外に置くものに最適だけど万能 Polylite ASAレビュー ABSと変わらない使用感でオススメです

皆さんは新しいフィラメントを使う時、どこのメーカーを使いますか?使い慣れたフィラメントはまあ安いものを選びがちですが、新しいものはリファレンスとして大手のものを使うとトラブル時も問題の切り分けがしやすいです。今回はPolymakerのASAをはじめて使ってみた、というレビューになります。

ASAフィラメントとは

ASAはアクリロニトリル・スチレン・アクリレートの略で、メジャーなABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)の進化系フィラメントと言われておりAASとも呼ばれます。ブタジエンをアクリルゴムに置き換えたことが違いで、大きな特徴は耐候性で、紫外線に強く色褪せや白化、強度劣化が生じにくいとされています。

ASA樹脂の開発は日本です。調べてみたところ昭和45年に日立化成が開発したとありました。ご存知でしたか?平成17年に現テクノUMGに譲渡したようですが、いずれにせよ日本が深く関わるエンジニアリングプラスチックになります。

調べた範囲ではABSと比較した明らかなデメリットはないようで、機械的特性についてはABSの上位互換という印象です。3Dプリンターで利用する際にエンクロージャーによる温度管理が必要なのも同様です。そのうたい文句通りなのか、実際に確認してみたのが今回の記事になります。結果としては、上位互換だと思いました!

ASAフィラメントの物理的特性

ABSと被ってはしまいますが、ASAフィラメントの物理的特性について強みと弱みを表にしました。ABSと比較した場合は耐候性、UV性だけではなく耐薬品性も向上しており、非常に使いやすくなっています。

弱みはABSとほぼ同様ですが、臭いはABSより弱いと書かれているものや、反りなどのトラブルはABSより多い、と書かれている場合もありました。私が使用した限りでは反りは同じようなもので、臭いはABSよりややマシな印象です。

強み弱み
耐候性・耐UV性が高いエンクロージャーが必要
ABS同等の引張強度、靭性・曲げ耐性、耐衝撃性反りやひび割れに注意
ABSと同様の耐熱性臭いはあるがABSよりまし?
ABSより優れた耐薬品性(酸、アルカリ)ABSと比較して高価なことが多い
ASAの強みと弱み

やはりメインの強みは耐候性なのですが、それ以外にも酸、アルカリ等の耐薬品性もABSより向上しておりなかなか良さそうです。調べてみた範囲では弱みとしては価格が挙げられているのみで、ほかのデメリットははっきりしませんでした。

Polylite ASAについて

ということで、今回紹介するPolymaker社製Polylite ASAです。amazonのリンクもぜひご覧ください。本家Polymakerのサイトで5280円が現在の定価のようです。

そうそう、実は今メーカーサイトではPolylite ABSとPolylite ASAは価格が同じです。もちろん変更される可能性はありますが、ABSより割高、というのが過去の話になるかもしれません。元々Polymakerはちょっと値段が高いフィラメントではありますが品質は確かです。ABSはちょっと高すぎるかな、という方でも元々他社でも割高なASAなら価格差が縮まります。

参考までに、ASAのフィラメントは1番安いものでも3000円程度が相場でした。私がABSーCFでお世話になっているiSANGHUだと3300円なので差は約700円と割高感が少ないです。スプールは紙ではありますがちゃんとアルミの外装に包まれており品質の安定感があります。巻きはしっかりそろってはいませんが普通です。なお、私は今まで紙スプールのPolymakerで最後に接着剤が巻き付いてトラブルになる、というケースは遭遇していません。品質管理は昔からしっかりしている印象です。

印刷プロファイルはABSと同様で可

このASAフィラメント。我が家のプリンターで各種印刷をしてみて、0.2mm、0.4mm、1mmと異なるノズル径で印刷をしましたが私の環境では完全にABSと同様のプロファイルで印刷が可能でした。場合によってはPressure Advance(linear advance)の調整は必要だと思いますが、印刷設定は完全にABSと同一で問題ありませんでした。印刷温度240-250度程度、ベッドは95度程度としています。

また印刷速度は最大で250mm/sまで試しましたが当方のVORONでは押し出し不足にはなりませんでした。(出力物が小さいせいもあるかも?)あ、エンクロージャーは当然必要です。AnkermakeやSnapmakerでも速度は異なりますがABSの設定で問題ありませんでした。写真はAnkermakeで作成した車いす用の点滴棒アタッチメントです。ランダムシームにしているためぼつぼつはしていますが全体的に印刷品質は高いです。ダイソーと3DP製のエンクロージャーで全く問題なく造形が可能です。よかったらこちらもぜひどうぞ。

