REVOPOINT POP3 Plus レビュー 上位機の実力は?INSPIREとも比較してみよう

2024年8月26日

当ブログでは3機種目となるREVOPOINTの3Dスキャナレビュー。今回は新発売となったPOP3 Plusのレビューをさせていただくことになりました。RANGE、INSPIREと同様、メーカータイアップのブログ記事になります。3Dスキャナはそれなりに高価な機材ですので、いつもと同様忖度なくお伝えできればと思います。今回は1記事で前後編に分けないので長い!ですが、情報量は多いと思いますのでよろしくお願いします。

はじめに

今回のブログ記事はある程度過去記事内容を前提に書いております。大まかなこのシリーズの特徴はお話ししていますので、今回はどの程度INSPIREと違うのか、をメインにしました。初めて当ブログでスキャナレビューをご覧になる方は、出来れば過去記事も参考にしていただけると嬉しいです。ということでINSPIREのレビュー記事はこちらです。出来る事できない事、向き不向き等も分かりやすいかなと思います。

基本的な構造やスキャン方式はINSPIREと同様ですので、室内用で光沢や黒はスプレーとかが必要だと考えていただければと思います。スキャナとプリンターがあればコピーできると思ったら大間違いなんですよ(笑)

なお、INSPIREと同様、今回も機材はREVOPOINTさんから提供いただいています。前回と同様に、実際にある程度商品を使い倒して、良い点のみならず改善点や課題も含めて正直にレビューすることを条件にさせていただいています。前記事も合わせてお読みいただければ大体の性能のイメージが共有できるのではないかと思いますのでよろしくお願いいたします。

POP3 Plusのスペック 特徴について

私自身はPOPシリーズは今まで使用したことはなく、毛並みが違うRANGEが最初で、前回がINSPIREでした。当ブログではあまりメーカーページ見れば分かる内容は記載しないのですが、今回はINSPIREとの差も分かりやすいかなと思うのでPOP3 Plusのスペックを挙げておきます。

製品名POP3 Plus
スキャン方式双眼デュアルカメラ 赤外線方式
シングルフレーム最大精度0.04mm 2x光学ズーム付 (INSPIREは0.2mm ズームなし)
1フレーム撮影範囲61 x 68 mm (距離 150 mm)から244 x180 mm(距離 400 mm)
(INSPIREは162 × 111 mm (距離250 mm)から308 × 225 mm (距離500 mm))
ワーキングディスタンス150-400mm(INSPIREは250 – 500mm)
最小スキャンボリューム20 x 20 x 20 mm (INSPIREは50 x 50 x 50mm)
最大スキャンボリューム2000 x 2000 x 2000mm (INSPIREも同様)
スキャン最大速度18フレーム (INSPIREも同様)
カラースキャン可能(INSPIREも同様)
ジャイロ9軸IMU搭載(INSPIREも同様)
寸法153 x 45 x 29 mm (INSPIREは132 x 45 x 27mm)
重量約190g (INSPIREは約140g)
必要システムWindows10/11, Android, iOS, Mac
出力フォーマットPLY, OBJ, STL, ASC, 3MF, GLTF, FBX
公式ページから一部改変し記載

全体的にINSPIREと比較して精度が倍増している一方、若干ですがワーキングディスタンスが変更され、より近くから計測するのに適したものになっています。INSPIREのほうが最大では若干広めにスキャンが出来ることになりますね。POP3 Plusではその分寄れるようになっていてより細かいものに最適化されている印象です。

なお、名前通りこのPOP3 PlusはPOP3のマイナーチェンジ版という位置づけになります。検索した範囲ではPOP3からの変更点としては以下の点があります。

  • 精度(0.05→0.04)、正確性(0.1→0.08)の向上
  • 新機能として2倍光学ズーム機能による精度の向上
  • グローバルマーカートラッキング機能の追加

ハードウエア的な変更はズーム機能なのかな?マーカートラッキング機能は他の機種でも対応できそうな印象があります。amazonリンクも貼っておきますが、本家ではセールをやっている場合も多いので下記本家HPを先に参照した方がいいと思います。

実機はこんな感じ バッグがカッコいい

個人的にINSPIREと比較して圧倒的にカッコいいと思うのがこの収納ケースです。INSPIREとの扱いをある意味一番感じます。付属品も全部入るし持ち運びにしろ運用にしろ非常にやりやすいです。容量も十分。

ただ・・・このかばん、このサンプル彫像要らないですよね。持ち運ぶ意味もないですし。ここにはホルダー等を入れようと思います。背面側にはキャリブレーションボードを含めたすべての付属品が入っています。せっかくなのでINSPIREとも並べてみました。3脚の形が違ったり、サイズ感はちょっとPOP3 Plusのほうが大きい等差異があります。露出調整が背面でできるのはPOP3シリーズならでは。

キャリブレーションボードに気合を感じる

個人的に気合を感じたのはなんと、キャリブレーションボードです。INSPIREと明らかに違います。ちゃんとコストがかかっているのが素晴らしいです。MIRACOもこれとのこと。

