Fusion使っている人向けFreeCAD ver1.0 入門 自由曲面 後編 Curvesワークベンチ実践編
総論的になってしまった前編の続き、具体的なサーフェスの貼り方のご紹介です。Curvesワークベンチ、是非使おうと思った時使えるツールとして役立ててください!ちょっとしたTipsも入れつつ記事にさせていただきました。
前編はこちら
今回は後編、具体的なサーフェスとソリッドの作成について、ちょうど最近作った子供の自転車用泥除けを元に紹介したいと思います。形状が比較的単純で複雑でないため、入門編としては最適かなと思っていますが、まず、Curvesワークベンチの基本が前編に書かれていますのでこちらもぜひご一読ください。今回はコレの続きになります。
今回の記事は基本的に寸法という概念がありません。スケッチを利用する以外Curvesワークベンチで扱うカーブに寸法を入れる機能は基本ありませんし、より柔軟なモデリングの紹介だと思っていただければ幸いです。FreeCADをお使いの方でも意外と楽しんでいただけるかもと思っていますのでよろしくお願いいたします。
今回の下絵は3Dスキャン
今回の自転車の泥除けですが、元々上の子(女の子)用の自転車なので長男が乗っているとやや可愛さがあり、また相当ボロボロになっているので作り直すことにした、という流れです。
今回は最近使っている3DスキャナVEGAでザックリ3Dスキャンしたデータを「下絵」として捉えて、それを参考にサーフェスを作っています。よく3面図を見ながらモデリングすると思いますが、それに近い感覚で出来るのでザックリスキャンはオススメです。形状にもよりますが、大きめの物ならScanniverse等のスマホアプリでメッシュデータを作ることもできるのでお勧めです。(3DGSは原則メッシュ化出来ませんが、KIRI Engineならできます、有料ですが。)この辺りのスキャン系についてはまたこのブログで紹介させてくださいね。なお、当ブログにもいくつか3Dスキャナの記事がありますのでよかったらぜひ。下はScanniverseも紹介している記事になります。
スキャンデータはメッシュを取りこんで位置調整を行って使用します。このスキャンデータの扱いについては以前のFreeCADブログ、アラーモ台座編もぜひどうぞ。また、お馴染みの左下のパネルで色々設定が出来ます。今回は形状を下絵として見るだけなので、selectableをfalseにして選択不可にしています。また、Transparencyで透明度も70にしました。色等もここで変えられます。


あと、これはこの後のCurvesワークベンチにも言えることですが、このパネルで同様に線の色や幅、制御点のサイズも変更できます。必要に応じて変えてください。(共通の項目であれば複数のオブジェクトを選択した状態で一気に変更することも可能です。)
スケッチで大まかなラインを作成
まずは、スキャンデータを参考に側面像でスケッチを描きます。SketcherワークベンチでOKです。形状をどうしたいかにもよりますが、今回はザックリでいいので、基準となる上と下の2本の線だけを引きました。泥除けの幅があるので、下の線は本来正中ではなく向かって手前側に線を引く必要がありますが、今回の方法では問題ありません。CurvesワークベンチとGordonサーフェスを使う場合は必要な情報を大きめに描いておくのがベターです。(Surfaceワークベンチで面の拡張も出来るのですが、今回は割愛します。)


今回はスケッチこれだけにしていますが、複雑なものの場合は参考になる線を複数用意したり、前編で紹介したmixed curveが作れるようにするとより便利に使えると思います。
スケッチを元にカーブを作って大きめにGordonサーフェス作成
さて、ここからはCurvesワークベンチの出番です。スケッチを基にカーブを生成して、それをGordonサーフェスにしていきます。スケッチを一つだけ選んでJoin curveすると、Curvesワークベンチで使える曲線になります。このJoin curveはもうスケッチではないので、今回は38mmオフセットしました。これがスケッチで立体を意識しなくて良い理由です。カーブにした後自由に動かせるのが強みです。今回は線が2本ですが、途中の断面が必要であれば、それもスケッチしておくことでGordonサーフェスを作れます。カーブの終点をそれぞれCtrlで複数選択してFreehand BSplineでカーブを作り、全部の辺を選択してGordonサーフェスを作りましょう。前編でも言いましたが、Freehand BSpline使用時は終了後Qキーで編集を必ず終えるようにしてくださいね!





