3Dプリンター (Snapmaker) のメンテナンス方法は? メーカーお勧めのPAOベースのグリスを購入、使ってみました

2022年1月9日

機械を状態良く、長く使うために潤滑は大事ですよね。我が家のSnapmakerも使用頻度が多いため、メンテナンスとしてリニアレールガイド部分のグリスアップをしてみることにしました。本国メーカー推奨のもとに似た商品としてミリタリー系で使われるグリスを購入、しばらく使ってみていますが問題なさそうです。多くの3Dプリンターでも使えるグリスなのではないかと思いますので参考になれば幸いです。

Snapmakerのお手入れについて

我が家でお役立ちの3Dプリンター、snapmaker 2.0 ですが、意外にないのがお手入れの情報です。一般的なモジュールの交換や3Dプリンターのノズル交換などは情報があり、当ブログでもノズル交換の記事は書かせていただいていますが、各軸リニアモジュールについては特に記載がありません。おおむねメンテナンスフリーでいいように作られているのだとは思いますが、かなり動きの多いパーツですし、ずっと何もしないというのは躊躇われます。

そんなおり、たまたまTwitterでお世話になっているAldebaranさんの右のツイートからsnapmakerのグリス選びをしてみることにしました。なお英語ですが本家のフォーラムにあったメンテナンス情報のページは下記になります。CNC50時間行っても内部にほとんどダストが入らないとのことででかなり優秀そうですが、CNC主体の方は分解清掃がどこかで必要になるのではないかと感じました。

このスレッドでグリス(lubricant)選択の話題がでており、今回これに沿って、日本で購入可能なものを試すことにしました。

Snapmakerについては当ブログに記事がたくさんあるのでよかったらご確認くださいね。

PAOベースのグリス って何?

上記フォーラム内で、中の人が推奨グリスについて書いてくれています。それによると推奨のものは下記の通りで、厳密ではないですが目安にしてほしいとのことでした。頻度としては年一回くらい使えるよ、という記載があるくらいでそうしょっちゅう必要なものではなさそうです。

  • Base Grease: PAO (Polyalphaolefin) – 70-80wt%
  • Thickener: Lithium Soap – 15-25wt%
  • Other: Additives – 0-5wt%

ベースグリスであるPAOとはポリアルファオレフィンの略で、化学合成油で、鉱物由来ではないためグリスとしてはかなり高性能なものになります。今回私も調べて学びましたが、化学合成のため硫黄や窒素が含まれず、粘度指数が高く温度に対する安定性があり、剪断安定性にも優れているとのこと。一方で100%化学合成のエンジンオイルと同様、価格が高いのがネックのようです。場合によっては密封環境で追加増脂出来ない箇所に使うため、snapmakerでもこれが選ばれたのかもしれません。

また、増ちょう材としてリチウム石鹸が挙げられています。これは一般的なもののようです。より高温度の特性をよくするためにはウレア系増ちょう材が使われるみたいです。(あまり詳しくなくてすいません)
ちょっと調べた範囲では、リチウム石鹸で150度程度までなら問題ないみたいなので、3Dプリンター周りで使うには問題なさそうです。ただ、グリスの商品説明を見ても、組成まで書いてある商品って一般向けではあまりないような気がします。今回色々見てみたのですが、ベースがPAOと明記してあるものは非常に少なかったです。なお他の超高性能グリスとしてはフッ素油ベースでPTFEが配合されたフッ素グリスがあるようで、50gで1万円とかします。すごい・・!

なお、おそらく安いものは間違いなく鉱物油ベースだと思いますので使わない方がいいと思います。

今回選択したグリスはこちら

PAOベースと明記され一般人が買いやすい商品をターゲットに探しましたが、意外とないです。当初モノタロウで見たところモリコートというグリスがPAOベースでありましたが1kgで売ってました。・・・そんなに要らない(笑)

また、タミヤのミニ四駆用Fグリスという商品もPAOベースのようでしたが、こちらは数gしかなく、流石に足りない印象です。探せばもっといいのがあるのかもしれませんが、私には発見できませんでした。むしろもっといいのがあるならばぜひコメントで教えてください!

ということで、最終的にAmazonにあった右の商品を購入してみることにしました。どうやら電動ガンやガスガンなどミリタリー系用の駆動部に使用するグリスのようです。2種類あるのですがギア用を選択。ただ届いたものの説明にはシリンダー向けのセッティングなどの表記もありどう違うのかは分かりませんでした。良かったらリンクもご利用ください。

なお当方の限界として、増ちょう材が何かは不明でした。でも一般的に使用されているリチウムの可能性が高いのかな、と思います。また添加物としてフッ素やPTFEも配合されているようでなかなか良さそうなので試してみることにしました。

いざ塗布 本体は分解せず出来ました

実際の塗布ですが、もし全部ばらすとなるとそれなりに大変です。まずエンクロージャー外さないといけませんし、グリスアップのためにリニアモジュールを外すのもどうかと思い、そのままできるか試すことにしました。基本的にある程度まんべんなくグリスアップ出来れば、あとはモジュールが動いているうちに均一になるはずです。グリスアップの動画は私の物ではありませんが海外で下記のような動画が参考になります。

ネジを外すのはケーブルがついていない側(ケーブル側にはステッピングモーターのモジュールがあります)ですので組みあがった状態のsnapmakerからアクセスしやすい位置にあります。
隅から隅まで見るのは分解しないと難しいですが、ほとんどの範囲は視野内もしくは筆が届く範囲だと思います。snapmaker付属のヘックスドライバーで蓋部分を固定しているネジを外し、ぺらっとめくればすぐに見ることが出来ました。

我が家では少なくとも潤滑切れの心配はなさそうでしたが、念のため塗布しておきます。なお、今回は一番動きが少ないZ軸についてはグリスアップはしませんでした。ユーザーの方はご存じだと思いますがSnapmakerの場合、5本すべての軸が同じ規格のリニアモジュールです。差異がないため個人的にはある程度使用したらリニアモジュールのローテーションを行うのが長持ちの秘訣のように感じます。不具合が一本発生してもそれだけ取り換えれば済むというのは合理的でモジュール型3Dプリンターの強みを感じます。

グリスアップ後は表面にはみ出しがグリスをふいて、たるまないようにふたを戻してねじ止めして完成です。ノズル交換等もそうですが、製品に付属の工具ですべて作業できるのは親切で良いと思います。

定期的なチェックとメンテで快適な3Dプリンターライフを

Snapmakerに限らず、駆動部品が多い3Dプリンターではグリスアップは必要なメンテナンスではないかと思います。機械に精通されている方は感覚でわかるのかもしれませんが、私のような素人だとグリスの選定一つでも苦労することがわかりました。今回学んで購入したPAOグリスはおおよその3Dプリンターで使用可能そうで、温度範囲としても最適なのではないかと思います。プラスチックに対する悪影響もほぼないとのことですし、応用範囲が広いと感じました。ただ、使用は自己責任でお願いいたしますね。

ただ、今回グリスアップしたことでの変化は、実は実感できませんでした。Snapmaker中の人の言われる通り、年一回くらい使えるよ、ということで少なくともしょっちゅう行うものではないと思いますし、過ぎたるは猶及ばざるが如しということもあります。グリスアップ以外に各所のねじ止めが緩んでいないかなど基本的なことも確認するのが良いと思いますし、良い機会にもなると思いますので、ぜひ大事なプリンターをメンテして長く使っていきましょう!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。