また、今回のPOP3からの変化点、精度と正確度の向上はこのキャリブレーションボードの影響も大きいとのことです。POP3 Plusのサポートページにも下記記載がありました。

 新しいキャリブレーションプレートにより、スキャナーのキャリブレーションの精度と正確度が20%向上

上記サポートページ「POP 3 PlusとPOP 3の違いは何ですか?」より抜粋

少なくともPOP3はINSPIREと同様のキャリブレーションボードだったみたいです。キャリブレーションボードで精度が向上するのならPOP3との違いが光学ズーム部分のみの差になる?対応可能ならお願いしたいところですね。

INSPIREとの違いはどの程度? 光学ズームの利用シーンは限られる

スキャン精度で比較したいのでスキャン難易度や精度がわかりやすいモデルで検証です。検証に使ったのはプラモデル!最近ようやくヨドバシから購入したマクロスのVF-19 HGで試します。小さな突起や穴、モールド等かなり厳しいことが予想されますので丁度いいかなと。なお、今回は検証のために行っていますが、個人的にこうした著作物をスキャンするのは推奨しません。誤解を招きますし。

ただ自分の持ち物を個人の範囲でスキャンしたり自分のスキルの糧とするのは全く問題ないと考えています。ではまずパーツ一枚のスキャンから。こんな感じでiPadを使ってスキャンしPCに無線で転送しました。iPadでもメッシュに出来ますが、PCでやったほうがキレイです。

スキャン範囲がちょっと変わってしまいましたが、いくつかのパーツを見てみると、解像度の違いがわかります。INSPIREも十分きれいですが、比較するとディティールが丸いです。なおシングルスキャンの範囲がやや異なるのですが、スキャンで意識することは無かったです。本当はINSPIREのほうがやや広いはず。

もう少し拡大してみるとこんな感じ。ただ、コレは後処理をしていないので、例えばもっと滑らかにしようとするとディティールの損失が発生して差が縮まる可能性はあります。以前レビューした通り、入門機としてINSPIREも優秀ではないかと思いますね。では、2倍ズーム行ってみましょう。

左からINSPIRE、POP3 Plus、2倍モードになります。いずれもターンテーブルで使っています。甘かった輪郭が精彩になっていくのがわかると思います。INSPIREでちょっとかけてるのはご愛敬。2倍モードではモールドもかなりはっきりしました。看板に偽りなしですね。・・・ただ問題が一つ。2倍になった分、スキャン範囲も狭くなっちゃうんですよ・・・。個人的には本当に小さいもの以外ではちょっと扱いにくいと思いました。マーカースキャンでも、そもそもマーカーが視野に入らないといったことが生じます。取り扱いが難しい。

ということで2倍モードは小さいものでテーブルスキャンで行うのが個人的な推奨です。こんな感じのパーツ一つであればご覧の通りかなり高精度なスキャンが出来ます。上手く条件に合うモノに使っていく感じかなと思います。

ハンドスキャンでうちの子の手形作成 思い出はプライスレス

さて、ではハンドスキャンに行ってみましょう。今回はハンドスキャンでハンドをカラースキャンしてみました(笑)6歳のうちの子の手です。スキャンの仕方としては本人に手を掲げてもらい、その周囲を私が回る方式です。つい先日、キャンペーンで頂いたREVOPOINT純正のモバイルバッテリーを取り付けてスキャンしました。これ、下の形状で行うとかなり安定してスキャンできます。個人的には小さい3脚はぐらつきの原因だと思うので基本両手持ちなのですが、コレは結構スキャンしやすいです。マーカーも置かないハンドスキャンですが、結果は思っていたよりもかなり良好だと思います。

いかがでしょうか?手のスキャンって結構難しいんですよね。今回も一部指が乱れました。これは表と裏を合わせる際の誤差が原因なことが多いです。ただ、スキャナのせいだけではなく、6歳の子が完全に指を静止できていない可能性もあります。なお、スキャン結果にREVO SCAN以外の後処理は加えていません。

個人的にはコレがちゃんとできればハンドスキャンは概ね慣れたと言えるのではないかと思います。また、意外とスキャン時の接続機器も大事です。非力なデバイスでのスキャンだと遅延が生じたりして上手くスキャンできない可能性があります。iOSのほうが全体にパワフルなチップなので安心かも。ちなみにこれはPCと無線接続して行っています。

3Dプリントするとこんな感じ。前述した通り指に荒はありますが、どこからどう見ても?うちの子の手です。嫁様には気味悪がられました。夜間その辺に置いておくのは止めてくれと・・・。これは大きいのでAnkermake M5を使いました。フィラメントはちょっと前にご紹介したRAPIDUSです。もしよかったらこちらもどうぞ。フィラメントがポキポキ折れますが、固さがありツリーサポートでも折れたりしないので扱いやすいフィラメントだと思います。

元々我が家では子供の手形を家庭用複合機でスキャンしたりしていたのですが、今回行ったのはこの3Dバージョンです。6歳くらいじゃないとおそらくピタッと止まってくれないので3Dスキャンは難しいと思います。

