多ドライバーを活かし粒の立った音が魅力の優等生 SOUNDPEATS H3 レビュー
DD+2BAというハイブリッド多ドライバー構成のイヤホン、SOUNDPEATS H3。前回のキャラ付けがはっきりしたAir5 Proとは一転、普通に優等生のイヤホンだと思います。事前にネットで見た、5-6月頃のレビュー(厳しい意見が多い)と同じイヤホンなのコレ?という感じがしました。ファーム更新で良くなったなら素性は良かったのではないでしょうか。
過去は分かりませんがこれから買うならいい選択肢だと思いました。ちょっとデカいけど。ということでSOUNDPEATSさんとのメーカータイアップのブログ記事になりますが、レビュー内容自体の検閲は受けておりません。
はじめに
今回、再びSOUNDPEATSさんからH3という現時点でのフラグシップイヤホンを試しませんか?とお声がけいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。また、前回のAir 5 Proのレビュー記事もぜひご一読いただければ幸いです。なにせ電子的な部分の仕様ってほぼ同じなんですよね。ということで機能的な部分は前回のブログと被ってしまうためある程度割愛させていただこうと思います。
言い換えればAir5 proとの価格差5000円はそれ以外の部分に使用できる、ということで個人的にはとても興味がわきお引き受けしました。実は私、普通のダイナミック型(DD)、バランスド・アーマチュア型(BA)、若しくは多BA型、平面駆動型などイヤホンは色々使ってきましたが、DD+2BAというハイブリッド構成のイヤホンは初めてなんですよね・・・。結論としては手持ちの平面駆動型と近い印象でした。良かったらオーディオ関連のブログ記事もぜひどうぞ。ちょっと古いですが私自身が気に入っているコスパの良い平面駆動型イヤホン、PLA13の記事がこちらになります。
H3のドライバー構成は1DD+2BA 3ウェイ構成の様子
前述のとおり、SOUNDPEATS H3の最大の特徴は、「1DD+2BA」のハイブリッド・トリプルドライバー構成です。ところでダイナミック型(DD)とバランスド・アーマチュア(BA)ってわからない方もいらっしゃいますよね・・・?平たく言えばダイナミックは一番よくあるスピーカーの形のもので、バランスドアーマチュアは補聴器なんかに入っている小型のドライバです。オーディオテクニカのサイトがこの辺はすごく詳しいのでよかったらこちらもぜひ。
バランスドアーマチュアは振動する部分も含め金属製です。薄っぺらい説明になってしまいますが、小型できらびやかな音がします。ただ単体では周波数帯のレンジが狭くて、音も小さめになります。
SOUNDPEATSに確認したところ、DD型で低域を担当(ウーファー的役割)し、2基のBA型も同じものではなく別のもので中高、高域をそれぞれ担当しているとのことでした。それぞれネットワークがあるとのことで本格的です。DSPでクロスオーバーも制御しているのかな・・・
なお、多ドライバーはセッティングがとても大事です。それぞれの個性をどうバランスとるかがカギ。


画像はどちらもリンクのオーディオテクニカさんのサイトより転載しています。
このため価格帯も上がり、このイヤホンの価格は定価ベースで1.5万です。それなりにこだわりがある人向けの商品ですね。高級品ですが、トータルで見れば絞るところは絞った結果、この値段で出せたのでは、とも言えます。Air5 Proと電子部分の共通化がある程度できているのもコストダウンできた理由かもしれませんね。タイアップでクーポンもいただきましたのでご確認ください。有効期間は2025/10/04 00:01JST~2025/10/31 23:59JSTとのことです。
製品外観
ということで製品外観です。全体的な印象は変わりませんがAir5 Proより全体に大柄です。加飾付きのプラケースで開けるとシボ感のあるつや消しプラがあります。悪くないですが、個人的には加飾はあまり好みではないです(笑)金色じゃなくて銀色でいいんじゃないかなと・・・。
箱もちょっと大きめでしっかりしていて、高級感の演出がありました。カバーは半透明でちょっと透けて見えるのはカッコいいです。ちょっと傷付きやすそうですが、まあ、ケースですからね。ケースを開けるとイヤホンのバッテリー残量、ケースを閉じたときにはケースのバッテリー残量がLEDの色で表現される点はAir5 proと同じ。







イヤホンは棒がついているタイプではなく、IEM型です。大きさもそれなりにあります。私の耳にはばっちり合うサイズでフィッティングに問題はありません。結構強力なマグネットで保持されており、ケースの深さもちゃんとあるので社外品のイヤーピースも問題が生じることはないと思います。
