NTTの音漏れしないオープンエアー型 パーソナルイヤースピーカー nwm MBE001 レビュー PSZ技術って何?

2023年7月10日

今回はちょっとおもしろそうだな、と思ってgreenfundingで購入したNTTの音漏れしないオープンイヤーイヤホン nwm MBE001 についてです。なんでNTT?って思いますよね。このイヤホンは開放型(オープンエアー)に分類されますが、PSZ技術という謎技術で周囲への音漏れが少ないとされています。実際使ってみても、意外と面白かったです。・・・高いけど(笑)
後半に紹介する有線の商品、MWE001は買いやすい値段なので技術を試すならこちらもありでは?

イヤホンがNTTから発売される不思議

ちょっと話題になっていたと思うんですが、このイヤホンはNTTグループが作ってます。音響部門としては2021年9月に設立されたNTTソノリティがnwm(ヌーム)というブランドでこのシリーズのイヤホンを発売しています。nwmのブランドサイトはこちらになります。

NTTソノリティの中核技術が次項で紹介するPSZ技術で、それを一番小さい形に落とし込んだのが今回のイヤホン、nwm MBE001ってことになります。音響機器メーカーでないNTTが耳をふさぐこともなく環境音となじませて音楽を聴くために作った感じだと思っていますが、ちょっと不思議な感じはしますよね。

PSZ技術の概要 わからないことが多い

ということで、何はともあれこのPSZ技術が何なのかが気になります。色々情報を検索してみるとPSZ技術は単一の技術ではなくて、開発者の言葉をお借りすれば「“音の世界”において究極のプライベート空間をつくるメディア処理技術」とされています。抽象的な気がしてこれで知財がどう確保されているのかは私にはちょっとわかりません。下の概要図もやはり抽象的な気がしますよね・・・。

※NTTソノリティの設立時ページ(https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/08/06/210806c.html)より転載

ちなみに今回のnwmシリーズですが、最初は有線タイプが同じくクラウドファンディングで発売され、今回の完全ワイヤレスは第2弾になります。もう終了していますがクラウドファンディングサイトへもリンクさせておきますね。

ということでこのワイヤレスイヤホン、耳をふさがないオープンエアーなのに音漏れを少なく「音を閉じ込める」というPSZ技術により、謳い文句も「パーソナルイヤースピーカー」になっています。興味惹かれませんか?ということで色々調べると、関連するページもいくつかあったのでリンクしておきます。良かったらこちらもどうぞ。

平たく言うと、単一スピーカーをオープンエアーにして直接音を耳で聞きつつ、周囲に対してはスピーカーの振動板の反対側の逆位相の層をイイ感じに放出して音漏れを防ぐ・・・集音マイクもなく、当然アクティブなキャンセルもない、滅茶苦茶シンプルかつ「そんなイイ感じにできるかいな?」とやや懐疑的になります。スピーカー作ったりしていると、開放型って難しいなぁ、と思うんですよね。。良かったら当ページの自作スピーカーキャビネット等の記事もご覧くださいね!

ただNTTが自信満々に結構なお値段でこれを売る以上、それなりに面白いに違いない!というのが私の購入動機になりました。

完全ワイヤレスイヤホン nwm MBE001 購入 外観等

ということで購入して、結構使い込んだのでついにこうしてブログになる訳ですが、現在はamazonなどで一般販売中です。興味がある方はのぞいてみてください。2万以上とお高いですが、リンク張らせていただきますのでよかったらご利用下さい。後述の有線方式なら8000円台とお手頃です。

結論が最初になってしまいますが、個人的にはニーズが合えばお勧めできるんじゃないかと思ってます。私の拙い文章で伝えられるかわかりませんが、音質を買うんじゃないんですよね、このイヤホン。そこに価値を感じるかが分かれ目かなと思います。

ではまず外見から。今売られている製品版と同じかどうかは分かりませんが、パッケージその他はかなりシンプルでセンスはいいけどお金はかかっていません。環境には優しそうですし、パッケージにお金かける意味はないので個人的には好きです。

