たまには人の役に立つものを! 3Dプリンターで車椅子用の点滴棒用アタッチメントを作成 介護や医療の現場でぜひ
病院や施設、在宅医療で使用されることが多い車いす。治療や手術で点滴が必要な場合があります。点滴棒が車椅子に取り付けられればいいのですが、専用品が必要だったり取り付けが面倒だったり汎用性がないので自分で作ることにしました。3MFファイルもありますのでよかったらぜひどうぞ!
はじめに
さて、今回の車いす用点滴棒アタッチメントは私個人が勝手に制作したものです。類似品はパッと見た限りありませんでしたがもし誰かの権利を侵害している可能性があったら教えてください。また、棒を固定するだけのこのアタッチメントを使用する事によるリスクはあまりないと判断していますが、破損して点滴棒が倒れる、等の可能性はあります。印刷と使用については個々で判断いただきますようよろしくお願いいたします。
なんて言っていますが、車椅子に引っ掛けるだけでモノ自体はものすごく単純に出来ています。最小限の手間で印刷の失敗がないデータにはなっていると思いますが、別に3Dプリンターでなくとも射出成形で作れるものですし100均で売られていてもおかしくないんですよね。ただ、大量生産するものではないので誰も作らないだけ。でも、需要は多分、あるんじゃないかな・・・。多くの方にはつまらないものですが、よかったらご覧ください。ご覧になられたあなた、ぜひ拡散いただけると嬉しいです。こういうの、多くの方の役に立ってこそですからね・・。
なお、以前カスタムメイドとして生活用装具を作ってみたことがあります。良かったらこちらもあわせてご覧いただけると嬉しいです。
車椅子と点滴棒、セットでの移動は大変
さて、車椅子と点滴棒、両方持って移動したこと、ありますか?・・・いやまあ、ないですよね(笑)一般的にそうあるシーンじゃないと思います。ただ、病院や施設だとよく眼にする光景なんです。点滴棒は基本的にはただの金属の棒で、足部分にタイヤが複数個ついていて持ちながら移動できるようになっています。安定性を重視しているので台座部分はそれなりに面積があり、車椅子とセットで移動しようとすると足おき部分の前側に置いて車椅子に乗っている方に支えてもらうか、もしくは介助者が片手で点滴棒、もう片手で車椅子を押すスタイルになろうかと思います。
イラストやさんに絵があったのでコレでイメージが掴みやすいのではないでしょうか?同時に移動するの、大変そうですよね?
片手で車椅子の操作は意外と大変ですし、片手が点滴棒で完全に塞がるのも好ましくないですよね。前側で持っていただく場合も台座部分が車椅子の前タイヤと干渉することもありますし不安があります。
ということで車椅子にも点滴をぶら下げる棒があればいいわけですが、一般的には付属していません。検索すると車椅子用のものとして棒部分と車椅子のフレームに固定する部品がセットで売られているようですがコレだと特定の車椅子にしか付けられないので個人用としては良くても病院や施設では使い辛いです。この車椅子は点滴棒付けられる、コレはダメ、みたいな運用はあまり行われていません。
要は棒が車椅子に固定できれば良い
点滴棒自体は上の部分をスタンドから引っこ抜けるものが多いので棒の確保は容易です。また、機能という意味では上からぶら下げられる棒であればなんでも良いので車椅子と棒をワンタッチで固定できれば形態にこだわる必要はないよな・・・と思って作ることにしました。また、棒が安定するためには下の方と上の方2ヶ所で止める必要があります。
コレについては多くの車椅子の背もたれ部分の布とフレームに隙間があるので、上部はここを利用してしまうことにしました。作る部分は下部の棒差し込み部分だけにした方がコストも抑えられますし何よりスマートですよね。
そこで目をつけたのがティッピングレバーです。ここは本来、小さな段差を乗り越える際等に前輪(キャスター)を浮かせる目的で足を上から乗せられるようにできています。強度的に申し分ないですし、常用するものではない、というのがポイント高いです。多くの方々が利き足も右であれば、左側を点滴時のみ利用するのは効率が良いと考えました。
FreeCADでデータ作成
大まかな仕様が決まった後は設計です。実はこのアタッチメント、それなりの期間試用していて、仕様変更もしています。当初は毎度お馴染み、Autodesk Fusion(旧 Fusion360)で設計したのですが、今回公開する完成バージョンはFreeCADでゼロから設計し直しました。FreeCADはオープンソースの完全無償で使えるCADソフトで、Fusionのような簡単さはありませんができることは非常に多いソフトです。
FreeCADについては超初心者としてブログで使い方などをそのうち紹介できればと思っていますが、技能が現状追いついていません。ただ商用利用しても問題が生じないのでそこを気にしなくていいのがうれしい点ですね。(Fusionは個人の趣味範囲の無償版の場合、売り上げ等制限があります。)自分自身の引き出しを増やす用途としてもこのソフトウエアは非常に興味深いので操作方法の習熟も兼ねて今後も学んでいきたいと思います。ということで出来上がったのがこれ。
