REVOPOINT RANGE 3D スキャナー レビュー その2 ターンテーブルや大物スキャンは? 100均ターンテーブルも使えます

前回に続いて大物対応の3Dスキャナー REVOPOINT RANGEレビューです。今回はターンテーブルや大きなもののスキャンをやってみました。屋外では太陽由来の赤外線があるとスキャンが困難なので夜にスキャンするのがおすすめです。(不審者にならないように注意して下さい・・・。)なお、一連の記事ではマーカー(スキャン用のシールのようなもの)は使用していません。

REVOPOINT RANGE クラウドファンディング中

前回記事同様、REVOPOINT RANGEを発売前に使用させていただいてレビューするメーカータイアップ記事になります。商品詳細は前回記事や下のクラウドファンディングサイトをご覧ください。

とはいうものの、実際にガッツリ利用して忖度ない、かつ責任ある記事を書くということについては何ら変わりはありませんのでそこは信じていただければ嬉しく思います。前回は主に屋内でのハンドスキャンの内容でしたが、今回はターンテーブルの使用や、大きなもの(椅子やクルマ)について色々試しました。

最初に結論になりますが、今回試した結果も比較的良好です。このタイプの3Dスキャナには加速度や位置情報のセンサはないので、スキャン範囲が大きめで位置をロストしにくいRANGEは扱いやすい商品だと思います。前半のレビューはこちらをご覧ください。

電動ターンテーブルを使ってみる

レビュー前半でも少しご紹介したプレミアムキットに同梱されるターンテーブルですが、すごくデカいです。耐荷重200kgで人が余裕で乗れるので当たり前ではあるのですが、置き場所は困るかも。あと動作時はそれなりにモーターの音がします。一方でこのターンテーブルを利用するか否かではスキャンはしやすさが大きく異なるため、価値があるオプションでもあります。リモコンで回転方向や速度の変更が出来る優れものです。

これを利用して、我が家にあるスイッチのマリオカート ライブ ホームサーキットのカートをスキャンしてみました。ターンテーブルが大きいのにモノは小さいです。同じREVOPOINT 社のPOP2やMINIがおそらく向いているサイズですが、RANGEだとどうでしょうか?

結果を見ると意外と小さいものもスキャンできるのがわかりました。ターンテーブルは黒くほとんどスキャンされません。結果として置いたものが上手にスキャンされやすくなります。比較的小さいものでも比較的クオリティ高く再現されました。

一つ問題なのはスキャンのマージです。複数回バラバラにスキャンしたものを1つにマージする機能があるのですが、現時点では出力時にテクスチャが貼れなくなるんですよね・・・。出力が色なしモデルになってしまいます。サポートには連絡済みで、ソフトウエアの不具合とのことで今後修正予定とのことです。ベータ版のソフトなので仕方のないところですが、一安心。

では体のスキャンもしてみましょう。肖像権の問題があるので私がモデルです。おっさんですいません・・。
スキャン担当は小学生6年生の娘でiPad proで行っています。娘は当然初めてのスキャンですが、リテイクなしの一発で上手にスキャン。2回転させつつ上半身全体を取り込めています。正直このスキャナの優秀さを実感しました。

いや、本当にターンテーブルで取り込む場合、安定感が高いです。ターンテーブルモードであれば、スキャンそのものはあまりリテイクなしに使えるのではないかと思います。娘よ、協力してくれてありがとう!出来上がったモデルはこんな感じです。

顔は表示していないのですが、こと日本人に関しては大きな問題が一つだけあります。それは・・・黒髪です!黒い髪は反射もするし正直まともに3Dスキャンするのが困難です。3枚目の通り頭部分はとても残念な形状になります。これはおそらく赤外線を使用している限り解決できないので、髪の毛つける場合は4枚目のように後からモデリングするしかないと思います。

100均ターンテーブルにもチャレンジ

ターンテーブルは簡単だけど、ちょっと買えないよ・・・という方もいると思います。ターンテーブル、結構高いですからね。というわけでダイソーの100均ターンテーブルにのせて同じくマリオカートをスキャンしてみました。

当然手動なので床の上に置いたターンテーブルをゆびでちょっとずつ回して1周スキャン。床との摩擦がない場合はなんらかの滑り止めがあったほうがいいとは思いますが・・・意外に使えました!ちょっとしたものならこれでいいかもしれません。スキャンしたオブジェクトには無数の私の指が写っていて不気味ですが、メッシュアイソレーションできれいに消すことが出来ました(笑)