マニュアルも最小限で現代仕様で日本的ではなく、アプリから基本的に色々設定を変えられるようになっています。ケースは肌触りがよいしっとりしたつや消しプラ。傷はつきやすいかもしれません。そしてこのケース・・・バッテリーがついてません。この手のイヤホンって大抵バッテリーがケースに搭載されているのですが、ないんですよね、このサイズなのに。その代わり、ケースは大きさのわりに軽いです。

ふたを開けるとソラマメみたいな耳掛け部分と、イヤホン本体が出てきます。ケース側は平面でイヤホンはマグネットでいい感じに収まります。つながっている部分は硬質で、形状も複雑な曲線です。おそらく平均的な耳介との位置関係を固定することで、PSZによる消音が最も効果的に作用するようになっているのだと思います。

本体の物理スイッチは下部の一つだけです。側面の2つのアクセントは上がLEDで、ケース側はシースルーになっていて収納して充電する際に判るようになっています。下側はマイクですね。内側は装着確認のための近接センサーがありますが総じてシンプルなつくりです。

イヤホンは分解してませんが、耳が触れる部分は柔らかいシリコン素材で、楕円の穴から主に音が出て、耳介に音が当たるようになっており、耳の穴の方向には向いていません。ハウジングは四角形で、前方2か所、後方1か所に穴が開いており、ここから逆位相の音が出てきて干渉するのだと思います。

スペック等詳細な情報はメーカー公式ページをご覧いただければわかりますが、概ね下記のとおりです。

  • 耳掛けタイプのオープンイヤー、片側9.5g
  • ドライバは12mのダイナミック型
  • BT5.2 SBC,AAC,aptX対応
  • 音楽再生6時間 ケースにバッテリー無し
  • 防水はIPX2相当(雨なら平気くらいです。穴だらけなので仕方ないかも)

アプリの機能、実際の使い心地、音質は?

さて、実際の使い勝手に移ります。ペアリングはアプリから行ったほうがいいです。スマホなどから直接Bluetooth5.2接続で普通にペアリングもできるのですが、なぜかアプリで上手く認識できなくなりました。少なくともアプリを開いて指示通りにペアリングすれば当方ではすべての機能が使用できました。

アプリでの設定項目は正直あまりないのですが、1ボタンでの操作は比較的豊富で、曲の送りや音量変更なども出来るようになっています。装着はケースから取り出すと電源が入るためボタン操作は不要です。前回ペアリングした機器が近くにあれば自動的に接続されます。そつなく作られている印象で使い勝手は良いです。ただ、イコライザーはカスタムがなくプリセットしか利用できません。アップデートに期待といったところですが、個人的にはこのイヤホンの性質上、そうカスタムしても仕方ないんじゃないかとも思います。

実際装着して利用していますが、総じて心地よいです。耳掛けタイプですが、安定性はあり落ちたりはしません。ただ本当にかけているだけなのでマスクを着けていると、脱着時に落ちるので注意が必要です。ちょっと試した限りでは脱着に注意すればメガネとの併用も出来そうです。おっさんの写真で申し訳ありませんが、装着時の写真も載せておきます。こんな感じで耳の穴からは完全に離れています。あくまで耳の近くから音楽が流れてくる感じですね。アクティブノイズキャンセリングのトランスパレンシー等とも全く異なります。また、カナル型が嫌いな方には特におすすめです。風切り音などもありません。

音質は、というと個人的には評価が難しいイヤホンだと思います。言葉で言えば典型的なかまぼこ型で、解像感もそう高くない、平凡な音かな、と思います。音圧が耳に届かないので低音が弱いのも仕方ないですし、減衰が大きい高音表現にも限界があります。これはまあ、イヤホンの仕組みを考えるとどうしようもないんじゃないかなと。

ただ完全ワイヤレス全体にも言えることですが、基本的に電気的な機構にお金を出している分、音質が犠牲になります。有線で2万出したらスゴイきれいな音のイヤホン買えますからね。世の中には電気的な部分だけ交換できるアイデア商品もあります。バッテリー切れたらドライバも捨てちゃうって、もったいないですよね・・・。良かったらこちらの記事もぜひ。

