600gで多用途に使える FMV LOOX レビュー CADもエンタメにも使えて、Androidアプリにも期待できるタブレットPC

2022年11月20日

正直購入して使ってみるまでここまで実用的なPCだとは思っていませんでした・・・。ファンレスでFusion360がそこそこ使える13.3インチ有機EL搭載の最軽量PC、FMV LOOX。購入してしばらく使用していますがマルチな用途に使えるWindows PCです。iPadとは全く異なる立ち位置ですが、かなり幅広い用途で使える印象です。特徴が尖った製品ということでご紹介させていただきます。

FMV LOOXって?

FMV LOOXは富士通より2022年発表、発売されたWindowsタブレットPCです。「LOOX」という名称は一定以上のPCが好きな年齢層にはなじみのある名前で、20年以上前にモバイルPCとしてFMV-BIBLO LOOXというものが販売されていました。当時としては画期的なPCであり、今回こうして形態は違えど復活したことは、古くはFM-TOWNSユーザーだった自分としてはうれしい限りです。

今回のLOOXは富士通PC40周年記念として開発されたものであり、中途半端なメーカーでは実現できない特徴を有しています。CPUは超低電圧版の12世代Coreシリーズで、私が購入したものはCore i7-1250U (10コア/12スレッド/最大4.7GHz) になっています。TDPは9Wと省電力のCPUです。LOOXで個人的に「すごいな」と感じたのはこの3点です。

  • HDR対応13.3インチ有機EL搭載なのに薄型で重量600g以下
  • 上記筐体でファンレスにもかかわらず実用的な性能
  • USB4、Thunderbolt4対応

まず、Windows機で600g切ってるのはかなりすごいです。画面サイズが13.3インチですからね・・・。iPad proだって680gくらいあります。バッテリーレスのモバイルディスプレイだって350gくらいなので異常さが伝わるのではないでしょうか?

さて、外観は下のような感じです。黒ベースの箱もシンプルで好感が持てますし、仕上げも非常にきれいです。

拡張性は限定的だがUSB4対応でeGPUも接続可能

タブレットPCということで本体そのものの拡張性は極めて限定的です。SDカードや画像出力はもちろん、USB-Aもありません。でもこのPCの性質を考えればこれが正解で、必要ならUSB-Cのドックを使えばいいだけの話です。1ポートはeGPU接続にも対応しており、外付けGPUを接続することでちょっとしたデスクトップ以上のグラフィック性能を得ることもできます。フルHDならゲームもできてしまいますが、この辺りはまた別記事で詳細を報告させていただきます。

私もドックは所持していますが、普段はあまり使いません。最近はクラウドで個人的なファイルはやり取りすることが多いですし、自宅で、必要な時だけつけられれば十分なんですよね。

当方が所持しているドックは右のものになりますが、接続時電力の警告が出るものの問題なく使えています。しょっちゅう使うものではないですし値段を見つつ購入するのが良いと思いますが、個人的には電源接続と有線LANがついているのがお勧めです。良かったらamazonリンクもご利用ください

なおちょっとした機器の接続にはダイソー等で売っているAtoCのUSBアダプタがあると便利です。OTG規格に対応したUSB3.0規格のものが入手できます。これを利用することで一般的なUSBA規格の機器が利用できるため一つは持っておいたほうがいいと思います。

処理性能は10世代Core同等、irisXe搭載でFusion360も使えます

まずはパフォーマンスです。使っていて本当にストレスがありません。完全にシャットダウンした状態からは富士通ロゴが出るまでの時間が少々かかりますが、スリープ状態からの復帰も早く、スリープ中のバッテリー消費も少ないです。

ストレージはSAMSUNG MZVLQ512HBLU-00B07(512GB)が使用されています。CrystalDiskMarkでもreadで3000MB/s、書き込みも1600MB/sとNVMe3.0接続のSSDとして十分な数値が出ています。通常利用で困るシーンはなさそうです。

CPUはどうでしょうか?Cinebenchの結果が下記になります。今の基準として速くはないですが、4000ポイントを超えています。これは以前ご紹介したGPD WIN MAX初代(i5-1035G7)を超える値であり、コア数が多いことが理由の一つかなと思います。。シングルスレッドでも1300ポイントを超えており、通常使用に十分な値です。個人的には本当に9Wxファンレスなのか疑いたくなる性能だと思います。放熱がきちんと行われているため10分間の負荷でもこのスコアが出てしまうんですよ・・・

続いて3DMARKです。こちらも初代GPD WIN MAXと同等以上程度のスコアが出ます。(初代GPD WIN MAXは2500程度)11世代Coreの2代目GPD WIN MAXとはかなり差が開いてしまいますが、2世代前のスタンダードなPCと同等の性能がこの筐体で出せるとは大したものです。(注:外付けGPUと比較してはいけません)

結果として、個人的に使いたいFusion360が普通に使えます。非常に複雑な部品点数が多いモデルでは不具合が生じるのかもしれませんが、フルHDでの使用、私のような素人が使う分にはそれほど大きな問題にならない印象です。元々Fussion360のPCへの負荷は高くないのですが、あまりストレスなく利用できるのは素晴らしいと思います。このクラスでちゃんとFusion360が使用できる、世界最軽量マシンではないかと思います。魅力的ですよね。この組み合わせは使い勝手が良いので、宜しければ当ブログ他の記事も見ていただければ嬉しいです。

