3Dプリンターと意匠権 実車を元にしたカーモデルのCADデータの権利は? 配布は? 意匠登録について調べたら宝の山を発見

前回のブログで製作した3Dプリント用のダイソー版ミニ四駆用ボディ。このSTLデータをブログにポンっと置いても良いのか、疑問に思って調べることにしました。特許?意匠?実際の車とおもちゃは別?等素人なりに調べましたので参考になればと思います。そして、意匠検索はモデリングに役立つ3面図だらけ、個人的には宝の山でした・・・!
オリジナルデータの権利についても最後に言及していますのでご確認いただければと思います。

まずはじめに

私は素人で法律家でも弁護士でもなく、法に明るいわけでもないただの一般市民です。今回のブログを書くにあたり色々調べましたが、「嘘」になっている可能性は否定できません。むしろ間違えていたら訂正したいので教えていただきたいです。ぜひコメントいただきブログにいらっしゃった方々と勉強できればうれしく思います。

ということで、本記事を参考に何か損害があっても私は責任をとれないのでそこだけはご了解の上お読みいただければと思います。ただ、意匠は実在のものをモデリングする練習素材としてはとても役に立つ宝の山だと感じました。

また、今回の話は基本的に実在する車、電車など量産されている工業製品についての話です。アニメやゲーム等の版権とは全く異なる記事(調べていないのでわかりません)ですのでお間違いないようお願いいたします。

この記事を書いた理由

今回の記事のきっかけは、前回ブログで私が作成したトヨタのGRヤリスっぽいデザインのダイソーミニ四駆互換のボディを作ったことにあります。詳細はこちらのブログもぜひ!

子供のリクエストでしたが楽しく作れましたし、出来も(主観では)まあまあ。また、 こういうのを作ると発見も色々あって自分の練習にもなり個人的には満足しました。そこで思ったんですよ。これ、欲しい方に配布してはいけないのかなと。どこかで自分が作ったこれが走ってたらちょっとうれしいですよね・・?

営利目的ではないし、出来上がったものはホイールハウス周り中心にヤリスとは結構遠いです。ただモデルにしているのは間違いなく、配布したらトヨタに怒られちゃうのだろうかと考え、調べていることにしました。

車のデザインは主に意匠登録で守られている

ということで調べてみると、色々初めて知る事実が続々・・。まず、権利なんていうと素人的には「特許」を思い浮かべるわけですが、新しい「ひらめき」は「特許」、「デザイン」で適用される権利は「意匠」と呼ばれます。機能とか機構でなく、意匠は「見た目」の権利です。価値のある、オリジナルな見た目を「意匠登録」することで権利が守られる仕組みになります。部分的な意匠も認められており、例えばレクサスの特徴的なグリルの形等も意匠登録されています。

なお一般的な3Dプリンターで製作したものの権利に関する記事も探すといくつかありました。下記等参考になると思いますのでご一読ください。3Dプリンター関係なく、モノを作る方全体にかかわることなので、特に販売して利益を得る行為については十分な知識を得ておく必要があると思いますね。

じゃあ今回の車はどうなんだ、ということですが自動車としてはほぼ全てが意匠登録されていますが、模型、おもちゃとなるとずいぶんと話が変わってくることがわかりました。

自動車とおもちゃ、意匠は別物 有名どころはおもちゃも登録済み

大前提として、少なくとも日本においては自動車という製品自動車おもちゃという製品は全く別のものと判断されます。意匠は製品の見た目を規定する法律なので、自動車の見た目と模型の見た目は全く別の意匠になります。

つまり意匠権という側面で見れば「自動車おもちゃ」としての意匠が登録されていなければそのデザインを個人が製作してたとえ販売してもそれ自体には法的問題はないということになります。ただそこにメーカーやロゴが入ればそのことに対して権利が発生する可能性があるという点には留意が必要です。また有名どころのスーパーカーはおもちゃでも意匠が結構登録されています。一方で意匠権には期限があるので、古いデザインは新規に登録されていなければ大丈夫だと考えます。下記ページもとても勉強になりました。

また、モデルガンの事例ではありますが有名な判例として「ベレッタ事件」があったようです。ベレッタとそのガスガンを作るウエスタンアームズが原告となった事件のようですが、最終的に「ベレッタ」という銃そのものの模型は実銃とは全くの別物である、という視点からの判断となっています(そう読み取りましたが、解釈に問題あれば教えてください!)。

ウエスタンアームズのモデルガンであるベレッタと類似性を争った場合は分かりませんが、ベレッタという実銃と模型の類似性による商標・不正競争は生じないということなんだと思います。なので3Dプリンターで車を作る場合はおもちゃの車で引っかかるかは必ず検索する必要があるでしょうね。この判例については下記等参考にどうぞ。

意匠の検索方法 宝の山を発見 モデリングの練習に最適

じゃあ意匠ってどうやって確認するの・・? ということで調べると、下記の特許情報プラットフォームのページで色々確認できることがわかりました。知財に関する独立行政法人、末尾go.jpの公式ページになります。