イヤホン本体を見てみると、全体がクリアのケースに収められており見目は良いです。タッチに反応する部分も大きめでタッチミスはしにくいデザインですね。加飾はやはり個人的にはあまり好みではないですが、嫌みではないです。充電端子は皮膚に当たらないようにちょっと引っ込んだ位置にあり良好です。端子の中央にはマグネットが見えます。当機の特徴であるハイブリッドドライバーもよく見えて、イヤホンの前方、耳の一番近い部分に2基のBAドライバーが見えます。ちょっと離れた位置にウーファー担当、12mmのDDドライバーが見て取れます。





ノズル部分もちゃんとしていて、脱落防止のローレットがちゃんとついている金属製です。これは金色でも渋くてカッコいい!形もAir5 proと異なり円形になっています。全体的に有線のIEMと似通っており、イヤーピースもIEM用をつけられるようにしたのではないかと思います。
私は最終的にFinal Eのイヤーピースを選択して使用しています。イヤーピースも色々な種類があって、人それぞれ好みがあるとはおもうのですが、このイヤーピースはニュートラルなので万人向けではないかと思います。お値段も高くないですし。ミックスサイズのものがあるので、サイズがわからない方はまずこれを買うといいんじゃないかと思います。外耳道は左右サイズが違うことだってありますよ。。
SOUNDPEATS H3 スペック表 チップはAir5 Proと共通
一応簡単にスペック表も載せておきます。電気回りは基本的にはAir 5proと共通なので長所や短所もそのまま引き継いでいます。前回のブログも併せて読んでもらえると嬉しいです。
仕様を考えると個人的には前回同様、aptXを中心としたSnapdragon soundでの利用がメインな方向けなイヤホンではあると思います。LDACはサポートしていますが、LDACをオンにすると失うもの(マルチポイント、低遅延モード)があります。また、この切り替えにはイヤホン側の再起動を伴いますのでいったん接続が切れるなどの挙動がありますね。なお本ブログでも基本的に音の評価はSnapdragon Soundで行っています。
とはいえ私はあまりBluetooth のコーデックを重視していません。コーデックの違いなんて、スピーカーの違いと比較すれば微々たるものです。特にこういったTWSの場合、静かな室内でゆっくり聴くシーンは少ないと思いますしともすればAACでも別にいいんじゃないか、と思っています。普通に曲を聴いていてこれAACだな、とか流石LDACだ、とか思いませんよね・・・?元の音源は圧縮率が高いとシンバルとか高音域中心にべっちゃりした音になってしまいますが、AAC以上であればそう不満はないんじゃないかな、と考えています。
項目 | 仕様 | 備考 |
---|---|---|
製品名 | SOUNDPEATS H3 | |
ドライバ構成 | 1DD (12mm PU+ウール複合素材) + 2BA | ハイブリッド、3ドライバー |
ハイレゾ | LDACとSnapdragon Soundで対応 | |
チップセット | Qualcomm QCC3091 | |
対応コーデック | SBC/AAC/LDAC/aptX/aptX Adaptive/aptX Lossless | aptX系とLDACは排他利用 |
ANC性能 | 最大 -55dBとのこと 外音取り込み対応 | |
低遅延モード | 60ms | aptX系のみ |
マルチポイント | 対応(2台) | aptX系のみ |
バッテリー (単体) | 最大約7時間 | aptX,ANCオンだと4時間強くらい? |
バッテリー (ケース込) | 最大約37時間 | |
急速充電 | 対応 (10分充電で約2時間再生) | ワイヤレス充電は非対応 |
防水性能 | IPX5 | |
重量 (片側) | 約6g |
ワイヤレス充電非対応、LDAC対応に制限があるなどの弱点も共通となっていますが、これはつまり差額5000円分のリソースを他に割り振れる、ということでもあります。ということで音、イヤホンですからね。こいつ音がいいんですよ。5月発売後いったん販売が止まっていたり、初期ユーザーの評価が微妙だったりと前評判上は若干の不安があったのですが、少なくとも私のもとに来た実機は全然問題ない、というか素晴らしいです。接続性の問題も、少なくとも私の環境(Snapdragon sound対応 スマホ or AAC接続スマホ、ipad)では何ら問題はありません。一般的な家の端から端、1階と2階くらいでは接続は安定していました。ただこれは母艦となるスマホ等にもよるとは思います。
ということで音の評価に参ります。なお、私はイコライザーは使わない状態での評価です。
音の傾向はナチュラルテイスト BAの粒だった音が魅力
一言でいえば非常にナチュラルテイストのバランス重視型のイヤホンです。そういうところも含めてIEM的な感じ。見た目と同じ音がする、という感じですね。電子的には共通しているAir5 Proとは明らかに異なる味わいです。少なくとも私の手元の個体、ファームウエアV0.4.9のものはパッと聴いてわかる分解能の高い中高音を持っており、BA入っているな、と感じることはあります。でも別に浮いているわけではなく、つながりは自然です。
