3Dプリンターで作る無限軌道 歯車の設計を利用して TPU製の履帯作製 タイミングベルト等に応用も出来そう

2022年1月18日

Fusion360 を用いて歯車を設計し、これを改変してTPUで履帯を作成してみました。設計や試行錯誤がしやすく、本来なら固定するべきモジュールを変更することで歯車数を固定しつつ色々な長さのベルトを作ったり出来ます。この方法で履帯を作成し、それに噛み合うギアを作ってみましたのでご紹介します。

無限軌道(俗にいうキャタピラ)を作ろう

4歳児にガルパンを見せたところとても気に入り(笑)、結果として無限軌道の戦車を作ってくれと言われました。無限軌道、俗にいうキャタピラを3Dプリンターでどう作ろうかと思ったのですが、ちょっと調べてみると出てくるのはやはり王道、多くの部品を組み合わせた本格的な履帯でした。
ご存知の通りしっかりした戦車のプラモについてくる組み立てが大変なものですが、観賞用でサイズが大きければFDM方式の3Dプリンターでも作れそう。ですが、4歳児が求めているのは砂場で使える動かせるやつです。実際にうまく動くかはともかく、強度がないと話になりません。そこでちょっと思いついたのが今回の履帯作成方法です。以前ギアを作成する記事を作成した時の応用になりますので、よければこちらもぜひご覧ください。下記記事と同様、今回も使用ソフトはFusion360、ギア作成のアドオンとしてFM gearsを用いました。

履帯を動かすためにはどうせ歯車が必要なので、CADで歯車を作ってそれを柔らかい素材で作ればベルトになるんじゃないか、というただの思いつきです。でもWebを探してもあまりやっている人が見当たりませんでした。個人的にはサポートがうまく外れるかにはやや不安がありましたが、TPUはSnapmakerで比較的うまく造形できていたので、技術的なハードルはないと考え作ってみることにしました。

形状の作成1 履帯

ほとんどの方には釈迦に説法になってしまいますが、自分の覚書としても作成手順をざっくり紹介させていただきます。まず内歯車をベースに履帯を作ります。今回はおもちゃとしてのサイズ感から直径8cmの内歯車を作ることにしました。TPUはスカスカにならないように若干フローを上げるので、クリアランスはできる範囲で大きめの方が良いです。今回は履帯として、中央部のギアとそれを支持する両側のギアを作るため、最初が中央部の厚みになります。

注意しなくてはいけないのはベルトとして造形し屈曲率が変わると、本来のモジュールではなくなることです。動輪にするギアは履帯が通る際の曲率によりますが、より小さいモジュールにする必要があります。従って履帯のモジュールは大きめの値を入れておくのがオススメです。
また、曲った時にもクリアランスを稼ぐため面をオフセットしておくのも良いと思います。この際計算に時間がかかりますので気長に待ちましょう。これらの程度については理工学系の方なら厳密に計算できるのだと思いますが、私は完全な素人なのでその指南は出来ません(笑)。もしよかったら簡単に教えてください。

ギアを作ったら、外周をオフセットしてベルトの厚みを規定します。今回は最薄部でノズル1本、0.4mm分としてます。結論から言えばこれでも出来上がったら手では千切れない強度で十分でした。
履帯のメインを作ったら、両側の支持部分を作ります。元の形状を新規ボディで押し出しても良いですし、新たにギアを作ってもいいと思います。出来上がったら1/2歯車分回転させて、反対側にコピーして履帯が完成です。

外側のブロック形状は新たにブロックパターンをスケッチして、円周に並べて押し出すだけにしています。複雑な形状を別途作ることもできるかもしれませんが、TPUの造形難易度が上がると思います。

形状の作成2 動輪

履帯が出来上がったので次に動輪を作ってみます。いくつかのパターンを作りましたが、最終敵に選んだのは子供が遊ぶサイズで基本的0.4mmノズルで作成できるギリギリのモジュール1です。用途や履帯のモジュールに応じて変更してください。今回は通常の外歯車を作ります。歯数は12にしました。履帯同様、クリアランスを確保しつつ、形状を適宜修正します。脱輪を防ぐため、また履帯の形状似合わせるため、中央部より両脇の歯車をオフセットでやや大きめにしています。最終的に1/2歯車分同様にずらして対側にコピーしておけば完成です。基本的な作り方は履帯と全く同様です。

いざ造形

造形についてです。TPUでキレイな履帯を作るのは意外に大変なことも多いです。ダイレクトエクストルーダー機をお勧めしますが、設定はプリンターやフィラメントでかなり変わると思います。また、フィラメントにより最適な形状は変わる可能性があります。

現在私が使用しているのはダイレクトエクストルーダー機のsnapmaker 2.0で、スライサーはcuraを用いています。ただ基本的な設定は以前の私のTPU設定に近いですのでこちらも参考にしてください。

当方で利用したのは上記のサインスマートの透明TPUです。色々作っても意外に無くならないためもう半年以上防湿庫に置いてありますが、特に問題なく利用できています。色も結構選べるのでよかったらamazonリンクをご利用いただければ嬉しいです。

履帯は中央部のギア形状のためにサポートが必要ですが、下手なサポートはノズルのパスが複雑になって失敗の元になります。多少材料を使いますが、私の場合は下のように歯車の先端を支えるようにリング状のスケッチを押し出してサポート部分も一体に造形しました。(高さは1積層分低くしておいてください)

ギアについてはelephant footを避けるため、initial layerを−0.1とかしておくと良いと思います。キレイな造形を目指してサポートにはルーフを設定しています。

基本が完成! 応用範囲が広そうなのでぜひお試しを

ということで出来上がったものが下記になります。透明TPUとはいえ作った感じとしてはまさしく履帯で、個人的にはとても満足です。引っ張りにも十分強く、切れそうな感じはありません。糸引きもほぼなく、サポートにした輪っかもキレイに剥がすことができました。灰色のでやったらより履帯感?が出るかもしれませんね。経験上水にも強いので完成したらお砂場で活躍できそう(笑)

動輪のギアも均一な出来で問題なく、サポート面もキレイで歪みも気になりません。モジュールは今回いくつか試してはいますが、履帯を適度に歪ませて嵌めるとちょうど良い塩梅で回るのはモジュール1でした。Twitterに短い動画もあるのでここに貼らせていただきます。なお、これ以上小さいモジュールでギアを作るときはより小径のノズルが必要になります。

さて、歯車を基にしたTPU履帯、いかがでしたでしょうか?Twitterですでに指摘いただいていますがこの方法のいいところは製作が比較的簡単なことと、歯車を基礎としているだけにタイミングベルトなどに応用できることがあります。また、この形状を元に、噛み合いの良い組み立てタイプの履帯を作ることもできるはず。
歯数と周径に合わせてモジュールを柔軟に変更するというCADの掟?を無視したこの方法ですが、皆さんの何かの製作に役立てば幸いです。なお我が家では、まだ4歳児が遊べる戦車が完成するか未定です・・・。

最終的に完成しました!詳しくはこちらの記事をどうぞ!

今回も最後までありがとうございました。今後とも当ブログをよろしくお願いいたします!