3Dプリンターで欲しいものを作ろう! 射出形成では作れない自作スピーカーが完成

2021年6月12日

Snapmaker2.0とフロントサラウンド用のユニット達を再利用して、スピーカーエンクロージャー(密閉型です)を作成しました。プラスチックで作るなんてとんでもない!と怒られそうですが、3Dプリンターを利用することでなかなか良いエンクロージャーが出来たのではないかと思っています。全部で5台のスピーカーが完成し、これで我が家でのDolby Atmos環境(5.1.2ch)が整いました!

はじめに

私は音楽や映画は大好きですが、全く専門家ではありません。今回の記事の感想は多分に私の主観が入っております。エンクロージャーづくりにあたって色々調べてみはしましたが不正確なところ等もあるかもしれません。あからさまに間違いがあればぜひ教えていただければ幸いです。音の良し悪しは主観の問題も大きいので、あくまで参考としてお読みいただければと思います。
なお、今回私が作成したのは密閉型スピーカーであり、元々のスピーカー容積が判明していた為、作りやすいものであると思います。

スピーカー作成に至る経緯

我が家ではもともとNIRO1000というフロントサラウンド黎明期になかなか評価が高かったフロント5.1chシステムがあり、10年以上の長きにわたり我が家のメイン音響として活躍していました。今回寿命が来てしまいこれを機に我が家にもリアルサラウンドを整備することにしたわけです。NIRO1000のスピーカーは流石Nakamichi直系という感じで、本当に侮れない心地よい音を出してましたし、愛着もありました。

しかしスピーカーの素性が良くともいかんせん専用品。バラで運用することもできなければ普通のアンプと接続もできません。多分1年前の私なら「仕方ない」と捨てていたところですが、今の我が家には3Dプリンターがあるではないですか!ということで「ないなら作る」の精神で、エンクロージャーを新たに作ってやろうと考えました。

作成に当たって用意した物品

今回作成に使用したものは以下です。当たり前のものもとりあえず入れておきました。
・・・結構ありますね

  • スピーカーユニット一式(元々あった、ツイーター3ch分とミッドウーファー5ch分)と吸音材
  • 3Dプリンターとフィラメント(我が家の場合はsnapmaker2.0 と Polyterra PLA グレー 全部で3kg)
  • スピーカー側ターミナル 5セット(amazon購入)
  • 内部配線用のケーブル(車用のエーモンのもの amazon購入)
  • スピーカー組み立て用のネジ一式(元々のボックスから流用、あとはホームセンターで購入)
  • AVアンプと接続するケーブル 30m(カナレ 4S6クリーム色を使用)
  • ケーブルとアンプ、スピーカーを接続するためのバナナプラグ(±1セット2個xアンプとスピーカー側2セットx5ch=20個)
  • 壁に取りつけるための固定用の金具(amazon)
  • 内部配線用のハンダとハンダゴテ
  • 設計用のソフト(Fusion360)
  • 計測用のノギス

使った物品のamazonリンクを一応貼らせていただきますので、もしよかったらご利用ください。

ユニットの取り出しと計測

我が家の場合は元々のスピーカーを解体するところからでした。分解してユニットを壊さないよう取り出します。うちのスピーカーはフルレンジ+コンデンサー付きツイーターでした。元々入っていた吸音材もそのまま流用します。ノギスを使って各所の寸法を測っておきます。せっかくならシンデレラフィットを目指したいですからね。また、元々のスピーカーボックスの寸法も測っておき容積を出しておきます

エンクロージャー設計と造形

せっかくなら良い音で鳴らしたいです。・・・プラスチックで作る時点で怒られそうですが、3Dプリンターならではの特性を最大限活かすことにしました。私が意識したのは下記の点です。一応色々考えたのですが素人なので浅いと思いますし、間違っているかもしれませんので悪しからずご了承ください😅

  • 密閉型という基本構造と容積は元と揃える
  • 壁は厚めに、ジャイロイドインフィルを使って木材の特性に似せ、共振予防のため不等厚にする
  • 定在波軽減のため面が向かい合わない5角形に、内側は奥行き方向にもテーパーをつけ背面は曲面にする
  • なるべく一体成形にして構造的にも強くする

