶっとくなってカッコ悪いのでオリジナルとは異なりますが向かって下部分の肉厚を増やして対応することにしました。中間部分は取り付け部が見える形になりますが大勢に影響がないのでこれで完成としました。(こだわりがそこまでなくて申し訳ありません。)

出来上がったのち、今回は0.1mmノズルを使用してプリントしました。熱溶解積層方式ではプラモの部品は一般的に小さいので標準的なノズルサイズ、0.3-0.4mmでは難しいですし、多くの方は光造形方式の3Dプリンターを使用されていると思いますが、0.1mmノズルであればこういった表現も可能です。当方では国産KaikaノズルとSnapmakerを組み合わせて小径ノズルのプリントを行っています。よかったらちょっと古いですがこちらもぜひご覧ください。小径ノズルの楽しさがきっと伝わる・・・はずです。

曲面にも使える、CurveOnSurface

今回は平面に使いましたが、このCurveOnSurfeceは曲面にも使えます。下のサンプルは球体ですが、スケッチを引くと表面に近い側にオレンジのカーブが引かれます。同様に面を作って3Dオフセットを行うとこんな感じのソリッドが作成されます。もちろんブーリアン可能です。(FreeCADはブーリアンが上手く出来ないことがあるのでこまめな保存推奨です。)

なお、ブーリアンの際にはトラブルを避けるためカーブを作った元形状をコピーして(この作業はパラメトリックになりませんが)そのソリッドと今回作った形状をブーリアンするようにしましょう。全体の作業としては、私はブーリアンはなるべく最後のほうに行うようにしています。

CurvesワークベンチでFreeCADを便利に使おう!

今回のCurveOnSurfaceと、前回のブログのラストで紹介したSketchOnSurfaceの2つはかなり強力なツールです。他のワークベンチと組み合わせることで多くの表現が出来る可能性を持っています。日本語情報が少ないですが、過去数回の当ブログでCurvesワークベンチの可能性が伝われば幸いです。

以前もお伝えしましたが、このCurvesワークベンチは個人の@Chris_Gさんが開発されています。私もForumでお世話になったことがありますが、本当にすごいことです。フランスに在住されているとの事ですが、一体どんな方なのでしょうね・・・??この場をお借りして最大の感謝を!

Fusionのような超高機能なことはなかなか簡単には出来ませんが、CurvesワークベンチをPartワークベンチやPart Designワークベンチと組み合わせることでかなり多くのプロダクトを作ることが出来そうな、そんな気がしていただければ幸いです。あなたの引き出しにぜひCurvesワークベンチを加えて下さいね!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!