電動より面倒ですが、出来上がったモデルは距離の自由度が高かったせいもありむしろ大きなターンテーブルでスキャンするよりも良いくらいの結果になりました・・・。侮れませんね、さすがダイソー?です。小さいものしかスキャンできませんがコストがかからないのは魅力的かもしれませんね。3Dプリンターがあるので電動のテーブルを自作する、という手もありますが・・・。

スキャンが困難なシーン 日中野外、のっぺりした平面は鬼門

では、逆にこのスキャナーでスキャンが非常に難しい、若しくは不可能なシチュエーションはなんでしょうか?私が色々試した範囲ではありますが明らかに無理なのはまず日中の野外。ちょっとした日陰でも難しいと思います。理由は赤外線が多すぎるから。カメラが飽和してしまうんですよね・・・。IRカットフィルタなどで一部カットすると改善するのかもしれませんがスキャンにも影響が出てしまいそうです。

あとはのっぺりとした平面はスキャン位置が測定できないのでスキャンできません。どんどん動いてずれていってしまいます。カメラの視界内に常に何か位置情報を保持できる特徴が必要です。規則的なパターンも同様にずれやすいです。これを防ぐには付属のマーカーや個人的にはマスキングテープを適当に貼るのがお勧めです。(きっちり貼らないほうがむしろ良い)この辺をつかむのにコツが必要でした。

一般的な3Dスキャナと同様、反射するものや黒いものも難しいです。このスキャナーが赤外線を利用してスキャンしているため、仕方のないところですね・・・。ざらざらしていれば赤外線光量を上げてスキャンできますので一工夫する必要があります。先に触れたとおり、人体のスキャンでは黒髪が難しいと思います。後から何とかするのが現実的でしょう。

クルマのスキャンは?夜のスキャンがおススメ

一番の大物、車のスキャンもやってみました。やってみたのは我が家のプジョー5008、フロント部分になります。色は濃紺ですし条件は悪そうです(車は汚れていたので反射は強くないですが)。昼間は前記の通り全くダメでしたので夜間にスキャンしました。

夜間のスキャンは不審者に間違われるリスクなどがありますので注意が必要ですが、野外のスキャンに対しては最も有効だと感じています。スキャナが出す赤外線以外の光があまりないのでスキャンの成功率が高まります。もちろん、色は付けられませんが、車のスキャンはもともと光の当たり方で色が大きく変わるためカラースキャンの必要性はありません。パーツを作ったり、スキャンを元にモデリングしたり部品を検討する場合にもカラーは不要ですので非常に有効な手段だと思います。
※下記の結果にはマーカーもスプレーも使用していません。大したものです。

スキャン結果がこれですが、ライト部分以外キレイにスキャンできています。前述の通り特徴的な部分がないと位置ずれを起こすので、必要があればいくつか明るい色のマスキングテープ等を貼るといいんじゃないかと思います。ボンネットなどの平面はスキャナが位置を見失わない工夫が必須です。

なおスキャン結果は正直巨大です。Blenderで読み込むとメッシュの点が多すぎて真っ黒(笑)。後処理に必要な精度にもよりますが、処理を考えると車サイズの大物はメッシュ数を1/100にしてもいいかもしれません。CADに持っていくときにもメッシュが重すぎると大変なので・・・。これを下絵にモデリングするととても捗る気がします。車のフロントの造形って一番手がかかるところなので、ちょっとでも楽が出来るとうれしいですよね。

iPadのLiDARと大きく異なる使い勝手 どちらも素晴らしい

メジャーな3DスキャンとしてiPhone (ipad) proのLiDARスキャンがあります。この分野はTwitterでもiwamaさんが色々な作例を出されています。たくさんの画像から3Dモデルを作る方法(フォトグラメトリ)もありますが、今回はLiDARのスキャンとこのRANGEで椅子をスキャンし並べてしてみました。LiDARはProシリーズしか搭載されていないのですが、逆にproを持っていたらこの機能を使わないのはもったいないです。この記事をお読みになったらすぐお試しを(笑)

断っておきますが、iPhoneのLiDARと今回のような3Dスキャナーは競合相手ではなく全く性質の異なる別物です。個人的にはどちらが入り口でも、3Dプリンターを含むこちらの?世界に皆さんが飛び込んできてくださればとてもうれしいのですが、iPhoneのLiDARスキャンはぱっと試すならとても簡単です。テクニックは色々ありますし奥は深いのですが、間口が広い。正直素晴らしいです。ARで表示したり、スキャンしたものを並べたりとユーザー体験がとにかく素敵です。ぜひ上記iwamaさんのTwitterをご覧ください。なお、LiDARスキャンで作成されるモデルは比較的軽量で、今回の椅子は11MB程度でした。使用したソフトウエアはScaniverseです。素晴らしいソフトで、objファイルへのエクスポートまですべて無料なんですよね。感謝しかありません・・・!

