カテゴリー

最新記事

FreeCAD 入門 実践編 スライドロック壁掛けとヘアアイロン置き 複数のワークベンチを渡ろう

2025年5月30日

Fusionをお使いの方向けにFreeCAD入門を複数回紹介してきましたが、基本的なところは紹介できたと思いますので今回から枕詞であった「Fusion」をなしにしました。とはいえ、私の根本的な考え方にはFusionが常にあります。FreeCADでFusionのすべてが賄えるとは全く思っていませんが、Fusionが急に使えなくなってもFreeCADがあれば大丈夫!というところを目指して頑張っていきましょう!

今までのFreeCADブログもぜひ

この記事は当ブログで過去複数回取り上げさせてもらったFreeCAD Ver1.0を使って色々作る記事になります。個人利用趣味範囲で使用するCADとして鉄板のFusionを利用している方がFreeCADを触りやすくなるような記事(?)が複数ありますので、そちらもぜひ参照ください。記事一覧は検索でFreeCADと打てば出てきますが、記念すべき初回がこちらになります。

なお、現在正規版はVer1.0ですが、評価版としてより便利な1.1devも出ており、私は現在そちらを使っています。今までの8回のブログでおおよその扱い方は伝わっていると思いますので、今回製作部分は端折っています。これからご覧になる方は内容過多ではありますが是非基礎部分をご一読いただきたいです!

今回作成したもの

作製したのは今年大学生になった娘の、ヘアアイロンを壁に固定するための壁掛け用スタンドです。

当ブログに来られる方でヘアアイロン使われる方は少数派かもと思いますが、ヘアアイロンは意外と場所をとるうえ、使用直後は髪を巻くアイロン部分は当然熱くて触れません。なのですぐ収納できませんし、冷めてから・・・とか思っていると登校時間が来てしまい結局洗面所に放置されることになります。

ネットを見ていたのですが壁にかけるようなスタンドはあまりなく、自分で作ることにしました。

一体で作ろうとすると壁掛け部分の固定ができないと考え、今回は汎用性を高くできそうな3Dプリント製スライドロックを一緒に作ることにしました。

Part designワークベンチでスライドロックの大元を作成

スライドロックっぽいものは色々あると思いますが、今回作りたいのは上記コンセプトにあったものなので前提として壁に固定できるもので、薄型のスライドロックです。こういう一般的な押し出し形状のものは今までの当ブログ記事を読んでいただいている方はもう手慣れたものではないでしょうか?十分Fusionの代わりになってくれる状態ですよね!

作った形状はこちらになります。上側がベッド側でサポートは不要の形状にしています。上側から凹面にスライドしてロックする仕組みです。形状はあらかじめ思い浮かべておいてモデリングはしたほうがいいので、雑でよいので図にしておくのも良いと思います。今回はこのロック部分から作りました。スケッチを描いて押し出していきます。Ver1になって、自由度が上がり本当に作りやすくなりました。閉じた図形が複数あっても好きな部位で押し出せるのは嬉しいですね・・・。Fusionだと当たり前ですが。

モデリング時は汎用性を高めたいので後から色々調整出来やすい形にしました。スライドの長さ等含め寸法を変更するとあとの部分も操作が反映されます。CADはこれが便利なところで、ここもVer1.0で実用的になった部分です。これが最適などとは到底言えませんが、それなりに実用的ではないかと思います。穴はダイソーの細い釘3本でねじの代わりになるというプッシュピンが使える穴をあけておきます。印刷の都合上穴は6角形。なお、作った後気づきましたが、このベースプレートはもうちょっと厚くても良い気がしました。割れそうなんですよね・・・。

スライドロック対側の作成

対側も同様に作ります。新規にボディは作りますが、寸法など利用する箇所もあるので、先ほどできたボディをサブシェイプバインダーで取り込んでおきます。下図はいずれもサブシェイプバインダー(黄色)を表示した状態です。

サブシェイプバインダーを目印にクリアランスを付けたスケッチを引いて押し出し、ブーリアンでくりぬいて、遊びとなる部分は追加でくりぬきます。また、固定のねじが干渉する部分はスライド全長でくりぬいておく必要があります。入れやすいように角は削っておきました。ミラーすれば形は完成です!

出来上がったロック機構

動作については実際を見てもらうのが一番だと思うので、右のツイート(ポスト)をどうぞ。

各部の寸法や、爪部分、スライドさせる側のクリアランス等を必要に応じて微調整すればお好みの硬さにできると思います。この辺りはプリンターの差も出てきますし塩梅の良いところを探すことになりますが、こういうのは自由度の高さが大事なのかな、と思っています。

一番壊れやすいロック機構には縦横方向とも必要以上の力はかからないようにしたつもりで、実際今のところ大きな問題なく使えています。

より幅を広く大きくしてネジの固定を4か所に増やす、などもできると思います。

Curvesワークベンチでヘアアイロン収納部の自由曲面を作成

では、ヘアアイロンの収納部分です。色々な作成方法があると思いますが、今回は元となる形状を作ってそれに合わせてボディを作ってみました。まずヘアアイロン部分が収納できる寸法の円柱を作ります。落ちないように直径を変えて2つのスケッチを描いてz方向にオフセット、ロフトで円柱にします。(図はすでにボディを回転させてしまっています。)イメージしやすいよう厚みを付けています。これだと底面はふさがっていますが今回は形状を直接利用するわけではないので問題ありません。

