3Dプリンターで作るヒンジ サポート不要で積層を意識した構造を考えてみる 部品点数も少なくしよう
今回はよく見かけるような一般的なヒンジを3Dプリンターで作ってみた、という内容です。自分としてはそれなりに工夫をしたつもり・・・。STEPもありますので皆さんぜひ作ってみてくださいね!
3Dプリンターで作るヒンジ 種類は色々
3Dプリンターで作るヒンジ、というと皆さん何を思い浮かべますでしょうか?よく見かけるのはヒンジ部分を円錐型にして、サポートなどを付けず一回で印刷するタイプではないかと思います。この方式は3Dプリンターならでは、という感じで印刷を見ていてもビルドプレートから外した瞬間に可動する感じも魅力的ですよね。
また、以前当ブログでもやってみた、ヒンジ部分を立てて円柱状にして一気に印刷するのもなかなか楽しいものでした。ヒンジについての詳細はこちらもぜひどうぞ。前述の円錐型も一緒に紹介しています。
このブログのものは一般的なヒンジを印刷した面をサポートとして利用する方式で動きがいいのと、ヒンジを並べれば負荷にある程度耐えられそうなところが利点になります。
今回作ったヒンジの特徴
今回はこういった一体形成ではなく、パーツ毎に分割して作るヒンジを作ってみることにしました。ちょっと蓋つきのボックスが欲しくて・・・(笑)。サイズにもよるとは思うのですがある程度大きな物を入れるケースを考えると一体型はちょっと難しいと思うんですよね。意匠としても微妙になりそうですし。
ということでまず最初に、今回作ったヒンジがこちら。本体はPLA、蓋は粘りを考慮してABSを使いました。(最初はグリーンの同色だったんですが、マットなPLAだと爪部分がどうしても弱いので・・・)
このヒンジの特徴は右のTwitterにも上げましたが次の4点になります。
- 構成パーツのすべてでサポートが不要
- 追加部品はヒンジのパーツのみ
- 壊れにくい積層方向で造形されている
- 接着やねじ止め後はヒンジが外れない
ブリッジを使用して穴をあけるなどでもこうしたヒンジは実現できるのですが、その方式だとどうしてもブリッジ部分に負荷がかかって壊れやすくなりますし、芯として金属が必要になります。
例えば以前当ブログでも紹介した、子供の水筒の部品。
これは積層割れを防ぐためにヒンジ部分のみを積層間で割れることが経験上ほぼないTPUを使用して製作し、PLAと噛みこませる形で一体印刷することで実用性を持たせてみたものです。TPUは柔らかいですが、ブロック状にすればそこそこ硬いのでやってみたものになります。興味がある方は是非こちらもどうぞ。
今回はそれほど強度が要らない蓋つきの箱を作る、という条件で3Dプリンターに合理的な?ヒンジを作ってみた、という内容になります。あ、このちょっと艶消しのよさげなグリーンはFlashforgeのつや消しグリーンです。結構いい色ですよ。SK本舗のマットフィラメントの緑と似た感じです。amazonリンクも良かったらご利用いただければと思います。どちらもPLAですが風合いも良くお勧めです。ミリタリー系なんかにも合うと思います。
設計について
では早速ですが、ヒンジ部分の設計です。まずは箱部分から。
箱部分のヒンジ構成要素は軸です。サポート不要にするためにブリッジを使用して作成しています。最下部のブリッジは多少垂れさがるのですがサポートは不要ですし、クリアランスを取れば問題ないように設計できます。ポイントとして、意匠としてある凹凸を橋渡しする形で作成し、ふた部分がぐらつかず、形状も崩れ落ちないようにしました。
積層方向が横なので、ヒンジを立てて印刷する場合よりも強いです。とはいえこの部分は構造上応力でどうしても根本で破損する可能性はあります。強度が必要な場合は周囲のみ丈夫に作って、鉄線等を造形途中で埋め込む形にするのも手かなと思います。
次に蓋部分です。
蓋には後述のヒンジパーツを差し込める台形形状の溝を作りました。私の場合は今回接着にしましたが、固定については前述の通りネジやナットを使うのもいいのではないかと思います。作り方としてはまず単純な蓋を作って、そこから先に作っておいたボディ部分をブーリアンでくり抜いて調整するのが簡便だと思います。その後ヒンジ部分の基となる台形をくり抜けば大まかな形が出来上がります。
この蓋のメリットは同じ構造にしてもヒンジ部分を自由に設計変更できることです。自由度が広がりますし、ヒンジ部分の試し印刷の際に蓋をいちいち作り直さなくていいのは嬉しいですよね。また、この部分は壊れにくいのでねじ止め方式であればヒンジ部分が壊れても修理が簡便です。