トリミングして面を完成。面同士はBlendサーフェスで接続
Gordonサーフェスができたら、不要な部分をトリミングして形状を整えます。トリミングもCurvesワークベンチを使っていきましょう。Gordonサーフェスの元にした線は全て非表示にしちゃってください。手前と奥2辺をCtrlで洗濯して新しいFreehand BSplineを作ります。カットしたい方向を決めて、その面でカーブを作ればいいと思います。今回はこんな感じです。カーブを作ったら上手に切り取れるようにextended curveでカーブを延長します。(下図赤線)CurvesワークベンチのTrim faceは視点から見たサーフェスのカットなので、残したい部分のGordonサーフェスをクリックして、Ctrl押しつつ切り取るカーブを選択しTrim faceを実行。これで面が一つ完成しました。





これで1つ面が出来ました。では次に外側下方の面を作りましょう。今回はトリムしたサーフェスの緑エッジを使ってJoin curveで新たなエッジを作りました。ゼロから作ってもいいのですが、まあ、このほうが楽なので(笑)位置を適宜修正してGordonサーフェスを作ります。そして2つのGordonを必殺Blendサーフェスで繋ぎます。Blendサーフェスが初期でどうつながるかはやってみないとわかりません。適当に面が作られますが、方向などを変えたい場合はBlendサーフェスのデータタブで色々変更してください。(前回のブログ参照)






もちろん、パラメトリックなので、面をつないだ後、元のカーブの位置を変更するとそれに合わせて面の形状も変化します。イイ感じになるように修正は適宜可能です。個々も後でトリミングしたりするので大きめがいいんじゃないかと思います。(エラーに注意はしたほうがいいのでバックアップは大事です!)
なおこの方法の場合、作成した面と面をBlendサーフェスで繋いでいきます。今回は行き当たりばったりでやっていますが、Blendサーフェスは出来上がった面のコントロールに限界があるのであらかじめどこをBlendサーフェスで繋ぐかは考えておいた方がやりやすいです。つなぐ予定の面を一つの大きな共通したカーブを持つGordonサーフェスにすることも検討して下さい。
つなげたい部分で適宜トリミング 全体のサーフェス完成
次は側面サポート部分を作りたいので、それに先立って面をトリミング、分割しておきます。今回はこの2つの曲線を引きました。どちらも先ほどと同様、エッジを複数選択してFreehand BSplineを引き、カーブを延長しています。チョキチョキとトリムを続けていきましょう。一度トリムすると、元断面が消えたように見えますが、内部に保持されています。FreeCADではそのまま利用できるので表示しなおしてもう複数回トリム可能です。履歴がツリー上になっているのでどうしても構造が複雑になります。必要な要素があれば左上にあるグループ機能(青いフォルダみたいなやつ)で要素をまとめておくといいんじゃないかと思います。目的のものがどこにあるのか、わかりにくいですからね・・・。



では上の緑部分のエッジに接続する側面部分のサーフェスを作りましょう。ベースとしてエッジを利用してもいいですし、フリーハンドで引いてもOKです。今回はこんなサーフェスにしてトリミングし、最終的にBlendサーフェスで面を接続しました。もう元の3Dスキャン形状と変わってますね(笑)。前回ブログの通り、Blendサーフェスの接続方法は色々あり、エッジを立たせたり寝かせたり色々形状を変えられますので是非色々試してください。




