漏れない、ねじ切らないノズル交換方法は?3Dプリンターやノズルを壊さないようPhaetusが公開している方法

今回はノズル交換の話です。私もやりましたが、樹脂が漏れて団子になったりノズルをねじ切ってしまうなどトラブル発生の大きな理由となる可能性があります。今回は私もVORONで使用している、Phaetusのマニュアルに沿った正しいノズル交換方法のご紹介です。

3Dプリンターユーザーの皆さん、ノズル交換どうしていますか?

最近は専用品も増えておりノズル交換手順自体が指定されている場合もある3Dプリンターのノズル。交換手順について把握されていますでしょうか?ホットエンド交換をしたり、社外品のホットエンドや日本製高精度ノズル「Kaika」シリーズの取り付け等ノズル交換を行う際に起こり得るトラブルを把握し事前に防ごう、というのが今回の記事を書いた理由です。

例えば、フィラメントの漏れは結構致命的になり得て、最悪の場合ホットエンドごとダメになってしまいます。樹脂が周囲に漏れ出て固まり、カチコチになると相当大変。ABSならアセトン処理をしたり、PLAなどはヒートガンで温めて少しずつはがしたり、復旧に相当の手間と場合によっては費用を要することになります。

私自身も大事には至らなかったものの、ホットエンドからのフィラメント漏れでは異臭騒ぎになりましたし、かなり以前になりますが真鍮のノズルをねじ切ってホットエンドをダメにしたことがあります。

身近なところでもトラブル例が・・・

さて、まずはこの衝撃映像?からどうぞ。どちらも、ノズルのねじ部分がもげています。どうしてこうなってしまったのか・・・

まずは私の例から。写真左は2021年の古いものですが、Snapmakerシングルエクストルーダーのホットエンドにノズルを締めつけようとしてネジ部分で破壊してしまいました・・・これはまだ安い?純正品のノズルだったのですが、ホットエンド内にねじ切れたノズルがはまり込んでしまい使えなくなってしまいました。

今であればドリルを使って無理やり回す等も出来ると思うのですが、当時はこのホットエンドごと処分した思い出があります。以後増し締めに気を付ける戒めとなりました。

次に漏れたほうです。下のTwitterにもある通り比較的最近VORONを組み立てた際、最初の印刷中に異臭がして印刷を停止してみるとシリコンカバーの中からもりもりと樹脂が漏れ出ていました。気づかずに継続した場合、漏れ出たフィラメントはもりもりと上方向に逆流しながら腫瘤を形成し、ホットエンド自体やサーミスタ、場合によってはファンの配線まで犠牲になる可能性がある状況でした。下のTwitterは樹脂を無事剥がせた後の状態です。

なお、フィラメント漏れについてはフィラメント側の要因もあると言われており、吸水したフィラメントではフィラメント漏れが生じやすくなるようです。Nature3Dさんの下記ブログもぜひ参考にしてください。

次に掲載許可頂きましたので身近な例が最初の2枚目になります。Twitter (X)でお世話になっているまことさんの一例です。

これは何と、日本製高精度ノズル「kaika」を破壊してしまった例になります。このノズル、凄く良いものなんですが1本4000円!のものなので、まことさんの心中を察すると・・・。そう、真鍮のノズルは柔らかいので壊れやすいのです。

Twitterで「ノズル、ねじ切る」などのキーワードで検索を行うと3Dプリンターのノズルのほか、エアブラシのハンドピースノズル等沢山の事例が出てきます。

では、どうすれば樹脂が漏れず、壊れないようにノズルを交換できるのか?私が見た中で最も具体的に書かれていたのが下のものになります。

Phaetus公式 ノズル交換の方法について

自分でもこの悲劇を経験している中、メーカーの推奨するノズル交換時の注意事項について、VORONでお世話になっているホットエンド、Rapido2を製造しているPhaetusがマニュアルを持っていることに気づきました。