蓋の設計に制限がなくなる、という利点もありますので個人的にはお勧めの方法です。今回は蓋の上面はAnkermakeのビルドプレートの凹凸でシボ加工風にするため平置きする必要がありました。差し込み部分も台形なのでサポート不要に出来ます。
また、ヒンジ部分に差し込んだ際には少し後方に出っ張るようにしました。このデザインにした理由は二つあります。まず重要なこととして、ヒンジから蓋がすっぽ抜けないようにしたかった、というのがあります。後述するヒンジは当然、嵌められるようにしなければならないため隙間があります。軸側の形状を楕円等極端な形にすれば外れる場所を180度単位で指定はできますが今度は回転に難が出てしまいます。それを後方のでっぱりで抑え込もう、というスタイルです。固定するまでは差し込みの微調整が出来るようにすれば、前方の篏合具合の調整も出来て一石二鳥ですよね。
また、後方のでっぱり具合や形状を変えることで最大開放角度を制限することができます。ただ、その分力学的な負荷はかかるので検討が必要かなと思います。
最後がヒンジです。
サポート不要で印刷できるよう、また何より壊れにくい積層方向にするために立てて印刷できるシンプルな形状としました。
正面から見て、ふた差し込み部分の台形をそのままヒンジにすることで無理のない造形が可能です。この形状の難点はヒンジ部分の長さが短くなるための面積が減ることと左右に遊びが出来ることですが、軸部分の形状にはまり込む形にすれば遊びの制御ができます。接着性に不安がある場合はブリムを付けるといいんじゃないかと思います。
また、前述のヒンジの抜け抑止のため、差込口側に開口部を作成しています。この部分を変更することでちょっとした誤差も調整しやすい仕様になっているのではないかと思います。軸部分を金属にする場合には厚みを多くしたTPUで作るのも破損予防になるかもしれません。
構造上の限界はあります 必要なら金属を使いましょう!
積層を意識して制作しているので積層割れはしにくく出来ていると思いますが、何せプラスチックの積層です。構造上の限界はありますので無理はできません。前述の通り、もし簡単に強度を上げたいなら軸部分を鉄線やパイプにするのがいいと思います。このモデルはちょっと削ってありますが、直径3mmなら鉄線の強度も期待できると思います。
パイプをどう固定するかは難しいところですが、簡単に行うなら印刷途中に埋め込むのが楽かなと思います。U字の溝を掘っておき、カラーチェンジ等を指定して印刷を一時停止。パイプを入れてから印刷を再開すればOKです。上面はブリッジにするといいと思います。
ただ、金属を埋め込む場合はノズルと干渉すると非常にまずいです。プリンターにもよると思いますが、こんな感じで遊びを設定して後は微調整すればいいのではないかと思います。(適当に引いたスケッチなので、いい加減でごめんなさい!)
サンプル設計公開 ぜひ作ってみてください!
ということで今回のサンプルを置いておきます。STEPで扱いやすいと思うので是非色々やってみてください。色々教えていただけると私もうれしいです。元データをFusionで作っているため、BY-CCのライセンスとさせていただきます。ただ、別にこの方式自体は何の縛りもないので皆さんの何かに役立てていただければ幸いです。
STEP形式をこちらからダウンロードできます(zipになってます)。トレーもセットになっていますが、自由に変更して印刷してみてください。今度他の場所にもアップロードしてみようかな。
This work is licensed under CC BY-NC 4.0
あ、含まれているトレーはブリッジで印刷できますが、改変して使いやすいようにしてくださいね。下段の中身がなくても止まるようになっています。
造形していただいたらぜひTwitter(X)で教えていただけるとモチベーションが上がります(笑)最近、こういった個人ブログはGoogle検索に引っかかりにくいらしく、一時より明らかに過疎ってしまい、ちょっと悲しいんですよね・・・バンブーの記事がないからかなぁ(笑)。当ブログ、3Dプリンター関連の記事は機種関係なく多いので是非あさっていただけると嬉しいです。
それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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