Fusion 360を用いて計測した値を落とし込みエンクロージャーを設計します。なるべくぴったり合うものを作りたかったので形状はちょっとずつ修正しました。おさまりがよく、ユニットから後ろに向かって出される反対位相の音が定在波となりにくいような構造にしたつもりです。またツイーターがないフルレンジ一発のほうはユニットを45度傾けた形にして全体的に少し小さくなりました。なおスピーカーターミナル部分を含め、オーバーハングは45度です。

なお、我が家のsnapmaker2.0 A150の造形可能サイズはあまり大きくないので、容積を確保しつつギリギリに収まるように工夫しています。もし必要があればSTLファイル等お渡ししますが、スピーカーユニットが上記のように特殊なので需要はなさそう(笑)

そんなイメージで出来上がったのがこちらになります。ねじ止めする本体と蓋の間にはパッキン代わりのTPUを挟みました。意外に重みがあり、かつ3Dプリンターで1個(箱と蓋)造形するのに24時間以上掛かりました。
勿論、失敗したくないのでターミナル部分等、いくつか試作を作って問題がないことを確認しながら進めています。polyterra PLAは割れにくいため後からねじを入れたりするのには非常に便利です。下記のnoteを参考にさせていただき、太いねじが入る穴は6角形としています。

作ってみるとかなりがっちりしています。プラスチックではありますが、一体形成なこともあり強度は十分。外郭とジャイロイドインフィルによって、射出形成ではまねのできないエンクロージャーになったと思っています。素材の弱みを3Dプリンターの強みで打ち消している感じです。
あ、一連の流れのtwitterもよかったらリンク先をご覧ください。はるかぜポポポ氏の役立つnoteも3Dプリンターユーザー必見だと思いますよ。

最後は出来上がったエンクロージャーにパーツを組みつけ、必要に応じて内部配線をはんだ付けします。2wayはコンデンサー部分や場合によってはネットワークをどうするかなど大変なのですが、今回はそのままそっくり移植するのではんだ付けするだけです。接続ケーブルも全部整えれば完成です。天井へは電動ドリルとネジ(タッピングネジとネジ+ワッシャー+ナット)などを用いて固定しました。転落防止にワイヤーも別につけておくのがベターです。どの程度でPLAが劣化したり、ネジが緩んだりするのかはわかりませんが、可動はしないので定期的に見守っていこうと思います。

作ろうと思ったのが5月頭、出来上がりが6月1日なのでなかなかのスピード感かな?

このnoteは必見ですよ!

使ってみての感想

さて、これら5個のスピーカーはもちろん一つ残らず使用しています。センタースピーカーとサラウンドスピーカーに2weyを、フロントハイト側にフルレンジ1発を使用し、元々のサブウーファーと組みわせることで我が家では5.1.2chのDolby Atmos対応の音響が完成しました。あまりのんびり楽しむ時間がないのですが、今のところプラスチックエンクロージャーのネガは感じません。音量をかなり上げても全く問題なく、表面を触れたときのエンクロージャーの振動も軽微です。

フロント2本がB&W707S2なのでサラウンドを構成した時の音色のずれが心配ではありましたが、センタースピーカーとの繋がりも問題ない印象です。(これにはやはりAVアンプの力は大きいと思います)もちろん、重量1kg程度の小型密閉型スピーカーなので低音はあまり出ません。サブウーファーとのクロスオーバーは120Hz程度にしています。NIRO 1000の時から思っていましたが、本当にこのユニットはいい音出します。どこのどんなユニットなのか、NIROもなくなってしまった今ではわかりませんが、帯域を欲張っていないのがよい結果に結びついているのではないでしょうかね?
サラウンドではサブウーファーがあるので、ある程度低音はそっちに任せたほうが全体としてはいい気がします。ちなみに2chオーディオは今後もB&Wが担当しますよ。
(※私は完全に素人です。頑張って作って満足したプラセボ効果は否定できません。)

よろしければB&Wのスピーカーレビューもご覧いただければうれしいです。

ちなみに我が家のアンプは1080という最近型落ちとなったヤマハのAVアンプですが、結構細かく自動補正してくれる印象があります。実はとても程度のよい中古を6.4万で購入したもので、比較的安上がりにすみました(笑)長持ちしてくれことを祈るばかりです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。欲しいものを自分で作れるという、3Dプリンターの醍醐味を改めて味わった気がします。今後ともtwitter、当ブログをよろしくお願いいたします。