純正の一歩先へ AD5XにZMODを導入 KlipperのwebUIを使えるようにしてみよう
はじめに
今回はしばらく前に書いたAD5Xのブログの続編、というか亜型になります。元々お世話になっているAPPLETREEさんから提供いただいた機材ではありますが、我が家でその後も順調に稼働中です。実際本当にコスパモンスターでよい機材だと思います。賑やかで静けさには欠けますが、4フィラメントが扱えるCoreXY機で5.5万ですからね。大きなトラブルもありませんし、有線LANもついています。前回のブログもぜひ!
我が家ではこのようにダイソーエンクロージャーも作成してABSなんかも印刷できています。ただ、実際多色印刷は初期のころ以外ほとんど試しておらず、IFSはフィラメント切れのバックアップやよく使うフィラメントをさしっぱなしにしておくなどセレクター的な役割に利用している感じです。なにせ多色はシングルノズルですと無駄が非常に多くて時間がかかるのと、我が家にはSnapmaker U1がありますから・・・。
つるし(買ってそのまま)で使う時代、あえていろいろやってみよう
さて、Bambu Labが3Dプリンター市場を席巻して久しい昨今、プリンターも基本的に買ってそのまま、いわゆる「つるし」で使えるようになりました。私はもともと、Snapmaker 2を最初に買ったため使うことに苦労していませんが、賛否はあれどそれを低価格で実現し、扱いやすくしたBambuの功績は大きいと思います。
一方でXなどを見ていると印刷や品質のトラブル、不具合時のマネジメント等で躓かれているケースも目にします。サポート側で色々フォローしてもらえれば問題ないとも思いますが、自分で色々弄ったり、変更したり、時には便利に改造する、そんな3Dプリンターの使い方も楽しみ方もあります。・・・え、ないですか?
プリンターそのものを好きになっちゃうやつですね。Bambuは非常に優れたエコシステムを持っていますが、一方で閉鎖的でもあります。当ブログであればDIYする3Dプリンター、VORONについての記事もたくさんありますので是非どうぞ。プリンターの仕組みを知ることでトラブルへの柔軟な対処もできるかも?
このCoreXYの仕組みのブログとか、ぜひ一度ご覧いただければうれしいです。
[itemlink post_id="8903″]
ZMODについて すべて自己責任でお願いします
ZMODは、ghzserg Sergei さんという方がGitHubで公開しているFlashforge AD5M / AD5M Pro / AD5X向けのファームウェア用のMODです(https://github.com/ghzserg/zmod)。
これはBambuにも言えることなのですが、最近のプリンターは基本的に内部ではほぼKlipperが動いています。しかし純正の状態では、ウェブインターフェース(FluiddやMainsail)には一切アクセスできないようになっています。私が良く使っているSnapmaker U1はファームウエアも含めオープン化されています(ほかにはQIDI、SOVOLあたり)が、BambuやFlashforgeは基本的にクローズドになっているんですよね。ライセンス的にどうなのかは私はよくわかっていませんが。
というわけで、このZMODはそこを突破してくれるファームウエア改変ソフトウエアです。当然、すべて自己責任です。プリンターのプログラムを強引に?書き換えるソフトですので、脅すわけではありませんがプリンターが使用不可能になるリスクがあります。元が完全なオープンソースのプリンターではないですので、直せない可能性もあります。機材提供いただいたAPPLETREEさんももちろんOKとは言ってくれないですので、自分の責任で遊んで下さいね!
個人的には手順を守って行えば比較的とっつきやすいとは思っており、その理由は基本的に完全な置き換えではなく、隠されているKlipper部分を一部開放してくれるファームウエアだからです。上のリンクでも説明されていますが純正ファームウェアを置き換えるのではなく、共存する形で機能拡張されている点です。
基本的に純正のタッチスクリーンUIはそのまま使い続けられますし、試していませんが完全にアンインストールしてなかったことにすることも可能です。
3Dプリンターをよりよく知り使いこなすためのツールとして、純正と共存しながら使えるZMODはあまりプリンターに詳しくない方の次のステップとして最適ではないかと思います。
ZMODでこんなことが可能に!