一方でこのイヤホンの付加価値、コレは確かに面白いです。周囲の音がよく聞こえますし、環境音と音楽が普通に混在していて非常に自然に聞こえます。音量にもよりますが、疲れることはないと思います。いつまでも聞いていられる感じ。「パーソナルイヤースピーカー」は非常に適した表現ですね。イヤホンではなく、イヤースピーカー。場所を問わず利用できるニアフィールドスピーカーとしてかなり幅広く楽しめると思います。総じて迫力は出ないのでやはりさらっと聞き流す用途に向いていると思います。当然音楽をかけたまま買い物したり話しかけられてもなんの問題ありません。

では、肝心のPSZ技術、周囲への音漏れは・・・?これはなかなか素晴らしくて、音漏れは確かに少ないです。通常の生活シーンであれば音漏れを気にする必要はないのではないでしょうか。環境音が大きければ音楽のボリュームを上げると思いますが、その場合は環境音でマスクされますし、静かな場所で至近距離であれば音漏れが判りますが、実用で問題になるとは思えません。静かな夜の自宅で妻に音漏れチェックもしてもらいましたが、近くで聴いても「ああ、鳴ってるね」くらいです。コンセプトはしっかり活かせていると感じました。

欠点は?

欠点もそれなりにあります。今までに既に出していますが私が考える欠点は

  • ケースにバッテリーが内蔵されていない
  • その割には連続再生時間が短い
  • 防水機能が貧弱
  • イコライザーにカスタムプリセットがない
  • 結果として割高感がある

といったところでしょうか。NTTが企画、販売していることもあって中国企業と比較して割高感があるのは仕方がないところですが、AnkerのSoundcore最上位機種が1.3万というところを考えるとやはり高い。また、電気的な機構は多くないようなので?連続再生時間は頑張ってほしいところだったかな。ケースにバッテリーが必要かは、モバイルバッテリーを持ち歩いている場合無駄な重量になりますので賛否あるところかなとおもいますが・・・。アプリ面は今後変更がある可能性もありますし、今後この技術を上手く活かして次につなげていけるかどうか、これがnwmの試練かなと私は思います。

ここまで費用は出せないけど体験はしてみたいよね、という場合には右の有線仕様、MWE001も良いんじゃないかと思います。リズムゲーム等の用途にも使えますし、値段も8000円台、無線機能と引き換えではありますが多くの欠点が解消されます(笑)。良かったらこちらも見てみて下さい。PSZ部分は全く共通ですし、未確認ですがおそらく音質の傾向も同様と思います。

マルチポイントに対応しました

現時点ではマルチペアリングのみ対応でマルチポイント(例えばPCとスマホの同時接続)には非対応な当機種ですが、メーカー側が含みを持たせている現状です。もしかしたらそのうち追加されるかもしれません。ファームウエアバージョンアップはアプリから行えるので今後に期待したいところです。追加機能などがあればこのページに更新情報は追加させていただきますね。

対応しました!これで2台同時接続できます!

野外で活躍、旅のお供にぜひ 騒音時は別のイヤホンがお勧め

実際に利用するシーンですが、一番に思うのは自転車、旅行、アウトドアなどの用途だと思います。環境音、周りの話声等、ほかの音も聞きつつ、ちょっとBGM代わりに自分の好きな曲を流す。そんな使い方が理想的ですね。遮音して、周囲の環境から切り取って自分の音楽を聴くカナル型やANC搭載イヤホンとは対極にあるイヤホンです。逆に言えば、電車やバス等周囲がとてもうるさい環境ではこのイヤホンの良さは発揮されません。まあ、音量上げれば音楽は聴けますが、そういうシーンはむしろカナル型やANCにお任せしたいところです。

そう、私の今のメイン用途ですが、自転車利用には安全を考えると本当に良いと思います。遮音すると車の音が聞こえなくて危ないですからね・・・。このイヤホンであれば気持ちよく音楽を聴きながら安全に自転車に乗れます。それだけでも私にとっては価値あるイヤホンです。Earin A-3もカナル型ではないのですが、コレには適わないですね。

いかがでしたでしょうか?NTTのPSZ技術、ちょっと調べてみましたが色々興味深かったです。課題はあるもののとても面白い商品だと感じました。皆さんの参考になれば幸いです。それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!