ただ、意匠登録って車の車名が入っているわけではないため、検索に癖があります。また分類も独自なものなので上手に目的のものを検索するのは意外に面倒でした。原則としては下のスクリーンショットのように、「意匠にかかわる物品」のところに「自動車おもちゃ」などの意匠分類を、権利者に「タカラトミー」等の会社名を入れるのがよさそうでした。

なお、意匠にかかわる物品名は文言が決まっているので適当に入れてもヒットしません。分類は下のサイトから検索が可能でした。おもちゃについてはEグループ(趣味娯楽用品及び運動競技用品)になります。実物の車はGグループです。

この意匠検索で出てくる情報、個人的には宝の山です。全部4面図や斜視図が登録されているんですよ!!実際の車の意匠も検索し放題、外観も見放題です。すごくモデリングの参考になると思いませんか??当然自動車で検索しても色々出てきます。価値のあるデザインを誰でも見ることが出来るんです。勉強になること間違いなし。時間があったら1日中眺めてしまいそうです。

おもちゃとしてのヤリスは意匠登録されていない様子

キーワードで確認してみましたが、おもちゃとしての自動車が登録されているのは前述のようにお金になりそうな?スーパーカーが多いです。外車は結構登録されている一方、国産車の登録は少ないですね・・・。日産は結構出してますが、トヨタはほとんど出していません。

ちょっと気になったのですが、国産車のトミカが意匠的にはどうなっているのかはわからなかったです。トミカもメーカーも申請していないので意匠権としては守られていない可能性が高いですが、車種ごとにすべて意匠権で守るほどの必要がおもちゃ市場にないという判断なのかもしれません。

個人的には、自動車メーカーとしては模型が販売されてもマイナスに働くことは無いだろうと思うのでそのあたりが関与しているのかも。タカラトミーはトミカがあるので、おもちゃの権利を主張してもよさそうですが、トミカは市場が確立していますし、モデルを作って販売されたとしてもあまり影響がないのかもしれません。正直トミカクオリティは常軌を逸しています。金属製のボディであれをつくって数百円で売れるのは本当にすごい・・・。

今回のケースについては現時点で問題が生じる可能性は少なそう

以上から、今回のダイソー版ミニ四駆互換、GRヤリスっぽいボディが意匠権に抵触する可能性は少ないと判断しました。念のため商標についてもこちらのサイトで確認しましたが、ヤリスは英語表記のものが登録されているのみで、GRについてもロゴとしてのGRマークが出現されているのみでした。少なくともただテキストで表記してあるだけなら問題ないはずです。

と書いていますが、確証がある訳ではありません。なんといっても私素人ですし・・・。少なくとも大問題にはならなそうというところは判明しましたので、もし今後問題になってしまった際には、皆さんの後学のためにもご報告させていただきます。また知識をお持ちで、私の明らかな間違いを指摘していただける方がいらっしゃったらぜひ教えてください!

STLはこちら 自作データの版権はクリエイティブコモンズを参考に

ということでこちらがSTLになります。もちろん、これをダウンロードされる方はちゃんとこのページを読んでいただき、クリエイターの皆さんの権利(今回は意匠権)について勉強していただいていることと思いますので(笑)、良かったら作ってみてくださいね!

GRヤリス風 ダイソー版ミニ四駆対応ボディ

ダウンロードはこちら。本体と前後留め具パーツの3ファイルが入ったzipファイルです。

※ボディと留め具の接続に4mmくらいのm3ネジが4本必要です。また、使用していないフィラメントの端材が後方の固定に必要です。(前回ブログ参照)

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 – 非営利 – 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

最後になりますが、このすぐ上のクリエイティブ・コモンズ表示についてです。デジタルデータ上の著作権の扱いに対してこのクリエイティブ・コモンズという国際非営利組織がプロジェクトを運営しており、どの程度自分のデータに対して権利を持つのかをクリエイターが意思表示するツールとして使われています。ちょっと日本語訳は微妙ですが、ぜひ活用していただきつつ、素晴らしいと感じたら寄付するのがいいと思います。少ないですが私も寄付しました!詳細はこちらのページから。

なお今回のボディについては非営利、改変禁止のライセンスに設定しています。個人利用の際は改変しても問題ありませんが複製、再配布する場合は上記のとおり適正な利用をお願いいたします(再配布するほどのものではないですが・・・)。多分これは著作権を守るのと同時に、ダウンロードした方を守るものでもあると私は思います。これを明示することによって少なくともこのコピーを適切に配布したとしても、著作権的な責任が私に限定されると思うんですよね。つまり、もしトヨタに怒られるとしても私だけで済む、はず。

製作者の権利を守って楽しい創作ライフを!

いかがでしたでしょうか?この記事が色々製作される皆さんの助けになったら幸いです。意匠権に限らず、皆さんそれぞれの権利を大切に、楽しく創作できる世の中になってほしいですよね!もしよかったらこの記事自体もシェアしていただければ私もうれしいです。・・・広く読まれて、間違いがあったら教えていただきたいと思います(笑)。

私自身もとても勉強になりました。今回も最後までお読みいただきありがとうございました!今後ともよろしくお願いいたします。