Ankermake M5 アプリの裏設定紹介 Ankermake studioベータ版も登場 好みで品質と速度のバランスを
今回はAnkermake M5やM5cのアプリを使った細かい調整についての話題です。SnapmakerやVORONで行う細かい調整の一部をAnkermakeではアプリから調整できます。とはいえ通常の画面では設定が出来ない裏設定?に入るので自己責任になりますが、せっかくのプリンターを味わって楽しみましょう!また、最近Ankermake studioベータ版もリリースされました。そのままだと速度がかなり遅いですが今後に期待です。
Ankermake M5について 過去の記事など
Ankermakeはガジェット系で有名なAnkerが発売している3Dプリンターで、現在はM5と、機能を縮小ただしエクストルーダー周りは一部グレードアップしたM5Cの二機種があります。どちらも「カルテシアン」型(門型)のオーソドックスな3Dプリンターでエンクロージャ設定もないことからPLAがメインの方向けのものです。
魅力的かつ高速性能の高い3Dプリンターが多くある現在、コスパが良い機種とは言えませんが大手で一定のクオリティが担保されており、筐体の剛性等の作りは良く、買ってそのまま使っても失敗の少ないプリントが出来る点では評価できる機種だと思います。私はたまたま海外のクラウドファンディングで購入し使っており、今後は力業の6色カラー印刷パーツV6 color engineが追加される予定です。当ブログでも関連記ブログが結構ありますのでよかったらぜひ見てみてください。
今回はより細かい調整を行い方向けに、Ankermakeのアプリ経由で行えるプリンターの調整や最近リリースされた純正スライサーについてご紹介させていただきます。
Ankermake アプリの裏設定
Ankermakeは3Dプリンターとしてはなるべく家電に近く使えるよう設計されており、スマホアプリで比較的簡単に印刷したりモニタリングしたり出来る代わりに、本体側に直接G-codeを送って細かい調整をするインターフェースが用意されていません。印刷するG-codeに埋め込むことはできますが、敢えて自由度が低くされているプリンターです。ですが、実はスマホアプリからちょっとしたカスタマイズが出来るようになっていて、ベータ版ですがアプリから裏設定に入ることが出来ます。別に秘密にされているわけではなく、海外でもオーソドックスに知られている方法ですが、設定変更は自己責任になることをご了承ください。
ということで裏設定の出し方から。プリンターがオンラインの状態で、まずアプリを開いて左上のデバイスを開いて、設定ボタンを押します。機種設定が表示されるので一番下のデバイス情報をタップして、バージョン情報に入ります。下の画像を参照してください。そうしたらこの一番下の「バージョン」を長押し5秒くらい押し続けてください。
・・・すると、バージョンの下に今までなかった「アドバンスドパラメーター(ベータ版)」が出現するはず。これがハードウエア調整への入り口です。
設定できる項目と調整
設定できる項目は2023年11月時点で下記項目です。
- 加速度
- 最大加速度
- 最高速度
- モーターバルス
- K-value
- ジャーク
では順番に、簡単に説明させていただきます。
まず加速度と最大加速度。これはスライサー側でもよく設定する項目で、スライサー側で設定した場合にはそちらが優先されます。ここに出てくるのはあくまで初期値です。ノズルが動き始めて指定された速度までどのくらいの速さで加減速するか、またその最大値を決めます。標準設定では2500mm/s2、高速だと5000mm/s2になりますが、制限を加えることが出来ます。印刷時間や品質と大きく関係する項目です。
最高速度はそのまま、最高速です。こちらもスライサーで別途指定できますが、最高速を制限することでスライサーで速度が最高速より早く設定されていても無効になります。品質と時間にやはり大きく影響を与える項目です。このあたりについては基本的に初期値でも良いですし、以前PrusaslicerをAnkermake で使用する際にお示ししたパラメータを利用するのも良いと思います。
モーターパルスはプリンターのステッピングモーター(パルスを受け取った分回るモーター)の値を調整するものです。プリンターのモーターの数(X,Y,Z,E)だけ設定が並んでいますが、調整するのはEだけです!!ほかのものは絶対に変えないでください(フリじゃないです!!)ちなみにEはエクストルーダーモーターで、個々の調整で押し出し量が変わります。わからなくならないよう、最初にスクショを取って設定値を保存しておくのも良いのではないかと思います。E stepsの調整についてはぜひ下記もご一読ください。
当方の場合は100mm押し出しても実際は98mm程度でした。2%アンダーエクストルードということになります。ということでステップ数がやや増え、1339になりました。単なる算数ですので上のブログ内の計算で簡単に調整が行えます。押し出し不足にならないよう行っておくと良いと思います。