マニュアルはこちらからどうぞ

上記はGitHubページ内のPDFです。そのままだと見づらいのでダウンロードされるのがいいと思います。

右のTwitter(X)にも出していますが、主な手順は下記の通り。「Hot tightening」といいます。

  • 1. 普通に止まるところまで締める
  • 2. ノズルを高温にする(〜285度)
  • 3. 均一に温まるまで1〜2分待つ
  • 4. ヒートブロックをスパナで持ちながらノズルを小さいスパナで持って増し締め。この時のトルクは2.5Nm。コレは小さいスパナを指一本で押した時の力です

私もノズルを加熱して増し締めする、と知識はありましたが、具体的な温度はよくわかっていませんでした。このマニュアルによるとかなり高めの温度、ということになると思います。

また、温度が均一になるまでちょっと待つ、というのも存外大切なのではないかなと思います。ノズルも含めて温度が安定してから作業はしましょう。

そして最後、一番厄介なのがこの増し締めです。説明によればそんなに力を入れなくてもいい感じ。ただ、フィラメント漏れのトラウマもありギュギュっと締めすぎると前述の憂き目にあう、ということになります。にしても2.5Nmのトルクってどれくらい?

まことさんはトルクドライバーを購入される選択をされたようですが、これももちろん一つの手段かなと思います。ただ、トルクドライバーはおそらくそう皆さん持ってらっしゃらない、ですよね・・・

2.5Nmのトルク、どのくらいかわかりますか?

2.5次元、ではないです(笑)。この2.5Nmのトルク、イメージつきますでしょうか?私はさっぱりつきません。もともとは理系だったはずなんですが・・・。ということで2.5Nmのトルクについて解説させていただきます。・・・もし間違ってたら教えてください!!

まずはN(ニュートン)についてです。身近なkgに換算するとどのくらいか、ということですが、基本的には1kgfが9.8Nになります。kgは質量、地球の重力加速度が9.8m/s²なので、この計算になります。計算すると2.5Nは約255gfですね。単位がNmなので、ノズルから1m離れたところに255gの力をかけるとこのトルクになります。

力x距離がトルクなので、距離が半分なら倍の力が必要になります。スパナを使って10cmの場所に力を加える場合は2.55kgの力を加えればよいということです。2.55kgの力がどの程度かは、ご自宅の体重計等で簡単に確認できます。スイッチを入れて指で押してみましょう。面で押せないので誤差もあるかとは思いますが、そこそこぎゅっと指一本で押すと2-3kgじゃないでしょうか?写真1枚目をご覧ください。このくらいの力が、「2.5Nm」です!!

写真2枚目と3枚目は分かれていますがそれぞれ右手と左手で行います。ホットエンドを傷めないように本体側を把持して増し締めは行ってください。ホットエンドが取り外せるものであれば通電しながら外すのが簡単ですが、やけどなどトラブルも生じやすくなる可能性がありますのでご注意ください。

なお、写真3枚目では便宜上スパナ根元を持っていますが、これを10cm話したところで行えば今回の計算になります。

距離で大きく変わりますので、ご自宅の条件で換算してくださいね。私の体感だと今までは明らかに締め過ぎていました。樹脂漏れが怖いあまりこうなっている方、多いのではないでしょうか・・。しっかり加熱してから行えば、ギュギュっと締める必要はなかった、というのが私の結論です。

今のところトラブルなし 硬化鋼ノズルの場合も同じ? 

ということで最近この方法を使用してノズル交換をしていますが今のところトラブルはありません。フィラメントも漏れず快適です。そして最近新たな疑問もあります。それが最近購入した耐摩耗KaikaSノズルの増し締めについてです。そう簡単にねじ切れそうにないこのノズルも同じ温度、トルクでいいのでしょうか・・・?そう簡単に温度で柔らかくもならなそうですし、硬さを考えてももう少し強めに締めても良いんじゃないかという気がしています。

ただPhaetus公式では少なくともノズルの違いについて言及はなく、調べた範囲では違いはわかりませんでした。現実問題として今のところ問題がないのであまり神経質にならず同じ感じでいいのかな、とも思います。もし違いが判る方、いらっしゃったらまた教えて下さい。よろしくお願いいたします。

解決に時間を要したり、費用がかかったりするホットエンドやノズル交換時のトラブル、本記事が皆さんのトラブルを未然に防げれば幸いです。今回も最後までお読みいただきありがとうございました!