ナイロンフィラメントを使おう Polymide CoPA レビュー 乾燥が全てでした

2023年6月15日

しばらく前から時々使っていたナイロンフィラメント、Polymide CoPA。よく言われるように乾燥が命でした。吸湿しても再度70-75度程度で十分乾燥させればまた戻る可逆性があります。複数回乾燥かけていますが現時点で劣化は明らかではありません。非常に特徴あるフィラメントなので面白いと思います。

ナイロンフィラメントって?

ナイロンっていうと何を思い浮かべますか?私は一般的な服やカバンなどに使う強い繊維を思い浮かべますね・・・。ナイロン弦としてギターに使われたり、スポーツウエア等のアッパー素材、水着や傘なんかにも使われています。ポリアミドの一種で、脂肪族骨格を含むポリアミドをナイロンと総称しています。物質についての詳細は下記wikipediaも参照ください。

ナイロン自体の歴史は古く、高強度、高耐熱性、高耐摩耗性などの特徴を持つ革命的な繊維として1930年代に開発された合成樹脂です。フィラメントとしての性質も基本的には同様で、靭性もあり耐熱性が非常に高いのが特徴です。一方で、ナイロンフィラメントは繊維というイメージの通り硬度は高くなく、壊れませんが変形します。また欠点として吸湿することで造形が不安定になることが知られています。

Polymide CoPAについて

Polymide CoPAは、ナイロン6とナイロン6.6をベースとしたフィラメントです。コポリアミド(CoPA)と呼ばれるためこの名前がついています。色は黒のみです。750gで1万弱と結構イイお値段がします。

Polymaker公式サイトには詳細情報がありますが、アピールポイントとして下記が挙げられています。

  • 反らない
  • プリントが容易(使いやすく、加熱ベッドが不要)
  • 強靭
  • 耐熱性が高い (180度)

一方で注意点も挙げられており

  • 材料を常に相対湿度20%以下に
  • 過度な乾燥では熱分解の可能性あり
  • 定着に糊が必要
  • 冷却はOFF リトラクションは長めに。環境温度は高めを推奨

とありました。

なお、3Dプリンター界隈の猛者はこの草刈り用のナイロンコードを3Dプリンターに食べさせて使っていらっしゃる方もいます。100mで1000円で買えるのでお得かもしれませんが、Benchyを作った画像付きレビューもあるのでよかったらリンクを見てみてください。(私は使ったことはありません。自己責任でよろしくお願いします・・・!)

まずは乾燥してから!

Polymide CoPAは購入後一度乾燥させたほうがいいです。特に今はフィラメントスプールも段ボールですぐ吸湿します。1日その辺に置いたら間違いなく吸湿していると思ってください。それくらい湿気ます。ナイロンフィラメントを上手に使うには1にも2にも乾燥が命だと感じます。

乾燥方法は色々ありますが、基本的には加温して湿気を放出する手段をとる方が多いと思います。私は以前レビューさせていただいたSUNLUのフィラメントドライヤーを使っています。大体70℃で4-5時間ほど乾燥させればいいのではないでしょうか。ナイロンは特にしっかり乾燥させたいのでスプール中心にシリカゲルも入れています。私が使用しているフィラメントドライヤーについては下記をご覧いただければ幸いです。

ちなみに順番が前後しますが、湿気たナイロンで造形するとどうなるか・・・がこちらです。同一G-codeで湿気た状態と乾燥後に造形しました。まず造形時の音が全く違います。湿気ているとノズルから絶えず「パチパチ」と音がします。これは湿気た水分がノズルで暖められて水蒸気になりはじけている音です。当然その瞬間気泡とともに押し出されるのでボソボソのものが出来上がります。見た目全然違うのがお分かりいただけるでしょうか?

時系列的には乾燥前が先です。70度くらいでの複数回除湿において、少なくとも私の環境では材料の劣化は確認できませんでした。元々耐熱性はあるので前記の熱分解を避ける意味ではあまり高すぎない温度で除湿するのがよさそうです。

なお、しっかり乾燥させたのにパチパチ音がする場合はおそらく温度が高すぎるので少し下げるのがお勧めです。(次項をご確認ください)

Prusaslicerでの造形設定

Polymakerの推奨設定とある程度合わせて私が使用しているPrusaslicerでの造形設定は下記の通りです。

  • ノズル温度:1層目260℃ 2層目から250度
  • ベッド温度:60℃ 2層目から50度
  • 押し出し率:0.9程度と控えめ
  • ファン速度:0%
  • リトラクション:2mm 40mm/s
  • レイヤーチェンジ時のリトラクション:有効

押し出し率は控えめにしていますがこれはプリンターによっても、また造形物によっても多少変わると思いますので参考程度にしてください。

また、当方はガラスベッドを使用しているのですが、定着についてはあまり問題になりませんでした。コーティングによっては定着が悪いと聞いていたのですがエポキシガラスベッドとの相性は非常に良いようです。必要があればケープをさっと吹けば解決すると思います。リトラクション時のz-hopは行っていません。しっかり除湿すれば糸引きはかなり軽減しますが、形状にもよると思います。

エポキシガラスについては良かったらこちらをご覧ください。

造形例 硬くはないが強靭です

私が今まで作成したものはSnapmakerシングルエクストルーダー用の5015ファン取り付けアダプターやおもちゃの部品、ギアやホルダーの部品などですが、とにかく壊れないのが最大の特徴です。プラスチックハンマー等にも利用されているくらい強靭で、PLAのように割れたりはしません。

5015ファンの制作については下記記事もぜひどうぞ!

なお先に触れましたがナイロンフィラメントは強靭ではあるのですが硬さはない為、薄ければ変形します。この辺は繊維としての性質が良く出ているところだと思います。厚みとインフィルによってある程度硬さは調整できるのでいろいろ試してみてください。ナイロンフィラメントの特性が判りやすいのがTwitterにも上げた動画が下の物になります。まさしく繊維のナイロン、という感じでしなやかなのがお分かりいただけると思います。

他のフィラメントとの併用は難しいかも

最近Snapmakerはデュアルエクストルーダーにしたので試しにほかのフィラメントとの相性を確認したのですが、その範囲ではPolymide CoPAは他のフィラメントとの併用は難しそうです。化学的特性なのか温度の問題なのかはわかりませんが、ポリカーボネート等温度が高めなフィラメントと一緒に使っても全く接着しませんでした。粘りのあるナイロンと硬さのあるフィラメント、組み合わせられれば力学的に強くて面白いと思ったのですが残念です。

色々調べてみたのですが現状はナイロンと相性のよさそうなフィラメントは発見できませんでした。性質は異なりますが、強靭さを狙うならTPUは他のフィラメントと相性がいいのでお勧めですね。

もしいい方法等ご存じでしたらぜひ教えてください!

ここぞというときに役に立つフィラメントでした

色々作っていますが、やはりある程度の大きさがあり、壁厚を確保して強度ある造形物を作る際にはナイロンはかなり強いです。一方で小さいものや頻繁にリトラクションが入るものは造形が難しかったり、サポートを剥がすのは大変なのでものを選ぶ印象はあります。特徴が尖ったフィラメントなのでシーンによって有用性は大きく変わると考えます。

価格や吸湿など扱いにくいところもありますので万人向けではないと思いますが、ここぞというときに役立つフィラメントだと感じます。この記事がお役に立てば幸いです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!