おそらくですが比較的BA2基の担当音域は広く、12mmのDDドライバはウーファー的な役割、2基のBAでミッドレンジ(ミッドハイ?)とツイーターを担当、という感じではないかと思います。ボーカルの帯域をクロスオーバーから逃しているんじゃないかな・・・。
低音の量感は大きめ、中高音のきらびやかさもしっかりあり原音忠実、締まった低音よりの色付けですが派手すぎではないです。ウーファー付きな感じなので低音よりではありますが、普通に優等生でどちらかというと分析的な音ですね。少なくとも僕が今まで買ってきた完全ワイヤレスイヤホンの中では一番きれいに鳴ります。どうしてこれが評価分かれたんだろう?どんな味付けしちゃってたのかな・・・とむしろ初期ファームに興味が湧きました(笑)
私の手持ちだと、前述のとおり平面駆動型のPLA13と似た系統の音がします。PLA13は私が気に入っているイヤホンで、とてもバランスが良くいい音するのですが、このH3はこれの低音を強化した感じ。音場の広さというか一体感はPLA13に及びませんが、わかりやすい高音質です。
逆にBA採用により中高音の解像度が高くなったため、圧縮音源のアラがこのイヤホンだと普通にわかってしまいます。元の音を再現してしまい、ごまかしてはくれませんのでご注意ください。音が悪かったらソースの問題を考えましょう(笑)。(これは個人の感想になりますが、最近サチュレーションかけすぎて微妙な音源、ないですか・・・?飽和している感じがするやつ。)




イヤホンそのものも比較してみました。3つのうち左端はEDX liteという1000円でおつりがくるお安い有線イヤホンです。1000円以下クラスではまとまった音にはなりますがPLA13や本機との比較対象にはなりませんが、小型軽量で扱いやすいサイズなので置いてみました。やはり本機は厚みがあります。これを付けて運動してみましたが、私は元々耳も大きめですし、IEMのサイズで困ったことは無いのですぐなじみました。運動時の安定性も問題ありませんでしたし、重さも気にならなかったです。
ノイズキャンセリングと外音取り込みも強調しすぎないスタイル
ノイズキャンセリングは普通に良いと思います。Air5 Proのレビューでも書きましたが不足を感じることはないのではないでしょうか?ちょうど機会があったので、新幹線や高速バスなどでも使用してみましたが、音楽を再生してしまえば外の音は気になりません。Air5 Proとの差は私にはよくわかりませんでしたが、いずれにせよちゃんと静かです。Air5 Proと同様、設定項目は色々ありますが、適応型のままでいいんじゃないかと思います。



外音取り込み機能の味付けも音同様変化しており、若干強調される感じはまだありますが、Air5 proと比較すると明らかにニュートラルな外音取り込みです。風切り音はノイズキャンセリングでは比較的抑えられていますが、Air5 Proもそうでしたが外音取り込みですと音がそれなりにうるさいです。イヤホンが大柄なので風を巻き込みやすいのもあるのではないでしょうか。強風の日に野外で使う場合はトランスパレンシーは実用的でないと感じました。ここは数少ない欠点になると思います。
基本的な仕様もAir5 Proを踏襲 LDACでは要注意
アプリ周りの仕様も基本的に共通です。前回のブログもぜひ参照ください。LDACをオンにするとマルチポイント不可という部分も同様となっています。Windowsにも接続してみましたが、LDACオフの状態であればマルチポイントも問題なく働き、aptXで接続が可能です。ゲームモードをオンにすれば遅延も最小限となります。PCに接続時もタッチでボリュームコントロールも出来ます。必要十分です。
もちろんWindowsで接続した際の音質も先にお話ししたようにとても良いです。ニュートラルよりなのでシーンやソースは選ばない感じです。非常に優秀でクラシックから映画まで楽しめると思います。前述しましたが噂ではファーム更新で音が変わった、と聞きますが私の手元に来た個体は既に最新の状態でした。やっぱりこれが低評価だったとすると、ソフトウエアの何らかのミスかその個体の不良を疑いますけれどね・・・。ディスられる部分、少なくとも音に関して言えば私はありません。



そうそう、アプリにはバグと思われる挙動がありました。上記で私が普段使っているAir5 proとH3が同時に表示されていますが、2つのイヤホンを1つのスマホで使った場合の挙動がおかしいです。
2つのどのイヤホンを選択しても、おそらく先に選択した一つのイヤホンのプロパティしか表示されません。後から選択したイヤホンを使用していても初めのイヤホンを切断しないと設定が変更できないので改善頂きたいと思います。まあ、2つつないで使うシーンは聴き比べくらいしかないですけれど・・・(笑)
また、操作のカスタマイズには現状結構制限があり、ノイズキャンセリングのon/offの間にトランスパレンシーを挟まなければいけないなど上手く機能していない印象もあるのでこの辺りはアプリのバージョンアップを望みたいと思います。
他の妥協点は?
