3Dスキャナーと小径ノズル x TPUで作る 眼鏡の鼻パッド 透明なもののスキャンは消えるAESUBスプレーが強い
今回は役立つ日常品ということで小径ノズルを生かした保護ゴーグル用鼻パッドを作成した話です。CADは使用せずBlenderで制作しました。透明なもののスキャン、国産ノズルKaika 0.1mmノズルでTPUを使った小物印刷をしています。安定性を得るための工夫等、どなたかの参考になればと思います。
モノはいいのに交換用鼻パッドが存在しない保護メガネ bolle
仕事で使う保護ゴーグルにamazonなどで売っているbolleというメーカーのものを使っているのですが、洗った際に鼻パッドを紛失してしまいました。ちょっと確認した範囲ですが、鼻パッド(ノーズピース)の交換品が見当たらないんですよね・・・。製品自体は結構よくて気に入っています。曇りにくいしおおよそどなたが買っても満足できる商品ではあると思っています。価格も手ごろですし。
今回はこの鼻パッドを作ってみた話になります。もし部品売ってて買えたらごめんなさい。メーカー直販なら買えるのかもしれませんが、せっかくだし自分で設計して作る、というのも3Dプリンタラーの嗜みですよね。こうしてブログ題材にもなりますし・・・。
3Dスキャナーの限界について 透明なものはスキャンできない
ご存じの方も多いと思いますが、ほとんどの場合3Dスキャナーでは透明なものは3Dスキャンできません。もし出来たとしても精度が悪く実用としては難しいケースが多いと思います。私が持っているVEGAは赤外線ですし、青色レーザーの3Dスキャナもありますが、波長が異なっても基本的には光が通ってしまうとスキャンが出来ません。光で形状を読み取る構造上仕方がないと思います。当方のVEGAについてはぜひこちらのブログも参照いただければ嬉しいです。スタンドアローンタイプのスキャナはそれこそVEGA2でも出ない限りは上はないのではないかと思っています。・・・高いですけれど。
ノーズピースそのものがあれば鼻パッドをスキャンするという手が使えるのですが今回のように紛失してしまいモノがない場合はそれが不可能です。また、3Dスキャナは当方のVEGAを含め奥まった狭い場所も測定できないことが多いですので(ステレオカメラで見ているため穴の奥は見えないのです)鼻パッドを取り付ける眼鏡側をスキャンする必要があります。青色レーザー等で奥を見る方法はありますがVEGAには搭載されていませんし。
当然透明部分が多いのでそのままではスキャンできません。今回のゴーグルはゴーグル本体の中央にノーズピース用の差込部分がついており、そこに差し込む形状となっています。つまり完全な透明なので、実用に足るスキャンを行うためには何らかの前処置が必要です。唯一透明なものをスキャンするとしたら、以前ご紹介したKIRI Engineが非常に優れていると思います。AIを使用したカメラ画像からのメッシュ、もちろん限界はありますがコレはこれで魅力的ですよね・・・
秘密兵器 AESUBスプレー 自然消滅する魔法?
一番安価なのは片栗粉みたいなものだと思います。粒子の細かい粉ならOK。砂だっていいわけですね。今回はゴーグルなので実はそれでもよかったわけですが、ものによっては洗えないものもあると思いますし、表面に細かい傷が出来てしまう可能性を考えると砂は嫌ですが・・・。透明じゃなければOKと考えてください。精度が落ちない範囲でざらついていればより良いです。
そこで今回のAESUBです。これ、私は全くなじみのない技術で技術的な詳細はちょっと確認した範囲ではわかりませんでした。日本ではシステムクリエイトさんが販売しています。ホームページはこちら。
スプレーのほか、エアブラシで塗布できるリキッドタイプも販売されていました。すごく面白いですよね・・・!また、スキャン便利グッズとしてターゲットマーカーやマグネット付きのもの、ネットなどが販売されています。ちなみに、このスキャンスプレーは吹いた上からターゲットマーカーを貼ることもできますので便利です。
私が持っているのはAESUBのブルーで、現在はRevopointさんが販売されているようです。(下記リンク参照)。システムクリエイトさんのではバイオレットがありました。公式によれば塗膜の厚みや持続時間が異なるとのこと。ブルーが早く消えるタイプでバイオレットはもう少し長く残るタイプのようです。amazonのリンクはこちらになりますが、yahooショッピングのブルーもありました。送料等含めご検討ください。
実際にスプレーしてみましょう。こんな感じでスキャンが可能になります。黒いものなどでも使えますし少なくとも私の知る範囲では使えない素材はなかったです。(精密機器などは試したことはありません)。めちゃざらっとした灰色になるんですよね。本当にすごい。これでスキャンし放題です。欠点といえば、スプレーからちょっと変なにおいがします。昇華中もちょっとにおいがするので換気には気を付けたほうがいい気がします。マスクと手袋はしておいたほうが無難です。ちなみに、スキャン翌日朝には消えていました。(3枚目)



お値段が張りますが代替品はありませんし、私もしょっちゅう使うものではないのでこれは仕方ないと考えています。よいものには正当な対価が必要ですよね・・・なお、海外製(ドイツ)です。
3DスキャンをもとにBlenderでのモデリング 捨て形状も作ろう
さてスキャンが行えたらPCに持っていきましょう。PCでスキャンデータを扱ってもいいのですが、時間はかかるもののVEGA本体でメッシュを作成することもできますし、意外と便利です。出来上がったメッシュを不要部分を切除しておくこともできます。ネットワーク環境だとワイヤレスで直接SHININGのクラウド(5GB無料!のストレージ)に送ることが出来ます。これで世界中どこからでもスキャンデータにアクセスできるわけです。
スキャナからクラウドにデータを送ってPCのブラウザから見た眼鏡形状がこちらです。鼻あて部分は結構小さいですが、引っかかる部分も含めかなりきれいにスキャンできているのがお判りいただけると思います。VEGAはエラーデータを積極的に捨てる結果、寸法安定性もよくて私の用途には非常に向いていて満足度が高いです。



これをobj形式でダウンロードして今回はBlenderに持っていきます。CADで作る方法でももちろんいいのですが、今回は寸法等は関係ないですし鼻に当たる部分ということで、修正しやすさを考えてもCADで行う必然性が低いと思います。ということで、今回はBlender上でこの形状をもとにブーリアン用のくりぬき部分を作成しておき、左右対称に干渉しないサイズでスカルプトを用いて(適当に)鼻あて形状を作りました。





鼻あては左右をつなぐ形状を作るとともに、印刷する際の安定性を考えて後から切除する捨て形状を作成しました。もともとが小さいモデルですし、接地面も大きくなく、素材もTPUでゆがみやすいので、印刷時の安定性は大事です。また、印刷時のノズルパスを考えると、TPUなので左右のパッドをつなぐ部分に糸引きが出てきてしまいます。捨て形状があることで両側パッドの間をブリッジせず、ノズルパスを鼻パッドの外に逃がすことが出来ます。3Dプリンターを使う上でのこういった小さい工夫、意外とあるんですよ。



スライサーの設定で「外周をまたがないようにする」をチェック入れてください。これで捨て形状に沿ってノズルが動くようになります。ただ切除する部分が鼻に当たる部分ですと肌当たりが悪くなりますので、鼻が直接当たらない前方に捨て形状は作成しています。
極小ノズルでTPU印刷、積層も気にならないクオリティ
さて、0.2mmノズルでもいけるかもしれませんが、我が家には0.1mmノズルがあります。TPUは詰まる心配はあまりないので安心して0.1mmノズルが使えるシチュエーションでもあります。また、0.1mmノズルだと垂れる樹脂もめちゃくちゃ細いので後処理がしやすいです。今回は質感の問題で前述の通りノズルパスを外に流していますが、処理しやすいに越したことはありませんよね。
この0.1mmノズルは国産のkaikaノズルです。劇細ノズルについてはノズルのクオリティが結構大切で、変なものだと本当にノズルから樹脂を出す段階で躓きます(笑)kaikaさんはその点安心です。・・・スキャナもそうですが結局、いいものはいいんですよ、価格は高いけれど。
当ブログでも今までいくつか記事があります。私の技術が未熟な古い記事もありますが良かったらぜひこちらもどうぞ。
下の記事は特に2021年のもので、今見ると「うーん」ともなりますね(笑)
なお、今回使用したフィラメントはTPU-95HFです。ちょっとお高いTPUですが、非常に高性能で流動性がよく、一般的な0.4mmノズルですとかなりの高速で印刷しても乱れがありません。Polymakerのフィラメントは価格に見合った品質があり個人的にはおススメです。いいものから入って徐々にコスパに振るやり方も十分ありではないかと思います。amazonリンクも貼らせていただきます。
というわけで一部Xにもアップロードしましたが出来たのがこちらです。我が家のSnapmaker2.0と国産kaikaノズルの組み合わせでとてもキレイ。積層も薄いのでこのサイズで拡大した写真でも非常に滑らかです。また、印刷時のサポートも不要です。印刷する底面側はスライス時に少し切り落として平面にしました。穴部分がきっちり出て、使い勝手に影響しないようになったと思います。
また、2つをつなぐ接続部分ははめるときに内側に反転して飛び出さないようにしました。付けた感じは安定していてすぐ取れそうになかったので切っても大丈夫だったかも。ちなみにTPUはかなり強い素材で、劣化しなければちょっと引っ張ったくらいでは切れません。肌あたりもやわらかいですし非常にこの部位には向いている素材だと思います。シリコンは現状3Dプリントできませんからね(先日PRUSAから発表がありましたが!)






身近なものをぜひ 極小ノズル入門としてTPUはおススメ
私はBlenderほとんど使えないのですが、こういう身近なものをちょっと作るときはCADよりもメッシュ(ポリゴン)のほうが作りやすいとは常々思っています。少しずつBlenderも使えるようになりたいですね・・・!
さて、今回この条件でTPUを印刷してみて、0.1mmノズルとの相性の良さを再確認できました。印刷時間がかかる難点はありますが、もともとTPUは高速印刷に適した素材ではありませんしデメリットも少ないです。やわらかいものを作ることをと考えた場合でもしっかりとした壁を薄く印刷出来る小径ノズルは便利だと思います。
流動性が高いフィラメントなのでノズルつまりも少ないはずです。私はTPUで詰まったことは無いですね・・・。問題になりがちな糸引きも糸が細いので処理がしやすく、むしろデメリットが出にくいのではないかと思います。0.1mmノズルは特殊ですが、0.2mmノズルは市場にも多いのでTPUはトライしてみていただきたいと思います。小さいものも大きな物も作れる3Dプリンターは本当に素晴らしいと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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