K-valueはリニアアドバンスの調整値です。速度が急に変わるところ、例えば角等での押し出しの変化を規定します。以前も下記ブログで触れたところですが、こちらで規定することでG-codeでいちいち調整する必要がなくなります。初期値は0.06ではないかと思いますが、当方の場合は現在0.05になりました。上にあるAnkermekeレビュー後編の記事内にankermake用G-codeもありますので一度確認してみてくださいね。
ジャークは加速度が生じ始める最低速度です。相当する日本語、あるのかな・・・。イメージしにくいと思いますが、イメージとしては動きの「メリハリ」の規定です。ジャークより下の速度では一気にその速度で始まって、その後は加速度に従って加減速し、ジャーク速度まで下がって一気に止まります。この速度が速いと一気に運動、停止するので動作は切れよくきびきび速くなる一方、荒れやすくなったり、ゴーストが出やすくなったりします。品質に与える影響も多いです。その分、動作はきびきび速くなります。ただ、この項目、今の時点では設定がおかしく、値が0.15といった不思議な値になっています。しかも修正してもうまくできないようです。本来は10とかになるはずなんですが・・・気持ち悪いので今回は調整を割愛します。
Ankermake studio ベータ版登場
また、最近AnkermakeのホームページではAnkermake studioのベータ版ダウンロードが提供され始めました。以前から独自スライサーをあきらめてPrusaslicerベースのものに置き換わる、というお話はしていましたが、それが実現してきた形です。ただ、現時点では英語ですし、スライサーとしては本当にPrusaslicerそのものです。またベータ版というところがあるのでしょうが、標準プロファイルはとにかく造形が遅いです。オーバーハング等滅茶苦茶ゆっくりになる設定ですし、前述のジャークのところ等何か調整が入っているのかもしれませんが遅い。高速にしてもそこまで速くなりません。高速造形といううたい文句はどこへ?といった感じです(笑)当ブログを見ていただいている方はPrusaslicer使われている方も多いと思うので、特に問題ないと思います。元のPrusaslicerは結構新しいバージョンで、分割も行えます。
なお、現状感じる不具合はアプリ立ち上げ初回造形で強制オートレベリングをしなければいけなかったり、プリンターの印刷画面がうまく見れないことです。いずれも大きな問題にはなっていませんが、修正されていくと思います。
また、造形自体はすごく品質重視の設定になっています。難しいことを考えずきれいに出すならAnkermake studioを使うのも十分にありじゃないかな・・・。壁は3層、底面4層、上面は5層の設定です。Benchyも船体部分のオーバーハングが低速になってしまうため50分強かかる速度設定になっています。さすがに遅すぎると感じた場合はスピード部分の下部にあるダイナミックオーバーハングスピードのチェックを外しておくと体感でかなりマシになります。おそらく高速造形設定が結構厄介(以前当ブログでも触れた、独自スライサー用に開発した高速設定のハード側の制御によるところもあると思います)なのではないかと思いますが、今後の改善に期待したいところです。
プリンターは使い手次第 使いこなして楽しみましょう
最近、3Dプリンター界隈は高性能化、低価格化の嵐が吹き荒れています。以前のブログで当機種を紹介した時のように、手頃なCoreXY機も増えました。逆にAnkermake はM5Cが発売されたりとより簡便に、低価格化するほうに進んでいる印象を受けます。Ankermake はメーカーの保証が(おそらく)しっかりしているのと、コンベンショナルなプリンターであるためやはり安定性が高いのが美点です。各軸の剛性も高くいい線言ってると思います。オールメタルホットエンドの発売も近いようなので、より発展させるには簡易なエンクロージャーをそのうち作りたいところです。
特に今回のAnkermake studioを見ていると、より失敗のない安全なプリントへ舵を切っているのは確かです。逆に言えば、CoreXY機に速度面では敵わないのでトーンダウンしている感じです。定価の10万は高いので、M5C等含め5万程度だと競争力があるでしょう。私は10万以上の機種は今後CoreXY機にほぼ入れ替わるのではないかと思っています。
また、Ankermake については力業の6ノズル造形、V6 color engineもそのうち出ます。フィラメント切り替えは速いので、シングルノズル機では行いにくい(時間がかかる)、フィラメント交換回数が多く高さのある多色印刷にはかなり威力を発揮すると思うのですが、開発がうまくいくかは分かりません。ゴミも少ないですし期待したいところですね。なお、私はクラウドファンディング組で購入しており、V6 color engineが届くことが確定しています。人柱として当ブログでも存分に扱う予定なのでよろしくお願いいたします。
せっかくの3Dプリンター、色々使いこなして楽しみましょう!当ブログの各記事がどこかで役立てれば幸いです。今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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