REVOPOINT INSPIRE 3D スキャナー レビュー 後編 -CADを用いた修正- フィギュアやぬいぐるみも試す

前編に引き続き、後編です。普及価格帯とはいえ安定した性能を確認できたので色々試すことにしました。壊れた我が家の部品の複製やリバースエンジニアリング、そして高難易度のフィギュアがどの程度スキャン出来るか確認していきます。ハンドスキャンも実用的でINSPIREの活用用途が広いことがよくわかりました。

概要等総論的な部分は前編をぜひどうぞ。

前編にも貼りましたが、商品のクラウドファンディングページはこちらになります。面白い商品をレビューさせてくれてありがとうございます!

部品をスキャン まずはコピーしてみる

今回、ちょうど最近破損した台所のプラスチック部品があったため、これを元にREVOPOINT INSPIRE を使ってリバースエンジニアリングを行いました。とはいっても、ここではスキャン結果をそのままプリンターに出力することをコピー、CADで形状を作り直すことをリバースエンジニアリングと言っているだけで大したことはしていません。・・・でもカッコいいですよね、リバースエンジニアリングって名前(笑)

私を含め、多くの3Dプリンターユーザーは通常、各部位をノギスで測りながら3Dスキャナー等不要で色々作っています。この部品もそれで対応は可能なのですが、今回はなるべくインチキのないようにノギスを使わず、スキャン結果のみを元にして対応しました。ではまずスキャンとコピーから。

スキャン方法等は前編でお話ししているので省きますが、スキャン条件はターンテーブル使用、マーカーなしの一般的なシチュエーションです。向きを変えて複数回のスキャンを行い、余分なデータを除去したのちに合成しています。ある程度のゴミ取り(エラーで生じた孤立した部分などを除去する作業)は行いましたがあまり時間はかけておらず、REVO SCAN以外のソフトは使用していません。

この部品はつやがあるベージュの部品で、はめ込む部分にいくつかの突起があります。見えにくいですが真ん中で折れていて、突起も一部欠損しています。一時的に瞬間接着剤で接着した状態です。形の再現性や実際にちゃんと入るか等丁度良いサンプルだと思います。さて結果ですが、個人的にはINSPIREはなかなか満足できるものでした。全体的にぼってりはしていますが、爪形状等もちゃんと拾われておりかつスキャン結果にゆがみがありません。お世辞抜きに結構優秀だと思います。

ではまずコピー結果がこちら。前編と同様、Ankermakeで複製を作成してオリジナルと並べてみました。全体の形はとれていますしそれなりに優秀だと思うのですが、薄い部分等厚みが増しているのがわかります。この結果を「なかなかやるじゃん!」と思うか「この程度かぁ・・」と思うかは分かれると思いますが、個人的にはかなりイイ線言ってると思います。でも流石にこのままでは元の位置には収まりませんでした。

なお色々試してみた結果としては、無意味にたくさんスキャンしたり、合成を重ねるよりも必要なスキャンをしたら一発で合成したほうがうまくいく印象でした。コツをつかむ必要はありそうです。

CADを用いてリバースエンジニアリング

コピーした結果も良好でしたので3DプリンターユーザーおなじみのCAD、Fusion360を用いてスキャン結果をもとに部品を起こしていきます。スキャン結果をOBJ形式で保存しFusion360にメッシュとして取り込みましょう。スケッチしやすいよう、方向は手動で調整する必要があります。なお、曲面形状の場合はメッシュ断面からスケッチを起こせますのでそれを利用すると形状を作りやすいです。今回は板状の平面スケッチを直接書いてメインの形状を製作し、そこに勾配やフィレットを用いて形状を整えます。手元にある元部品も参照しスケッチを描いて、折れて失われた部分もあったであろう形に修正しました。

プロセスとしては上のような感じです。個人的にはスキャンの形状があるとイメージしやすいのでモデリングしやすく感じました。まあ、コレは簡単な部品ですが、複雑な面が入り組んだようなものだともっとスキャナの恩恵を感じることが出来そうです。これで新規の部品が出来ました!

プリンターでの出力結果を比較 良い出来です!

再びAnkermake M5でプリントして、3つを比較してみましょう。いかがでしょうか?新規に製作したものはやはり非常にきれいですよね。どうしても分厚くなってしまった突起や壁部分を含め当たり前なのですが作り直したものは全く別物です。なお、内部の肉抜き部分などは本来用途や3Dプリンターで製作することを考えると埋めちゃえばいいのですが、せっかくなので忠実に再現してみました。なお寸法的にも問題なく、我が家のキッチンの部品として利用できています。やるなぁ。

超高難度フィギュア! 意外にイイ線行ってると思います

これだけできると、限界を見てみたくなるのが性分です。長女の持っている大切な初音ミクのフィギュアを頼み込んでお借りして、スキャンを行いました。全然関係ないですが、ミクちゃん、先日設定である16歳のお誕生日だったんですよね!一方長女は先月17歳になってしまい、追い越してしまったと嘆いていました・・・。

もちろん、こうした著作物をスキャンする行為を当ブログは推奨しませんが、個人的に自分の持ち物をスキャンしたり、また自分の技術の糧としたりすることは問題ないと思っています。今回は完全に検証目的ですので初音ミクファンの方々も含め、どうかお許しを。

ということで結果がこちらです。このフィギュア、スキャン前は見ていただけばわかる通りミクちゃんの髪の毛はもちろん、帽子や広がるマント、サーベル等「これはムリでしょ」という感じでフィギュアの出来に感心したのですが・・・スキャンすると、結構出来ます。したがスキャン結果と画面を同時に写したものですがいかがでしょうか?