まずはできることから行きましょう。というか、私がこのZMODを入れた理由の大きな一つがマニュアルのベッドレベリングです。最近の機種はメッシュレベリングといって、ベッドの傾きをz方向に動かすことで補正しているのですが、ベッドが傾いているとずっと補正し続けることになりますしヘッドの移動の最中にぶつかってしまう等のリスクがあります。いくら補正されるといっても、最初から平面に近い形であることに間違いはありません。我が家のAD5Xはちょっと斜めになっていて気になっていたんですよね・・・。詳細は省きますが、もちろん便利なマクロもデフォルトでたくさん入っています。
ZMODを利用すると、ノズルを使用した手動のベッド補正が可能になります。具体的にはベッドの裏側のナットを回して高さを変えることができます。これは純正状態では存在しない機能ですし、ハードウエア面での調整なので、例えばZMODの使用を中止した場合でも残ります。
そうそう、この機能を使った後は忘れずにヒーターを切っておきましょう。自動で切れないよ!と公式ページに警告がありました。また、レベリングをスクリーンからやり直しておきましょう!!
この機能を使うだけでもZMODを一回導入してみる価値は十分あります。ちなみに公式のウィキはこちらです。出来ることも色々書いてありますので是非。
また、関連する機能としてアダプティブメッシュレベリングがあります。これはKlipperの拡張ツールであるKAMP(Klipper Adaptive Meshing & Purging)を利用するものになります。こちらも純正では使用不可能な機能ですが、これは印刷時のベッドレベリングを印刷部分周辺でのみ行う機能です。これにより印刷時間の短縮が行えるほか、印刷時のパージも印刷物の付近で行うことにより、垂れやすいフィラメントでの最初の糸引きなどを抑制することが出来ます。
実際行ってみると、最初のパージはノズルをベッドからしっかり離して吐出量を増やして行っており、私の好きなパージ方式でした。レベリングを一部で行うため時間の短縮にもなりますし非常に気に入っています。
他に大きな性能面の変化は衝突検知です。造形物が反ったり剥がれたりしてノズルと衝突すると、ひずみゲージの値を基に衝突を検知して、プリンターが一時停止します。あまり失敗するようなものを作っていないのですが、誤検知などは今のところありません。この機能は有効になっていることに気づかず、一度反ってしまった印刷で印刷が自動停止していて機能に気づきました。
そうそう、Klipperのインターフェースが有効になるので、アプリ等を使用せず直接プリンターをwebブラウザで見られるようになります。また、ZMODを経由して完全にローカルでG-codeを簡単に転送することも出来ます。Klipperの画面では印刷するオブジェクトを指定して、web上からオブジェクトの除外などの操作も行えます。
なお、大きな注意点としてFlashforgeのサーバー(アプリ等含む)とZMODのKlipperを同時に利用できないことが挙げられます。外出先からプリンターを見たい場合にはZMODは向かないですね。テレグラムを利用したカメラ画像の転送や通知もできるようなので、テレグラム使ってらっしゃる方は試されると良いかもしれません。
また、Aliexpressなどで追加でカメラを購入した場合はブラウザ上でカメラを有効にすることでアプリ経由よりずっとくっきりしたフレームレートも良いカメラ画像を見ることが出来ます。LAN内限定にはなりますが、個人的には歓迎点ですね。下に動画を置いていますが、これが我が家ないから見られる映像です。元々は毎秒1フレームくらいだったのですが、これだと5フレームくらい出ています。画像も鮮明で、明かりがあれば十分に様子の確認ができます。
なお、プリンターに送るG-codeは、整合性チェックを行なうよう指示されます。PCとOrcaSlicer側で設定が必要ですが、この設定尾を行うことでファイル転送時にMD5チェックサムを検証し、g-codeの転送ミスを防ぎます。これはZMODを入れることでシステムが不安定になる可能性を事前に潰すためのものだと思います。これはOrca側ではこんな感じになっています。
ポストプロセスとして、当方ではZMOD用のMD5を作るプログラムをDドライブに入れており、それを一緒に転送する形になっています。こうしたこともあり、プリントプロファイルはZMOD用に通常利用版とは分けてプロファイルを作っておいたほうがいいと思います。
また、印刷時のスプール選択もweb上で基本的に解決することになります。印刷時はスプール選択画面が出てきて、色とセットで材料を選ぶ方式になります。また、AD5Xの純正ファームウエアでは元々かなりフィラメント交換時のパージ量が多いのですが、このファームウエアでは改善されます。ただ、色の選択が今はバグ?があり本体でないと変更できなくなってしまっています。早く治るといいなぁ。でも実際スプールの色変えるときってプリンターの横にいるので、本体タッチパネルで色変えできればよい気もします。
どうでしょうか?個人的にはAD5Xだとかなーり便利になるんですよね。ZMODのページには純正で満足している場合は使わないでね!という警告が出ますが、ガジェット好きやプリンター好き、すでに色々遊んでいる方ならZMOD化する価値は十分にあると思います。せっかくのコスパモンスター、更に強力にしてみませんか・・・!?