一方RANGEでは今までのコツを使ってスキャンしています。間口が広いとは言えませんが習熟、工夫するときちんとスキャンができるようになります。唯一うまくいかなかったのは細長い脚。内側のスキャンがしにくいので柱として破綻しやすいんですよね・・・。結果としては300MB程度のファイルが作成されました。容量が30倍です。この2つをBlender上に読み込んで実際に確認してみました。結果が下になります。

いかがでしょうか?テクスチャつきオブジェクトだとよくわかりませんが、テクスチャをはがすと根本的に両者が異なる、ということがよくわかる結果だと思います。環境をがばっと丸ごと取りこむLiDAR、じっくり作る3Dスキャナーという差がはっきり出ます。優劣じゃなく、どっちも素晴らしい。VR空間で表示するなら前者のほうがリソース食いませんし、設計するなら後者じゃないと正直評価困難です。競合ではなく使い分けるものだということが皆さんに伝われば幸いです。

そのまま試しにFusion360にもっていくとこんな感じになります。向かって右脚近傍のオレンジの線のように、メッシュをもとにスケッチを作成できるので非常に便利に使えます。上は生成されたobjファイルをそのまま持ってきましたが、メッシュが重いと大変なのである程度削減してから持ってくるほうがいいと思います。(Blender上にインポートする際には単位の問題で1/1000サイズに変更する必要がありました。)Moi3Dにデータを持って行ってちょっと試しましたが、腕の問題はありますが5008の複雑な曲面がモデリングしやすそうです。

向いてない方、向いている方

このREVOPOINT RANGE、個人的には課題もありますが現状の普及価格帯3Dスキャナーとしては扱い易い商品だと感じます。LiDARのような簡便さはありませんが、精度が高いので様々な用途に応用できます。そういったことを含め、この商品はやはり「人を選ぶ」商品です。

・向いていない方

確実に言えるのは、「これを買ったらパパッと3Dスキャンしてなんでも出来るんじゃないか?」という方です。つい先日レビューした3Dプリンター、Ankermake M5にも言えることですが2023年時点でこういった3D関連の最先端?商品において「誰でも簡単、電子レンジのように」とはいきません。スキャンそのものの簡便さではやはり圧倒的にiPhoneのLiDARスキャンが勝っていますし、またスキャン後に使いこなすにはそれなりにPCや3DCGの知識が必要になります。少なくとも使いこなそうという気概は必要な商品だと思います。

もちろんターンテーブルを使用することでスキャンそのものは小学生でもできるくらいにハードルが下がります。が、後処理等含め満足いく形にするのにそれなりの手間があるのは確かです。そこに不便を感じる方はまだ3Dスキャナーに手を出さないほうがいいと私個人は思っています。(このブログ見ていただける方には心配無用かも?)

・向いている方

逆に前提条件として新しいものを取り入れ、それによって生じる勉強や習熟に対してポジティブな方であることが必要かなと思います。数週間ではありますが私も練習をしました。特にターンテーブルを使わないハンドスキャンは結構大変です。体幹をなるべくブラさず撮影対象と距離を保ちながらスキャンする技術がある程度必要なので、試行錯誤しながら使いこなしていける方がやはり向いていると思います。

またCGやCADソフトでの後処理を含めPCで編集していくことに対する抵抗がなく、プロダクトのプロトタイプやモデリングの下絵、その場所に適した形状の検討、メタバースへの小物の持ち込みなど使い道、具体的な利用シーンが想像しやすい方には大いにおすすめできます。

3Dスキャナー 最初の一台に最適です

2回にわたってレビューさせていただきましたがいかがでしたでしょうか?自分の結論としては最初に購入する3Dスキャナーとして2023年時点で多くの方にお勧めできる商品だと思いました。スキャナーの提供を頂いていますが忖度なくそう思います。

先にも触れましたが、特徴がないと位置がつかめないので撮影範囲が少ないと見失いやすいんですよね。その点「スキャンRANGE」が広い当機種は汎用性の高い3Dスキャナーです。確かに値段は結構しますが。ツールとしてこれを使いこなしていくと様々な技術や考え方も身につくと思いますし得られる経験値は多いでしょう。

実は他の3Dスキャナ(他社製)を一つ持っているんですが、使いこなせずレビューできていないんですよね・・・。ブログにも書けずお蔵入りにしてます。RANGEは明らかにそれより扱いやすいです。その差がこのスキャン範囲の違いだったのだと、RANGEを使った今ならわかります。簡単にできるとは言いませんが、これくらいはできるよ、と伝われば幸いです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!