なお後述しますが、ここでBlendしないで、側面部分を別ソリッドで作ってCurvesワークベンチのBlendソリッドを使って接続する方法もあります。
左右対称の接続もBlendサーフェスが簡便
ということで主なサーフェスが出来ましたが、ここで左右対称にしてみましょう。最初に作ったサーフェスは特に意識せず作っているので、そのまま左右反転すると間に山が出来てしまいます。対称性を意識して最初からモデリングする必要がなければ、ここでもBlendサーフェスが便利です。適当なところでスケッチを使い直線を作成、その直線を元に正面か後面ビューでサーフェスをトリムしてから反転します。
元の面と反転した面をつなぐBlendサーフェスを作ればつなぎ目のない滑らかなサーフェスが完成です。





全体的に厳密な寸法が規定される場合には使えませんが時短にもなるので私は多用しています。
また、今回は行っていませんが、この中央部を埋める方法もあります。これは大きなサーフェス群を作る際の基本にもなるのですが、Surfaceワークベンチを用いた穴埋めテクニックです。まず、下側の左右サーフェスをBlendサーフェスで接続します。次にSurfaceワークベンチに移動してFillingを行い、それぞれのサーフェスを接続します(辺数が多いとエラーになるので注意)。この際、それぞれのエッジをすべてダブルクリックして下のfaceをnoneから変更し、ContinuityをG1にすれば連続した曲面が完成します。これも非常に有用なのでぜひ使ってみてください。


サーフェスのまとめもCurvesワークベンチが便利
一通りサーフェスが出来上がったらそれをまとめておきましょう。Fusionでは面のステッチを行いますが、それに相当する作業が当然FreeCADにもあり、面を複数まとめたものをシェルと呼びます。複数面のシェル化はPartワークベンチでも可能ですが、今回はCurvesワークベンチでこの作業もやってしまいましょう。元々はソリッドを作る機能なのですが、複数の面を選択してCurvesワークベンチでParametric solidを押すとシェルが作られます。ツリー表示は立方体の形でシェイプになった場合は茶色、ソリッドになった場合は緑です。わかりやすい。画像は例としてですが、選択されている部分左半分が茶色の立方体で表されるシェルです。(名前は全てsolidになっていますが気になるなら変更してください。)
では3枚目、データタブを開いて図のshow open edgeをFalseからTrueに変更してみましょう。すると表示が輪郭のみになると思います。これが正しくシェイプになった(ステッチされた)状態です。もしステッチ出来ていない場合はサーフェスの輪郭が残りステッチ出来ていないことが分かります。Fusionではちょっとフェイス同士が重なっていなくても許容差を増やすことで無理やりステッチ出来ますが、私の知る限りFreeCADではその機能はないと思います。むしろあるならコメントでも良いのでぜひ教えてください!!




なお、Partワークベンチでやる場合にはシェイプビルダーを開いて面からシェルへ、を選択しステッチしたい面を全て選択し作成を押します。一番下にシェルが出来ているはず。(なお、利用した面は非表示になりません)この際「形状の高精度化」のチェックボックスを入れると、ブレンドサーフェスを作るために分割したラインを消すことが出来ます。面の分割を消したい場合には有用な機能です。Partのコピーでも同様の作業ができますが、この場合は履歴が残らないコピーが作成されます。



ソリッド化! 一癖あるので工夫や手間がいるかも
シェルが出来ればあとはソリッドにするのみです。どの面でシェルを作るかは意外と重要で、今回は次項のオフセットで行えましたが、形状によってはオフセットがエラーになりソリッドに出来ないこともあります。この辺はやってみるしかないところですが、複雑な形状では特に注意が必要です。今回は2つ方法を紹介します。2つ目はFusionで私もよくやるのですが、Fusionだとループ選択して一気に面が作れる一方でFreeCADにその機能がなく良い方法はないかなぁと考えています。そしてソリッドをつなぐ方法のひとつがBlendソリッドになります。他にシェルの良いソリッド化方法があればぜひ教えてください!
1.Partワークベンチの3Dオフセット: 出来るならばこれが一番。シェルを作ったらPartワークベンチで3Dオフセットを選択します。オフセットの際に厚みを指定して、「オフセットを埋める」チェックボックスをonにしておきましょう。これでソリッドが出来ます。今回のものは泥除けの再度部分のサーフェスを本体とは別に内側に3Dオフセットしてブーリアンで繋ぎました。サーフェスの方向によって変更したり、2番と組み合わせて使用してください。