全体的なプロポーションやバランスはもちろん、ガタガタはしていますが髪のカーブ、帽子や衣服の形状等、かなり形状を拾えているのが判ります。個人的にはもっと盛大に破綻するかと思っていたんですよ。優秀だと思います。

なおスキャンにはターンテーブルを利用していますが、形状が複雑なので上側や見上げる形等、必要に応じて手持ちでスキャンしています。また、一度合成してみたら足の一部のデータが欠損していたので、追加でスキャンして一緒に合成しました。こうした柔軟なスキャンをしても破綻しないのは間違いなくIMUの威力だと感じます。私はスカルプトモデリングは本当に触りしかできないのですが、下地として十分に使えてしまうんじゃないかな。

大きめのぬいぐるみをカラーハンドスキャン

では最後に大きめのぬいぐるみをハンドスキャンしてみます。これはカラーで行ってみました。どちらかというとこのサイズのぬいぐるみは前回ご紹介したRANGEのほうが向いていると思っているのですが、今回はあえてINSPIREを使用してやってみました。一枚目くらいの大き目なぬいぐるみでスキャンは無線でiPadのアプリを利用して行い、一発でスキャンしています。これはIMUの威力がストレートに発揮されるシチュエーションです。結果がこちら。※1枚目写真は昼に撮影。スキャンは夜の室内で行いました。

スキャン方法は、一時停止を繰り返しながらぬいぐるみの周囲を一周する形で行っています。一発スキャンなので底面はありません。なおスキャン途中に一回触れてしまい、クッションが乱れてしまったのですが、本体は動いていません。ご覧の通り形状は問題なく拾えており、耳部分も2重になったりせず重なりもないことがわかります。以前のREVOPOINT RANGEの時よりも一撮影範囲が狭いのでスキャンにはちょっと時間がかかりますが、ブレがない点群スキャンが出来ているおかげでモデルがクリーンです。

なお底面と、ぐるぐるの目の部分はテカリがあったせいか穴が開いたモデルになったため穴を塞いでいます。

色が付けられないのは残念ですがこちらもAnkermakeで縮小して作ってみます。クッション部分は削除して平面にして前編と同様に造形しました。一緒に並べてみたものがこちらです。うっすらですがギザギザの口部分、裏面にはひも部分のスキャンとコピーが出来ていることがわかります。3DCGソフト等モデリングソフトは介在させていませんがあっさりスキャンと縮小コピーまで出来ました。

全体のまとめ 普通に優秀 かなり使えます!

時々お話しをいただく企業とのタイアップ案件、個人的には「いまいちだったら困るな・・・」というのがあるのですが、REVOPOINTの3DスキャナはRANGEもこのINSPIREも普通に良いものでほっとしますし、これもやってみよう!という気分になります。上位機種のことはわからないですが、この価格帯(クラウドファンディングで4万円台~市販価格6万円台)としてIMUが搭載された本機のスキャンは本当に安定していると感じました。ということで、「そのうち上位機種も試してみたいな・・・案件お待ちしています(笑)」と、そう思わせる魅力が本機にはあります。

またFFF(FDM)方式の3Dプリンターを使う身としてはスキャン結果の誤差が少ないのが一番の福音です。どうせ手直しするんだから、ディティールよりもアライメントが正確であったり、寸法誤差が少ないことが必要なんですよ。そういった意味で個人的には実利用を反映した後編のスキャン結果は非常に満足いくものでした。前編の付属オブジェはスキャンしやすい条件が整っており、上手くいって当たり前なところがありますからね・・・。今回のような真にリアルワールドでの当ブログの実際の結果が、皆さんのお眼鏡にかなっているかどうか、それを基に検討いただければと思います。

また、初めてこういった商品を検討される皆さんには、限界もお判りいただけると嬉しいです。現状魔法のように実世界の一部をかっちり取り込んで何も考えず複製できるような機材は少なくとも私の周りには存在していません。3Dスキャナはまだまだ、ある程度色々弄れる方をターゲットとした商品です。それなりのスキルは求められますので、コストに見合うかどうかはちゃんと判断してくださいね。

なお、金属のような反射する素材、赤外線を吸収する真っ黒のプラスチックなどは3Dスキャンできません。これは原理上仕方のないところで、その場合はスキャン前に一時的にスキャン用スプレーを使用します。最近は便利なものがあって、勝手に消える昇華型のスプレーが存在しています。ちょっと高いのですが最近こちらを購入しましたので使い込んだらまた別途レビューさせていただきますね。

最後になりますが3Dプリンターと同様、3Dスキャナも着実に進歩していると思います。当ブログでは紹介していませんが、私は1年前くらいにとある3Dスキャナを買っています。それと比較して本機はかなり扱いやすかったです。これからの進歩も楽しみです。

それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!