有機ELの画面はキレイ、16:9なので動画鑑賞向き

画面は13.3インチ16:9の有機ELです。後述の電子書籍などではiPadやsurface等の4:3がベストですが、エンターテインメント用途では威力を発揮します。有機ELは黒が締まるので非常にきれいです。リフレッシュレートは60Hzですが、HDRにも対応しています。いっぽうでHDRはONにするとグラフィック系アプリの速度が若干低下するので注意したほうがいいと思います。

試しにAmazonプライムビデオ(Windows版)を使ってみましたが、さすが有機EL、動画のエンタメ性能は高いです。縦横比の関係でiPadより一回りは大きくみえます。筐体を考えれば音もそう悪くないと思いました。音量はそこそこ出ますが、出しすぎると割れます。全体として許容範囲内だと感じます。音についてはMaxx audioというソフトが入っていて音の補正が行えます。個人的にはこういうDSP処理はあまり好きではないですが、元がいまいちなのでこういう手段での補正も悪くないと思います。

とはいえ4スピーカーではありますが、iPadのように空間オーディオに対応したりはしていません。音質を含めてiPad proには及びませんね。背面のシングルカメラもそこそこは映りますが同様にiPadのような性能は期待できません。Windows機としては遊べると思うし、素性は悪くなさそうなので今後に期待したいところではあります。ただ、動画にしろ静止画にしろちゃんと画素数も選べます。Windowsのカメラアプリもいつの間にか進歩はしていました(笑)。

電子書籍等、Kindleを含めAndroidアプリも使いやすい

ここはこれからが面白いところではありますが、AndroidアプリがWindows11で公式に動くようになってきています。現在建前上インストールできるのはAmazonアプリストアのみであまりに「使える」アプリが少ないのですが、非公式では色々なアプリが入れられます。3D表示は課題も多いですしスペック的にもお勧めされないでしょうが、電子書籍等のアプリがLOOXで動くと一石二鳥でお得感が増しますよね。画面サイズは前述のとおり16:9なので本を大きく見ようとするとiPadがやはり素晴らしいと思いますが、Windowsならではの使いやすさが活かせるところです。

さて、Kindleアプリほか、いくつか非公式で漫画系アプリを入れてみました。結果・・・違和感もあまりなく普通に使えます。タッチ操作もできるため使いやすいです。ゲームはともかく、こういう用途なら全然問題ないと思います。Androidアプリの互換性などはこれからも進歩すると思いますので今後も期待したいところですね。

ということで下は禁断の(?)漫画3冊同時表示です。左からKindle、ジャンププラス、サンデーうぇぶりになります。後ろ2つは非公式にインストールしたアプリですが動作に問題はありません(Google playは使えないですが。。)ジャイロセンサーがついているので16:9ではありますが立てての表示も違和感なく行えます。

高負荷時は発熱あり。課題はバッテリー持続時間

さて、魅力的なこのLOOXですが、課題ももちろんあります。一つは本体の発熱です。ファンレスのため放熱は当然ながら本体筐体を通じて行われます。結果として結構熱くなります。特にCPUの裏側である本体向かってカメラ側、USB側はかなり暖かくなります。もちろん火傷するような温度ではないですが、手に持つとちょっと不安にはなります。その分CPU温度は過剰に上昇しないようになっていてある程度長く稼働させてもCPU温度は50度程度と低く推移しています。放熱がちゃんとできている証左でもあるので評価が難しいところです。

もう一つの課題はバッテリー持続時間です。Windowsマシン、比較的大きな有機EL液晶かつ薄型でバッテリー容量も限られるためやはりバッテリー持続時間は短くなります。動画鑑賞とかだと負荷が少なくてよく持ちますが、Fusion360をバッテリーで運用すると数時間でかなり減ります。実際の消費量は今度計測してみようと思います。長時間使う際にはUSB PD対応のモバイルバッテリーが欲しいところです。当方の20000mAhのモバイルバッテリーは問題なく利用することが出来ました。

このバッテリーはなかなかおススメです。よかったらこちらもどうぞ。

ファンレスWindows機でもここまでできる、価値ある一台

購入してみて「これは良いものだ」と思う一台です。Windowsタブレットというジャンルそのものに興味がなければもちろんお勧めしませんが、過去にWindowsタブレットで痛い目を見て敬遠されている方にとっては目からうろこの商品です。ファンレスで無音なのも個人的にはうれしいところです。今まで私が購入しているPC(最近だとGPD WIN MAX 2021とか)は性能を活かすためにファン音が大きいので、静かに作業したいシーンでは重宝すると思います。

個人的にはキーボードを自由にレイアウトできるタブレットスタイルのPCは好きです。特にLOOXは他PCとの連携機能等も充実しており様々なシーンで役立つ一台になっていると思います。

このLOOXについてはしばらく色々使い倒しながら今後も色々な使用感をお伝えできればと思いますのでよろしくお願いいたします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!