3Dプリンターで95式軽戦車を作成 輪ゴムサスペンション搭載 砂場で遊べます
ご紹介したTPU製の履帯を利用して、子供が遊ぶ戦車のおもちゃをFusion360を用いて設計し製作しました。動力はないので手押しですが、起動輪、誘導輪、転輪等の基本構成を踏襲しつつ、水洗い出来る用に輪ゴムを用いたサスペンション機構も搭載しています。末尾Youtubeもよかったらご覧ください。なお外観参考モデルは95式軽戦車です。ちょっと違うけど許して下さいね。ガルパンはいいぞ。
3Dプリンター製の履帯を使っておもちゃをつくろう
この記事は前回の「3Dプリンターで作る無限軌道」の続編になります。よかったら前回の記事もぜひどうぞ。せっかく履帯がちゃんと作れたので、もともと4歳児からリクエストのあった「砂場で使える戦車」の製作にトライしてみました。
戦車というからにはモチーフが必要です。子供が機構を楽しめることが目標ですのでプラモデルのように似せる必要はないですし難しいですが、やはりある程度出来よく作りたいですよね。また、動きを見るためにはある程度転輪があったほうがおもしろいですが、多いと作るのが大変です。
なお、無限軌道部分には当初から本記事下にある通り(かっこいいし、子供はそういうの大好きなので)サスペンション機構も入れる予定でしたがこれは実物を真似るのは困難なので独自設計することにしました。砂場で遊ぶためには水洗いできなくてはいけないですし、ばねなんかだと砂が入ってすぐ動作不良を起こしそう。何より複雑なものは私のスキルでは製作できません。
モチーフは95式軽戦車に
前記事でもある通り、事の起こりは家にあるガルパン劇場版を4歳児に見せてみたためなので、最終的に転輪4つの小型戦車として日本の小型戦車、95式軽戦車(福田号)をモチーフにすることに決定しました。ただ、3Dプリンター製の履帯は重みがないため全体として膨らんでしまう特性があり、また前述の仕様を満たすためサスペンション機構や縦横比等含め実物とは異なることを最初にお詫びしておきます。あくまでモチーフですので怒らないでください!
95式軽戦車は小型軽量、高速で移動できる第二次対戦中の日本の戦車です。他国戦車と張り合うような火力や装甲はないものの、歩兵と共に作戦行動を取りやすい利点があり、運用しやすい戦車だったようです。6気筒ディーゼル3人乗りで、後ろ半分はほぼエンジンですね。そのためシャフトを介して起動輪は前方になっています。時速45km出て250km航続があるのは立派じゃないかなと思います。
ただ調べて感じましたがこの戦車、後ろ半分以上?エンジンなんですよね。人が乗るスペースはすごく狭そうだし、騒音がひどそう。。
転輪は4つでサスペンションは単純なリンク機構だったとのこと。外観としては砲塔が車体の左(写真で向かって右)にシフトしているのが特徴の一つになると思います。その分主砲が右よりに付いていて軸に合うようになっています。
武装としては37mm主砲のほか、劇場版でも車体前方と砲塔の右後部に重機関銃があるのでそれはできる範囲で再現する事にします。まあ、4歳児が遊んだらすぐ折れると思うんですが・・・
転輪とサスペンション部分の設計
前回の記事で履帯と起動輪の噛み合わせは問題ないことがわかっているので、まずは一番大事な転輪とサスペンション部分を作ります。ある程度のストロークがあり、砂が混じってもなんとかなる程度の遊びを持たせつつ機能するサスペンション・・・。うん、難しい。
設計はいつも通りFusion360で行いました。色々考えましたが最終的にはTwitterに上げたようなスリットを車体に開けて、車軸がスライドするタイプのサスペンションにしてみました。95式オリジナルのシーソー型だと動きが少ないですし、独立して動かないので楽しくないというのもありますが、TPU履帯は重さがなく膨らみやすいのである程度転輪で押さえてあげる仕組みのほうが良いかなと考えました。
バネがない状態で動いているのが右のTwitterになります。履帯のテンションもかかっていないので滑らかです。この動画最後で裏面が出てますが、抑えパーツは輪ゴムがかけられるようにこの時点でなってます。誘導輪も頼りないですが、輪ゴムでテンショナーとして働くようにしてみます。最終的には全体で履帯を支えられるように、実物と異なり支持輪は大型化し4つになりました。パーツは何通りか作って実際に作りながらやっています。3Dプリンターがあるとちょっと変えて作りなおすというプロセスが自由なのでとても便利ですね。
輪ゴムサスペンションの実際
動きそのものの動画は最後のYoutubeをご覧いただきたいのですが、試作品をいくつか作って実際に輪ゴムをかけて試してみています。基本的には誘導輪や転輪のコンポーネントを外側に押し付ける力が働くように輪ゴムをかけました。素人発想のサスペンションですが、意外とちゃんと機能しますし、何より水洗いできて輪ゴムが切れたら交換するだけ、というお手軽さが1番の採用理由です。