なおこのソフト、無料なのにFEM機能とかあるんですよ。すごくないですか?応力がかかる部分に若干フィレットを入れて力を逃すなど、実際に役立ちました。なお、一応荷重50kg程度で試しましたが50kgかかると先端部が2.7mm歪むらしい、です。実際は点滴棒、数kgもないですし、ここにかかる力はもっと小さいはずなので問題なさそうかなぁ。ただ、使い方があっているかという根本的な問題がありますが・・・。
10cm角の3Dプリンターでも印刷可能
次は印刷についてです。当初はもう少し大きかったのですが、今回作り直すにあたり10cm角のプリンター、うちのVORON0で造形できるサイズにしました。このプリンターはDIYするオープンソースの3Dプリンターで、私はキットを購入して組み立てています。小型でめちゃくちゃ優秀な子です。印刷も早いですし、自分で理解して組み立てているのでトラブルがあっても対処がしやすいですし、3Dプリンターそのものを学ぶのにもとても役に立っています。興味がある方はぜひこちらもどうぞ。関連記事も結構あります。
私にしては珍しく汎用を目指して製作した(つもり)なので、造形も楽だと思います。温度のこともありますしPLAよりはABSで製作した方がいいんじゃないかなと思っていますが、20cm角のプリンターなら4セット同時に作れますので、施設や病院用としてならいくつかあると多分便利ではないかと思うんですよね。
ABSで出してもオーバーハングもないですし、おおよそ失敗する要素が少ないはず。色は黒を想定していますが、今回最終的に印刷の問題がないか確認するためナチュラルカラーで印刷したものがこちらになります。まあ、これだけシンプルで、逆に言えば誰でも設計できるものなのでアイデア以外新規性はありません(笑)。最初にも書きましたが100均でも作れそう。でもシンプルイズベストでいいと思ってます。
使用方法と使えない車椅子のタイプ
さて、実際の使用についてです。基本的には2つの部品を組み合わせてティッピングレバーに引っ掛けて、上から背もたれの布に挟む形で点滴棒を差し込む、これだけです。最初の写真ですね。棒そのものは直径20mm程度のものまでが対応しています。
点滴棒の重みで引っかかっているので棒がある限り落下する可能性はないです。また、無理な力がかかるとおそらく車椅子や点滴棒が壊れる前に鍵状の印刷パーツが破損すると思います。ただ実際にサンプルを使ってもらいましたがプロトタイプでの半年程度の運用で今のところ事故はありません。明らかな欠陥はないと思いますが、何かあれば教えていただければ嬉しいです。経年劣化の影響は分かりませんし・・・・。
車椅子としては一般的なよくあるものなら問題なく取り付けができます。時々意味はわからないのですがティッピングレバーのところに樹脂パーツがついている車いすがあり、その場合は一つ長くして固定すれば大丈夫です。めちゃくちゃ単純なものなので使用方法に迷うことはまずないと思います。
一方取り付けられないものも当然あります。一つはブレーキがついているタイプのもの。引っ掛けるところがブレーキと干渉してしまうので取り付け困難です。あとはリクライニングタイプのもの。これはティッピングレバーがなかったり、構造上リクライニングと干渉するのでとりあえず装着できたとしても使用できません。ご了承ください。
3MFファイル配布
パーツが2個、そのまま印刷できる形で3MFファイルにして配布します。造形設定にはあまり気を使う必要はありませんが、エレファントフット防止用に0.2mmの角取りを入れています。このため最初の数層は速度控えめが良いのと、壁の印刷順序は内側→外側がいいんじゃないかと思います。また、強度を重視される場合はシームをランダムにした方がいいです。見栄えを気にするものではないですからね・・・。
一応基本的な設定は下記の通りです。
- 材料はABS 240−260℃程度 ベッド温度約100℃
- 積層0.2−0.3mm
- サポートなし ラフトなし
- 壁4層、インフィル20% 壁印刷順序は内側から外側 シームはランダム
- 速度はお好み、ただし最初の2層はゆっくり目がベター
3Dプリンターがない場合はBoothで購入出来ます
基本的に趣味ですし、用途も特殊で一般的ではないのですが、介護医療の現場で3Dプリンター使用している方は多くはないと思うのでBoothで購入できるようにしました。そもそもこのブログが届くかも怪しいですから、正直迷います(笑)。ただ、現場では需要あると思うんですよねー・・・。実際使った方からは「めちゃ便利で助かる」とお声をいただいています。ということで、良かったらぜひご検討ください。価格は2000円にしてみました。何個か売れるかな・・・。
Boothのページがこちらになります。適宜在庫を入れる予定です。
まあ、そう心配いらないか・・・
「これいいじゃん!」と思ってくれるかたに届くと嬉しい
当ブログを色々みていただくと、3Dプリンターにはたくさんの可能性があることがお分かりいただけると思います。普段は自分や子供のものを作ることが多いですが、自分の考えたものが誰かを手助けしてくれるなら非常に嬉しいですよね。プライスレス。ちょっとニッチすぎるのですが、今回のものがお一人にでも役立てば幸いです。こういうのは使ってもらってなんぼなので、出来たら情報の拡散をよろしくお願いします!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。楽しい3Dプリンターライフを!
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