地道にルールドサーフェスで繋ぐ: シェルを2つ作って移動、場合によっては拡大縮小して手動でエッジをPartワークベンチのルールドサーフェスや、必要があればCurvesワークベンチのBlendサーフェスで埋めていく原始的な方法です。時間はかかるけど、コントロールしやすいのが利点になります。先ほど言ったようにグルっとループ選択が出来ない為、サーフェスが多いと時間がかかります。正直この作業だけはFusionに持っていきたくなるのですが、良い方法、ないですか??
裏技的方法:Blendソリッド:単体で使用するものではありませんが、滑らかに接続されたソリッドを作る目的であればこのBlendソリッドも便利です。これは今回であれば泥除け再度部分をBlendサーフェス部分無しに3Dオフセットをおこない2つのソリッドを作成します。この際には形状の高精度化は行わないでください。指定する面がなくなってしまいますので。この状態で接続したい面同士を選択してCurvesワークベンチのBlendソリッドを実行するとつなぐソリッドが出来上がります。便利ですよね。



こうしてブーリアンした形状が出来たら、最後は余計なところをブーリアンで削って完成です。この際、出来上がった形状をCloneやBaseフィーチャーで以前ブログで紹介したPart Designワークベンチに戻してもいいのですが、単に切り取るだけであればSketcherでスケッチを引いてPartワークベンチで押し出し、ブーリアンすれば大丈夫です。(なお、Part Designなら個人的にはCloneの方がエラーが出ない印象を持っています。)


ソリッド化のノウハウは結構個人によって異なる気がしますし、正直私もいつも面倒だなぁ、と思っている側です。サーフェスモデリングをされている方でおすすめの方法があれば是非教えて欲しい・・・!!よろしくお願いいたします!!ということで無事に泥除けが出来ました!!実際はココからネジ穴部分を作成していますが今回は割愛します。印刷はAnkermake M5を使って、先日ご紹介したPanchroma CoPEで制作しています。良かったらこちらのブログもぜひどうぞ。


おまけ 自由曲面にスケッチを描く方法
最後にオマケです。Curvesワークベンチでは、自由曲面の上に直接スケッチを描くこともできます。それがCurvesワークベンチのSketch on Surface。曲面を平面として展開し田スケッチを作成し、その枠内にスケッチを描くことでスケッチが曲面にマッピングされる機能です。
下が例になりますが、長い平面を選択してSketch on surfaceを実行すると一つスケッチが出来ます。そのスケッチをダブルクリックすることで青い参照線に囲まれたスケッチ枠が描かれます。その中に図形を描くことで曲面にマッピングされ表示が出来ます。そのままだとただの線になりますが、データタブでFill faceを行うことで面が出来、さらにオフセットや厚みを指定することで簡便にソリッド群を作成することが出来ます。
それをブーリアンしてあげれば面への装飾が可能になります。曲面に沿った形でのスジボリやディティール追加に利用しやすいと思うので是非色々やってみてください。勿論一度作った後にスケッチ線をずらすと結果も変わりますので位置移動も可能です。メカ系のモデリング等にかなり使える機能ではないでしょうか?





Curvesワークベンチを使いこなしてFreeCADを便利に使おう!
いかがだったでしょうか?Curvesワークベンチと友達になれそうですか?このワークベンチを使いこなせるかどうかでFreeCADでの表現幅がかなり変わる印象を私は持っています。私自身もまだまだ分からないことが多いのですが、数か月Curvesワークベンチと格闘したのでそれなりに使えるようになってきたかも?
このブログが皆さんの苦労?を少しでも軽減出来れば幸いです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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