手を置いてとるならできると思うんですが、それだと手のひらが映らないんですよね・・・逆にするのも微妙だし。

なので子供が小さいときは右のTweetにあるような複合機を利用した2Dスキャン、ある程度大きくなったら子供と遊び感覚で3Dスキャンするのが良いんじゃないでしょうか(笑)

全身とるなら以前レビューさせていただいたRANGEシリーズが良いと思います。

グローバルマーカースキャンについて かなり有用なシーンも

次にもう一つの新機能、グローバルマーカースキャンについてです。これはあらかじめマーカーだけをスキャンしておき、それを基準にしながら点群スキャンを行うことで位置ずれを防ぎ、精度が向上する、という仕組みです。

当然スキャン時にマーカーが見えてないと位置合わせが出来ないので、スキャンする対象に直接貼り付けるか、床などにマーカーマットを置いてそれが見えるようにスキャンをする必要があります。精細なものの他、有効なのは薄いオブジェクトではないかと思います。位置がちょっとずれると厚みがなくなってしまったりするのですが精度が高まることでコレを防ぐことが出来るわけです。

また、ハンドスキャン時にスキャンを一時停止して別方向からスキャンする際にも非常に有効です。トラッキングがしっかり行えることで精度の高いスキャンが可能となります。今回はうちにある「カードキャプターさくら」のマスコット的キャラクター、ケロちゃんをハンドスキャンしてみました。このケロちゃんには羽根があります。これがちゃんとスキャンできるのがグローバルマーカースキャンの良さ、ということですね。

スキャン結果です。何回か一時停止して欠損部をそれなりに補うようにスキャンしたのですが、羽部分がずれず、非常にいい状態でスキャンされているのがわかります。なかなかのクオリティ。なお、撮り直しも一切なし、一発スキャンです。顔の表情もわかります。

そうそう、このモデルに限ったことではありませんが、基本的に3Dスキャンのデータはでかいです。頂点やポリゴン数がものすごく多いので、エクスポート前にはリダクション処理を行ったほうがいいです。

印刷するとこんな感じに。こちらはちょうどぴったりVORONで印刷できました。フィラメントは前述のRAPIDUSで同様です。縮小せず100%スケールで印刷しているのにディティールがしっかりあるのはすごい。ご覧いただける通り、形状をかなり忠実に拾ってますよね・・・!

実はこれも時間短縮のためPOP3 Plus使いました

POP3 Plusを活かしているかと言われると甚だ疑問ではありますが、ちょっとしたモデルを制作するときに3Dスキャナがあるとモデリング時間短縮が出来ます実は前回のブログの箱。これはHOVERair X1Smartを入れるために作ったのですが、入れやすくかつぐらつかないようにもともとの箱も奥が微妙にすぼまった構造をしています。ノギスで作りにくい形状も3Dスキャナがあれば比較的簡易にモデリングすることができます。まずは付属の箱をスキャンしてそれに合わせて押し出していきます。

スキャナモデルを元にスケッチを描いてマイナスのアングルで押し出せば奥がすぼまってぴったりになる形状が作れます。このモデルも作り直すことなく完成しました。数時間かけてプリントして入らないと残念ですし材料も無駄になってしまうのでありがたいことです。

また、この構造のおかげでトレイは中身を入れなくても固定されます。この辺りはぜひ前回ブログを参照ください!作ってみてくださいね!

あると便利、あとは用途と頻度、コストで検討を

ということで紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?はちょっとしたものや寸法から望みの物をCADに持って行って作る、という点では間違いなくあると便利なものではありますよね。また、慣れれば(!)結構スピーディにスキャンできますし、コレは以前からですが、ソフトウエアも扱いやすいし良いと私は高く評価しています。

少なくとも今回POP3 Plusを使う限り、ポテンシャルの高さは感じましたし、感じていただけたのではないでしょうか。INSPIRE, POP3 Plus, 毛並みは違いますがRANGE。当ブログのこの3つのスキャナ関連記事を見れば大体ニーズや出来ること出来ない事、必要性を判断いただけるのではないかと思っています!

一方で黒いものや反射に弱いところ、野外でのスキャンが厳しいなど赤外線利用のスキャナとしての根本は変わりませんし、私たちユーザー側の技量や前準備、後処理に大きく左右される事も共通です。この辺りの部分はおそらくどのスキャナーも同様に難しいところです。超高価な機材でも黒や透明は困難なようで・・・。個人的にはスキャンしたい対象物が黒色なことは意外とあり、スプレー無しでスキャンできるようになったらすごくうれしいのですが・・・。スプレーとマーカーのamazonリンクを貼っておきます。より安価なものを探してもいいと思います。

ということで、総括です。POP3 Plusは扱いやすさほぼそのままに、表現力の向上が達成されており基本的にはINSPIREの上位互換です。一方価格もそれなりに違います(値段差約3万円)。また、INSPIREの記事その2の最後でお伝えした通り、「ポン」と複製できる機器ではないことも同様です。3Dスキャナの導入に当たっては用途や頻度、かけられるコストを含めて検討する必要があると思います。

メーカーは嬉しくないと思うけど中古で購入してまずは色々遊んでみる・・・そんな考え方もあるかも?

長文、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!