インストールについて
ZMODのインストールについては公式を見ていただければお分かりいただけると思いますが、基本的な流れは下記の通りになります。まず必要なのは空っぽのUSBメモリです。基本的に電源投入時にファームウエアが入ったUSBメモリが刺さると、AD5Xはそのファームをインストールします。サブフォルダなどは作らないようにしてください。
ということで私はまずUSBメモリに純正の対応ファームをZMOD公式から持ってきて焼き直しました。完全に初期化して初期動作が終わったら一度電源を切ります。用は購入直後の状態に戻す、という作業ですね。
USBメモリの中身を空にした後に同じく公式からダウンロードした AD5X-zmod-*.tgz を保存します。プリンターがOFFの状態でそのUSBを入れて起動すると、自動的にZMODのインストールが始まります。終わるまで放置で大丈夫です。終わると表示が出るので本体の電源を切って再起動します。その後はwebUIにアクセスできます。
ブラウザで http://[プリンターのIPアドレス]/ にアクセスするとFluiddのUIが開きます。これでZMODが正常に動いています。ちなみに純正のファームウエアをアップグレードするとZMODは無効化されるみたいです。その場合はUSBメモリにZMOD公式の ENABLE-zmod.tgz を入れて電源を入れなおすと再有効化できるとのことでした。(まだ試していないです)
webUIはFluiddです。zmod関連のアップデートはFluidd上で行うことができます。必要があればアップデート後に再起動を行います。
注意点・デメリット
先にも挙げておきましたが改めて注意点もあります。メーカー外の改造ですので故障のリスクや、修理が不可能になる可能性等のリスクが当然あります。すべて自己責任となりますのでご了承ください。
まず注意点として、このZMODを有効にしてKlipperのwebUIを使用している間はFlashforge純正のアプリ等は使用できません。(ローカルモードで動作するため、Flashforgeのサーバーとは接続できません)
これは将来的な検閲のリスクなどにも対応できる良い面もありますが、プリンターをアプリ等で外出先から容易には管理できなくなることを意味します。自宅サーバーやリモートデスクトップ等の環境を別途用意する必要があります。とはいえ、ローカルで使用している分には動作もきびきびしますし、他のプリンターに対応方法を寄せられるのでメリットもあります。
したがってネットワークサービスも制限されます。プリント終了の通知やカメラ画像の転送といった機能は基本的に使えません。Telegramを通じて行う方法もあるようですが、私は試していません。
「自分でいじる楽しさ」の一歩としておすすめ
というわけで、注意点等はあるものの、ZMODを導入したAD5XはVORON等DIYプリンターへの足掛かりとしても非常に面白いと思います。純正ファームと共存している都合上、厳密にいえばFlashforgeの下にいるわけですが、それでもKlipperのwebUIを通じて色々な経験ができます。ハード的な変更はなしでちょっと「自分でいじって便利にする」という窓口として、AD5X + ZMODは向いていると思いました。せっかくのコスパモンスター、思う存分楽しみませんか?ちょっと冒険する2台目プリンターとしても優秀だと思いますよ。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません