EINSTAR Rockitレビュー クロスブルーレーザーはリバースエンジニアリングに最適 マーカーレススキャンも出来て近日PCレスも可能に
はじめに
今回はSHINING 3Dのハンディ3Dスキャナー、EINSTAR Rockitのレビューです。SHINING 3Dさんとのコラボで、機材をご提供いただいて作成しています。この場を借りてお礼申し上げます。・・・ですが、内容等は全く指示されておらずいつも通り好きに書かせていただいています。とはいえ、ここまで良い(高い)機材なので、どうしても全体的に「すごいなー」という感じにはなっています。
当ブログはスキャナー関連の記事は豊富で、最近ですとREVOPOINT POP4やEINSTAR 2、VEGAなど充実しておりますので良かったらそちらもぜひ。機種の特徴や選び方等の参考になれば幸いです。今後どうやらBambuからも3Dスキャナが出るみたいなのでこの界隈も盛り上がりそうですね。
動画もぜひ
今回は実際のクロスブルーレーザースキャンやもうすぐ正式公開のPCレススキャンについて実際にスキャンしているところを動画にしています。スキャナの実際の性能や使い勝手は文章ではなかなか伝わりませんので、こちらもぜひどうぞ!
基本的にはブログの内容と同様になっています。
EINSTAR RockitについてとEINSTAR2との違い
さて、今回のEINSTAR Rockitは上記で紹介したEINSTAR 2の兄弟機種です。EINSTARさんのスキャナは全体的にちょっと高価ですが見合った性能を持つのが特徴です。複数回言及していますが現在のところこの3Dスキャナー市場は価格=性能です。このRockitはEINSTAR 2と同様、青色レーザーと赤外線VCSELの両方を搭載していますが、Rockitでは38本のクロスブルーレーザーが追加され、形状追跡によるマーカーレスのブルーレーザースキャンに対応している点が大きな特徴になります。
| 項目 | EINSTAR Rockit | EINSTAR 2 |
|---|---|---|
| スキャン方式 | ブルーレーザー / IR VCSEL | ブルーレーザー / IR VCSEL |
| ブルーレーザー | クロス38本+パラレル7本 | パラレル17本 |
| ブルーレーザーの位置合わせ方法 | マーカー、グローバルマーカー 形状 | マーカー、グローバルマーカー |
| Laser HD最大取得速度 | 2,800,000 points/s | 2,500,000 points/s |
| クロスレーザー作動距離 | 100~600mm | 非搭載 |
| パラレルレーザー作動距離 | 100~400mm | 100~600mm |
| IR作動距離 | 160~1,400mm | 160~1,400mm |
| Laser HD最小スキャンボリューム | 5×5×5mm | 10×10×10mm |
| テクスチャカメラ | 5MP | 2.3MP |
| レーザークラス | Class 2 | Class 2 |
| 重量 | 425g、バッテリー込み | 420g、バッテリー込み |
基本的な結論としては価格に見合った性能でリバースエンジニアリング用途も十分にこなせるほか、EINSTAR2シリーズとしてPCレスでのスキャン対応になることを考えるとワイヤレス、マーカーレス、PCレスの三拍子揃った優等生だと思います。amazonリンクもよかったらぜひご確認下さい。・・・高いけれども!!


Rockitのスキャン方式と特徴
Rockitのブルーレーザーはクロスが19本ずつが交差する構成で、単位時間あたりに得られる情報が多いです。クロスしていない部分でもマーカーの追跡が行えるのでトラッキング性能が高く、また形状に十分な特徴がある対象であれば、マーカーレススキャンも対応しています。(但しマーカーレススキャンはカラー対応不可でした)
パラレルレーザーは7本で、より高解像度で取得したい場合に使用する、とされています。使用している限りでは基本的にクロスレーザーのみで十分で、スキャン中に変更することが出来るので対象に合わせて利用する感じです。EINSTAR 2は方式は選べませんが、その分パラレルレーザーが17本なので、時間はややかかりますが全然悪くないと思います。
IR Rapidは、赤外線VCSELを利用して比較的広い範囲を取得するモードです。MEMSよりも黒に強く、意外と万能に使用することが出来ます。ここはEINSTAR2と基本的に同様です。トラッキング性能も非常に高く形状、テクスチャ、マーカー、ハイブリッドなど複数の位置合わせ方式を選べます。特にこのハイブリッド方式は私は非常に好きです。もちろんカラー対応で、テクスチャ用カラーのカメラ画素数はEINSTAR2より多くなっています。
ただ、あまり近くには寄れないので小さいものはレーザーを使ったほうが良いです。近距離のIRスキャンは以前紹介したVEGAが強い領域になります。このあたりもEINSTAR2と同様になります。



片手での扱いやすいやすさは健在
EINSTAR2シリーズの特徴である片手での扱いやすさは健在です。高性能なスキャナーは基本的にデカく重くなりますが、このシリーズは片手でしっかりホールドでき、手首の向きと動きでかなり自由にスキャンが行なえます。それでいて電池内蔵のケーブルレスなので使い勝手が良いです。
EINSTAR2との重量差は5gと誤差の範囲ですし、性能を考えると非常に小型軽量だと思います。予備バッテリー付きかつ充電器付きなので長時間のスキャンにも耐え、業務にも使えるクオリティです。もちろん有線でも使用できます。
私は必要性を感じていませんが三脚穴はないので固定しながらターンテーブルでスキャンを行うことは出来ません。もし必要なら別途3Dプリンターなどでアダプターを作る必要があると思います。



クロスブルーレーザーで行うリバースエンジニアリング
せっかくRockitが来ましたので、現在クロスブルーレーザーを活かして旧車の部品をリバースエンジニアリングをお手伝いしています。まだ全部終わっていませんが、スキャン対象はユーノスロードスターのヒーターコントロールユニットです。
こちらは廃盤となっている部品で、送って頂いた状態ではフレームやモーター、配線などが複雑に組み合わされています。分解前の状態では特に奥まった部分や影になる部分が多くなり、3Dスキャナーにとって非常に難易度の高い対象だと思います。
特に狭く奥まった部分は3Dスキャナーで対応が難しいところで、スキャナ側のステレオカメラで見えないと形状が追えません。EINSTAR2シリーズは小型でステレオカメラの距離が比較的近いため、こういったもののスキャンに有利だと思います。
大型の機種の場合は一本ラインレーザーで奥は見るのですが、この形状だとそれなりに大変だと思うんですよね・・・。
スキャンの実際は動画をぜひ見ていただきたいと思いますが、マーカーを貼ったターンテーブルでスキャンは行いました。クロスレーザーの威力で形状の取得が速く、複数方向からのスキャンも楽です。0.2mm精度でのスキャンの場合、PC接続で約90fps程度と高速でした。また、本体にも結構マーカーを貼ってみたのですが、ターンテーブルのマーカーをしっかり認識するので複数方向から撮ってマージするなら本体へのマーカー貼りは不要だったかもしれません。いずれにせよトラッキングが安定し撮り直す必要がないのは嬉しいところです。
本体にマーカー貼るのって面倒ですし、剥がすのも手間なのでこうしたトラッキングの強さは魅力的です。
マージ後完成したメッシュを見ると、樹脂の薄い部分、配線、モーターの周囲など含めてバッチリでした。試しにこのスキャンデータを自動で穴埋めしてそのまま3Dプリントした結果も良好で、ちょっと変更すればそのまま使えてしまいそうなクオリティです。なお、プリンターはCreator5 Proを用いました。ツールが複数あるとサポート剤と本体をくっつきにくい素材で別に用意できるため非常にこういう用途にはありがたいです。よかったらこちらのブログもぜひ。




現在はPlasticityを使って、このポリゴンのCAD化を行っています。後方部分はおおむね欠損部も含め完成したのでこれから前方部分の制作を行います。この形状は3Dプリンターだと印刷しにくいので、先方と後方は別形状にしてはめ込み+インサートナットとネジ止めにしたいところです。ほかの部分との干渉が生じる可能性があるのでやってみないとわかりませんが・・・
Plasticity については先日ブログにしていますが、非常に魅力的なソフトウエアなので良かったらこちらもぜひ。


マーカーレスブルーレーザーはシーンを選ぶ テクスチャは不可
RockitをEINSTAR 2と区別する大きな機能の一つがマーカーレスのブルーレーザーです。通常、ブルーレーザーの3Dスキャンには位置を検出するためにマーカーが必要なのですが、IRモードと同様にスキャン形状の特徴を検出しつつブルーレーザーでスキャンできる機能がRockitには搭載されています。
勿論のっぺりしたものはダメですが、そこそこのサイズのもの(カバンやヘルメットくらいのサイズ以上)はマーカーレスでもかなりいい感じにスキャン出来て、あまりマーカーを貼りたくないものにはぴったりです。ただ少し小さめになると位置情報をつかめずスキャンができないことも多くありました。これはIRモードよりもシビアな印象です。
また、IRモードだと特徴とマーカーを併用してスキャンが行えるのがEINSTARの非常に優れている点なのですが、ブルーレーザーではこの併用はできませんでした。また、テクスチャの取得もできないので形状取得専用モードです。カラーで保存したい場合にはマーカーがあると問題があるものについてはやはりIRモードを使用する必要があると思います。実際としてはある程度以上小さければ先に書いた通り、本体にマーカーを貼らずとも背景側にマーカーがあればゆとりを持った対応が出来たので、ある程度大きいもの用として使うのがよさそうです。また、解像度面でもマーカーモードより不利なので「万能なもの」ではなく、シーンを選んで使うのがお勧めです。



大型アップデートで今後はPCレススキャンが可能に!!
動画中にも出てきますが、10月末の大型アップデートでこのEINSTAR2にスマホと直接接続してスキャンを行う、PCレススキャン機能がリリースされます。モバイルアプリを使用してスマホとスキャナをつなぎ、EINSTAR VEGAのようなPCレススキャンを、スキャナと本体を分離する形で行えるようになります。
現在私が使用しているのはβ版のソフトウエアであり、スキャン後処理をスマホで行っているため結構時間がかかりますが、正式バージョンはスキャンプロジェクトをPCに転送する機能も実装される予定です。この機能に対応するためPCのソフトウエアも同時にアップデートが来ます。PCレススキャンの実際も動画内にありますのでそちらも是非どうぞ!
スマホという制限はありますが、スキャンそのものは非常に実用的でマーカーレスにも対応し、プレビューやスキャン中の確認は荒くなりますが、実用的なfpsでスキャンが可能になります。もっともスマホ側の負荷は相当に大きく、iPhone ProやハイエンドのAndroidが必要になります。この辺りは詳細が正式リリースされたらぜひ色々試してみたいですね。



動画でもいくつか出していますが、PCレスのスキャンが普通にできるとなると、対応可能なシーンがかなり広がります。他社製のスキャナもこうした機能を搭載してきており、一重にスマホ側の性能向上とメモリ量の増加の恩恵を受けていると思います。ただ、昨今のメモリやストレージ高騰化のため、ハイエンドのスマホ価格は大幅に値上がりしており、スキャン環境の整備にコストがかかる、という面はつらいところです。ただ、各社PCレスの対応環境を見ていると、他社ではスマホ接続の場合はブルーレーザーが限られたり、マーカーレスにはPCが必要等制限が見られます。このEINSTARシリーズのモバイルアプリはスキャンについてはフル機能搭載と言ってよく素晴らしいと思いました。
寸法要件がなくお手軽にざっくりスキャンするなら、以前紹介したKIRI Engineはローコストでお勧めです。最近だとAIの力を借りて高画質化もできました(笑)
最大の課題はやはりコスト EINSTAR2もいいと思う
さていかがでしたでしょうか?性能面では正直べた褒めになってしまいましたRockit、課題はやはり先ほどの通り周辺環境を含めたコストでしょう。快適にスキャンを行おうとすると、色々ハイスペックなものが必要です。また当方でスキャンしている限りでは実は一番シビアだったのはWindowsのデスクトップ機です。我が家のPCはゲーミング用途に耐える構成(14世代i7+64GBメモリ+RTX5070Ti)で相応にハイスペックなのですが、おそらくこれでもメモリ帯域の問題でクロスブルーレーザーの最小解像度、0.05mmのスキャンは長時間行えませんでした。
むしろ発熱の問題はありますが32GBメモリのMacbook Air M5のほうが長時間のスキャンが行えてしまうくらいです。マシンスペックの要求水準が非常に高いんですよね・・・。
PCレスでのスキャンもできることからメモリの転送速度が重要なのだと思います。この環境をスキャナのために用意しようとすると、特にこのご時世、ちょっと現実的でないお値段がかかってしまう可能性があります。
ただでさえ、Rockit本体が25-30万円くらいのプロシューマー向け価格帯なので、快適さを考えるならEINSTAR2にして、差額の10万を環境整備に投資するのも魅力的な選択ではないかと思います。マーカーレスブルーレーザーを切り捨てて、本数の多い平行レーザーで時間をかけてスキャンするのも良い選択だと思います。
本体としてはその他の弱点はほぼなく、欲しい人もいるかもしれない三脚穴がない、くらいになるのではないでしょうか?スキャン対象も非常に大きいものには向きませんが、一般的な身の回りの用途であれば不足するシーンはないでしょう。我が家でスキャン範囲が一番広く大きいものが撮れるのはオールインワンのVEGAになります。車一台ガバっと撮れるのは素晴らしいです。
それにしても今月のアプリ公開でモバイルスキャンも可能になれば鬼に金棒ですね。EINSTAR2にせよRockitにせよ、長期間現役で使える機材になると思うので、時間で減価償却することにしていい機材を買うのがお勧めだと思いました。どうやら3Dスキャナ界隈は年末にかけて盛り上がってくると思いますので、皆さんの機種選定に役立てば幸いです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

















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