実際に使用していますが、においはむしろABSよりましな気がします。まあこれはABSでもメーカーによってにおいはかなり違ったりしますので単純にpolymakerが優秀なだけかもしれません。

1層目の反り対策 ボトムを同心円に

このテクニックはABSでも有用ですが、特に大きな印刷物で底面が反ってしまう場合に有効なのが1層目の印刷パターンです。Prusa slicerだとここになりますが、ボトム塗りつぶしパターンを同心円にすることで1層目のそりの予防が出来ます。理由は単純でパスの長い直線がなくなるからです。樹脂がパーセントで収縮するとすると、樹脂の印刷が長い直線であればあるほど反りやすくなります。同心円にすることで樹脂の収縮方向を全方向に分散することが出来ます。ABSやPC等反りやすいフィラメントでは同様に使えるテクニックですので是非ご活用ください。

図は1枚目がPrusaslicerでのダイアログ部分。右は同心円パターンの模式図(cura)です。ほとんどのソフトで設定があるはずですので確認してみてください。

なお、最近は1層目をPLAにして印刷する方法も案内されているようですが当方では検証していません。今度機会があったら試してみようかな・・・

大径ノズルでも使用可能だがひび割れには注意

さて、いくつか印刷をしてみましたが、耐候性確認のために我が家のエアコン室外機用の日よけカバー部分はkaikaSノズルを使ってみました。kaikaSノズルについては以下も参照ください。

kaikaシリーズは3Dプリンター用高級ノズルではありますが、kaikaSシリーズでは耐摩耗性が高いため、ノズル交換の手間や面倒が省けるといった面もあります。何個か買うとプリンターが買えてしまう値段になりますが使い勝手は間違いなく向上しますのでよかったらご検討くださいね。

今回使用しているのはkaikaSでも1mmという超大径ノズルです。ここまで大きくなると果たしてKaikaの意味があるのか、という疑問もあるのですが、硬化鋼ノズルでCFやGF入りのフィラメントをガシガシ使える耐久性は魅力的ですよね。当方ではSnapmakerでこのノズルを使用しています。今回作った日よけカバーは意匠にこだわる必要が全くないので1mmノズルの良い適応です。また、1mmという大径ノズルだとフローレートの問題で高速な印刷はそもそもできません。(単位時間当たりの押し出し樹脂が多くなるためスピードを上げられません)

そういった意味でも速度があまり速くないプリンターにこそ、大径ノズルは向いています。なお、樹脂の収縮を考えると、径や積層が厚い為注意するべきはやはり反りとひび割れです。印刷に時間がかかる場合は特に生じやすいです。十分に庫内を保温して印刷は行いましょう。ちなみにこれは一部積層が割れそうになったりもしていますがなんとか耐えました。大径ノズルのABS,ASAは収縮との戦いになりそうです。

もちろんABS的な特性も十分に持っておりこういう形状のものを作れば柔軟性がかなりあることがわかります。これは0.4mmノズルで試作した蛇腹ですが、この形状であれば問題なく曲げ伸ばしができます。かなりの回数曲げ伸ばししても全く問題ありません。これは後日紹介する乾電池ストッカーで採用したものです。なおPETGなどでも出来なくはないのですが、ABS ASAのほうが動きが滑らかでした。

耐候性のその後 一夏越しましたが変化はありません

ということで耐候性は長期に見ていかないといけないわけですが、とりあえずひと夏を超えた時点では全く変化はありません。色合い含め特に異常はなく、ASAの性質から言ってもおそらく年単位で見ていかないとわからないのではないでしょうか。この味も素っ気もない日よけカバーはこのままにしておいて年を追ってみていきたいと思います。ここに追記していきますので来年もまたこの記事を見ていただけると幸いです。個人的には白っぽく粉ふくまでの期間が長いなら十分価値があると思うんですよね。。

ひと夏超えたASA まったく何も変わっていない。

ABSの上位互換だと思います

ということで今回このPolylite ASAを使ってみた感想は、純粋に「ABSの上位互換」かな、というものです。いくつか色々使ってみていますがABSと比較しての悪い点を指摘できませんでした。そのうえで少なくともPolymakerに関して言えば値段が同じなので嬉しいところです。コスト的なデメリットがないならABSの価値がなくなってしまう気がします(笑)。

ABSの代わりにASAを使って作ったこれもそのうちご紹介しようと思っている部品です。ニンテンドーサウンドクロック アラーモの専用3脚台座です。印刷もきれいですし使い勝手も全く問題ありませんでした。耐久性が求められる部品や光が当たっているところで安心して使えるASAは非常にありがたいと思いました。これからも使っていこうと思います。

それでは今回も最後までお読みいただきありがとうございました!