当初は4色ボールペンなどのバネを使って〜等考えていましたが単純さを追求した結果がこれです。ただ弊害もあって輪ゴムをかけたり、メンテナンス作業ができるようにスペースが必要でした。そのため、この95式戦車は転輪部分等を含めやや腰高になっています。また全体の形状を考えてバランスをとり車幅もワイドになりました。広い心で許していただければ嬉しいです。動きについても大きな問題はありませんでしたが、履帯が動くのにある程度の抵抗が必要になるため、板の間では上手に履帯が回らなくなってしまいました。これは今後も課題になりそうなところです。
戦車ボディの作成
車輪部分の目処がついたので本体の作成に入ります。本体も同様にFusion360で作成していきます。モデリングがあまり上手でなく細かい粗がありますが、この戦車は面構成が比較的単純なので私を含む初心者でも比較的モデリングしやすいと思います。今回はフォーム形状は使用せず、ソリッドでのロフトや押し出しで主に作成しています。へたくそで参考にはならないと思いますが、自身の覚書を兼ねてご紹介させていただきます。
車体は基本のサスペンション部分を押し出して、そこにロフトで作った形状を載せているだけです。履帯のサイドカバー部分は別で作って結合しています。途中で作ってみて履帯をはめたところサイドカバーと引っかかったりしたため高さの調整等適宜行いました。基本形状ができたら修飾を加えていきます。基本的に平面で構成されているのでそこから押し出したり、曲面をスケッチで分割して作りました。排気管部分は履帯と干渉したため機能を優先して位置を決定しています。
主砲塔部分は別パーツで作りますが、重機関銃部分はボディから流用します。砲塔も基本形状をロフトで作製して加飾していきます。凝ったことをしてもへし折られる可能性が高いので主砲本体はなるべく簡単に作っています。なおハッチのヒンジ部分とくぼみ部分はある程度の再現をしました。37mm主砲は折れにくいようにちょっと太めですが手抜き感があります。
最後が全体図です。この方式の3Dプリント製履帯を使用する際の欠点としては、履帯自体が別パーツで且つFusion360上では円形なので履帯を装着したイメージ図を作成できない点が挙げられます。あくまで造形することが目的でPC上で鑑賞することは考えていない構造です。実は転輪部分のサイズやアームについては最終的に変更しており、ちょっと異なっています。
ところでこれのSTLとかって需要あるのかな・・・。
本体を造形 Polylite ABSを使用しました
目途がたったらいよいよ造形です。本体は実は2回作りましたが、地面に平行に置いて造形するのだとどうしても積層跡が目立ちますので、今回はモデルを傾けて造形しています。材料としてはおもちゃ向きだと思われる、新しく入手したPolylite ABSを用いました。Snapmakerを用いたABS造形の詳細についてはまた別記事で扱おうと思いますが、非常に使いやすいABSで、とても安定した造形が出来ました。安い材料よりはやや値が張りますが価値のあるフィラメントだと思います。
下面のオーバーハング部分は多少荒れますが、機能的にも問題ありませんし、なにより上面がきれいです。エンクロージャーのお陰もあり造形品質に問題は生じませんでした。本体以外の部品は適宜最適な方向で造形します。サスペンション部分は転輪と一体で造形すると時間短縮ができます。(下の写真は追加で作ったため通常の造形です)
具体的には積層1層分のクリアランスを支柱部分と転輪の間に設けることで転輪がサポートの代わりとなり、造形時に支柱の天井を支えてくれることになります。左のtweetではまだ行われていませんが、転輪部分にちょっと面取りすることで1層目のエレファントフットの影響を避けることができます。
ほかの部品も同様に造形していますが、本当に安定してABSの造形が出来ており、またサポートもはがれやすく使い勝手が良いです。部品を同時に複数造形しても乱れが少なく、むしろ小さい部品を一つだけ出力するほうが不安定な造形結果になりました。温度が下がり次ないうちに樹脂が来るほうがむしろトラブルの元な気がします。
ABSでも安定した造形です!
動作良好!是非動画もどうぞ
塗装していないのですが、実際ちゃんと履帯が起動輪とともに回転し動きます。モーターつけたくなるくらいです。抵抗がないと滑ってしまう難点は解決できていませんが、布の上であれば十分な抵抗があるので楽しく遊べます。砂場では履帯はうまく動きませんが、砂場の淵の部分なら動かせました。ちょっと腰高になってしまいましたが、フォルムとしては95式軽戦車!だと思っていただければ嬉しいです。
予定どおり水洗いできますし、輪ゴムや部品は壊れたら作り直せばいいのでおもちゃとしては非常に良いのではないかと思っています。4歳児からも無事合格を頂きました!!とても楽しく遊んでいます。まあすぐ色々壊すと思うのですが、そのうち自分で補修部品造形して勝手に直すように教育?していきたいですね(笑)
動きについては下のYoutube動画もぜひどうぞ。時々動画を上げているので時々チェックしてもらえると嬉しいです!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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