この形状だと何ともかっこ悪いのでこれを素体としてCurvesワークベンチで自由曲面を作ります。Part designワークベンチで作ったソリッドからそのままCurvesワークベンチで曲線を引くとエラーではありませんがアラートが出ますので、私はこの方式で利用するときにはPartワークベンチでコピーのソリッドを作成することにしています。個人的にはPart designワークベンチは元のFreeCADから拡張されたワークベンチだと考えており、他のワークベンチで利用する場合はこのような手法にしたほうが問題が起きにくいです。ただ、Partワークベンチで形状をコピーするとその時点でパラメトリックではなくなって(コピーした時点でPart designワークベンチの履歴がなくなり、形状の寸法が変えられない状態になる)しまうので、必要性によって使い分けてください。

ということでおなじみのCurvesワークベンチで素体とロック側に直線を引いて、その線の間をFreeHand BSplineでいい感じにつなぎ、4本の線でGordon surfaceを作りました。Curvesワークベンチでは寸法などの操作が行えないため、このように別に素体を用意したり、あらかじめスケッチを描いておくことでその寸法からカーブを作ることができます。Curvesワークベンチ実践編については当ブログの別記事もぜひどうぞ!

ワークベンチを渡り歩いて完成!

まずはできた自由曲面を厚みをつけてソリッド化します。こういう単純なサーフェスの場合はPartワークベンチで3Dオフセットを行うことで自由な厚みでオフセットが可能です。オフセット時は「オフセットを埋める」オプションを使えば自動的にソリッドになります。ミラーリングして反対側も作りましょう。ただ、この時点だと両側がうまくスライドパーツと接続されていません(3枚目)。単純にオフセットしているだけなので当たり前といえば当たり前です。そこで登場するのがまたもCurvesワークベンチの「Blend solid」です。

Blend solidは2つのソリッドの面を滑らかにつなぐCurvesワークベンチの機能で非常に重宝する機能です。エッジの数が同じであるという制限はありますが、これを使うことで接続部がきれいに収まるわけですね。素晴らしいぞ、Curvesワークベンチ!!最後に全体をPartワークベンチのブーリアンで結合して完成です。辺縁はいんさつしやすさよりも滑らかさ重視で少しフィレットもかけています。

ただ、この時もそうだったのですが時々Blend solidがソリッドになっていないことがあります。(データタブでシェイプがソリッドではなく、シェイプになっている。)どういう時にソリッドになって、どういう時にシェイプになるのかその法則性は私にはわかりません。その場合はPartワークベンチのメニューから「ソリッドに変換」を行うことでちゃんとソリッドにできると思います。

印刷しつつ微調整を行い完成!

ある程度は実際にはめ込んでみなくてはわからないので、形ができたら試作して、ヘアアイロンの出し入れのしやすさ等を調整をしていくことになります。あたりをつけてあるので大外れはしませんが、使い勝手をよくするためにはこの作業は欠かせません。今回は3Dスキャナも使用していませんので微調整は手動です。ただヘアアイロン部分の構造はすべてパラメトリックなので、例えばカーブを微調整してGordonサーフェスの形状が変わっても全く問題はありません。この試作には以前紹介したPolymakerのPanchroma regular(CoPE)の余りを使っています。お値段控えめの新顔フィラメントです。良かったらブログもご覧ください!良質で安いのでPLAと特性は異なりますがお勧めです。

なお今回の印刷方向は下の写真2枚目です。最小限のサポートにして出力しています。実際は2-3回の微調整を行い隙間部分の幅の調整などを行っています。我が家での最終的な設置にはみんな大好きダイソーの「ネジの代わりになるプッシュピン」を使って壁に固定

なお、裏に壁がない石膏ボードに止めたはずですが、意外とネジは入らなくてハンマーが必要でした。ウォールマウントを取り付けたところが1枚目です。しっかり取り付けられたら本体を固定し実際のヘアアイロンを置きました。使いやすさは娘ちゃんに評価していただき無事合格を頂いております!!

見た目もスタイリッシュ?でなかなか良いのではないかと思いますし、嫁様の評価も上々です。ヨカッタ!こういう「欲しいものを自分でデザインして作れる」というのは本当にPCと3Dプリンターのおかげで、本当に素晴らしいですよね・・・!!

このFreeCADブログも第9回!ということで出来上がるまでのFreeCAD全体のワークフロー、いかがでしたでしょうか?最近ようやく私もある程度使えるようになってきたかなぁ、Fusionが急に有料になってしまったとしても色々作れるようになったかなぁとは思えるようになってきました。なってもらっては困りますが(笑)これからも色々作って遊ぼうと思います!

それでは今回も最後までお読みいただきありがとうございました!