上記で出したように、当機の主な妥協点はLDAC関連と、アプリ等ソフトウエア回りに小さな課題がある程度です。他には何かないか、と言われればケースなしでのON/OFFが不可であったり、装着検出の機能がないこと、ANCオン、AptX接続で4時間くらいのバッテリーでしょうか。この点もどちらもAir5 proと共通ですね。あったとしても私は使わないですが、無線充電もない機能の一つです。
あとは大きさでしょうか。ケースもやや大柄ですし、IEMタイプのイヤホンなので人によっては耳に合わない可能性はあります。他のIEMが大丈夫であればまず心配はいりませんが、所謂うどん型が好みの場合は選択肢から外れるかも。ただタッチのしやすさという点ではうどん型よりもタッチしやすいと感じました。
複数の記事で言っていますが、個人的にはやはりこのクラスのイヤホンが「電池劣化で使い捨て」というのはもったいないと思ってしまいます。有線ならずっと使えるのに・・・。これ、なんとかならないのかなぁ、とは思いますね。
まとめ 有線のちょっといいイヤホンにも負けてない
ということで、やはり音ですよ、音。少なくとも現時点では価格を考えてもかなりハイレベルなのではないでしょうか。1万円の有線平面駆動型イヤホンと勝負できる音なのは素晴らしいです。キャラを抑えめにした優等生でバランス重視。低音はやや強めでウーファー付きのスピーカーで鳴らしている感じの、ちょっといい有線イヤホンとも勝負に耐えうるTWSだと思いました。
勿論それに伴うコストはかかっており定価ベースで1.5万円は私の感覚では高級品です。万人にお勧めできるかと言われると価格的にきついかも。一方で数千円クラスのイヤホンで音楽聴くのが好きになった方が、次にステップアップするには非常にいいイヤホンだと思います。この上に行くならもう3万コースじゃないかな・・・多分。有線なら同額以上出すともうワンランク上の世界が見えるかも?ってかんじです。
音って好みですし主観の問題なので、ともすれば「みんな違ってみんないい」世界なのですが、価格に見合った価値を提供できるかは非常に大事だと私は思います。例えば私の家で断トツいい音なのはこれ。マジで音がいい。私のリファレンスはずっとこれです。ただ、高いです。
逆に自分で作って満足しているのはこれになります。そりゃあ、子供には酷評されましたが、これもすごく楽しんで作っているしいい音だと自分では思っています。筐体自作、コーンだってセットで数千円です。上のスピーカーと比較すること自体が間違っているけど、音ってそれくらい、好みでいいと思うんですよね。
ということでこのイヤホン、値段も総合してやっぱりいい音です。スピーカー部分にコストを割り振っていると思われ、音重視なのは確かですね。弱点はLDAC周りだったりアプリや装着センサーなど枝葉部分になります。
もっともハイブリッド構成の多ドライバーって好みもあって、色々試した方が最終的に単ドライバーに戻る場合もあります。音の統一性というか、一体感とそれに伴う艶感?は単ドライバーに分があるとも思うのですが、すごくいい単ドライバーのイヤホンはなかなかお高いです。
そう意味でも本機はTWSの多ドライバー入門機としてもおススメ出来そうです。ハイブリッド構成の世界へようこそ!ですね。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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