Fusion360でヘリカルギア(はすば歯車)を作ろう スラスト力と噛み合わせには注意

Fusion360では簡単にギアが作成できますが、少し手を加えてはすば歯車を作りました。減速機を作りたいのですが一筋縄ではいかず、満足いくものを作るのは時間がかかりそうです。これを契機に色々調べてみたのでご紹介させていただきます。はすば歯車、スラスト力(軸方向力)に注意が必要ですが上手に作れれば高トルクに耐え安定化、静音化も出来そうです。

ヘリカルギア(はすば歯車)とは?

歯車にはいろいろな種類がありますよね。一番馴染みがある基本的なものは平歯車(スパーギア)だと思いますが、Fusion360ではこの平歯車、内歯車(インナーギア)とラックギアは無料のアドオンであるFMgearsを使用して比較的簡単に作成できます。

FMgearsを用いた基本的なギアの作成方法は以前ご紹介させていただいた当ブログ記事もぜひご覧下さい。

一方今回のヘリカルギア(はすば歯車)は平歯車の歯が螺旋状にねじれた形をしている歯車になります。この歯車では、一度に噛み合う歯が複数になるためより大きなトルクでも使いやすくなり寿命が長くなるほか、平歯車と比較して振動や騒音が低減できると言った特徴があります。騒音低減については1枚分歯をずらす(歯数10なら36度)のが効果的なようです。

一方で、螺旋状の歯車が回ることで次項で説明するスラスト力(軸方向の力)が発生するという特徴があり、ちゃんとした設計には綿密な計算などすごいノウハウがあると思われますが、説明できません・・・。詳しい方々がいらっしゃいましたらぜひ教えてください(笑)なお、プラスチック製はすば歯車の騒音低減についてはこちらのサイトを参考にさせていただきました。

スラスト力の打ち消しについて ダブルヘリカルギア(やまば歯車)もある

はすば歯車を作る上で避けて通れないのが先に触れたスラスト力です。回転方向で方向が変わりますが、歯が斜めになっているため歯車そのものを上下方向に動かそうとする力がかかることになります。プロペラでヘリコプターが持ち上がるのと原理的には似ています。これに対応するために強いトルクがかかる部分は浅めの螺旋に、トルクが少ないところは深い螺旋にするなどの工夫がなされることが多いようです。螺旋の向きを反転する(3Dプリンターとしては左右反転するだけですが)ことで打ち消すなどの手段があります。

代表的な手法の一つがダブルヘリカルギア(やまば歯車)です。これは一つの歯車の中で中間の高さでヘリカルギアの回転方向を反転させたギアで大型機械で使用されることが多いです。ある程度のサイズが必要なのと、強度を確保する必要がありますが、このギアであれば軸圧力を単体で打ち消すことができます。

強度等は置いておけば、Fusion360でヘリカルギアを作ったのち、複製反転して結合するだけで簡単に作成できます。

Fusion360での作り方とパラメータについて

Fusion 360でのヘリカルギア制作ですが、仕様で普通の平面から押し出す際にはねじれを加えられません。まずは基本の平歯車を作ってから、それを元にヘリカルギアを作るのが一番簡単だと思います。

まずFMgearsで平歯車を作ります。0.4mmノズルを使用する場合はモジュールは1.2くらいにしておくのがいいと思います。歯車の数を決めれば自動的に直径が決まって歯車ができます。しかし、これでできるのはあくまで平歯車用の歯車です。初期設定でヘリカルギアを作ると私の環境では硬くて滑らかになりませんでした。実際に作りながら色々試しましたが以下の設定くらいが私のおすすめです。3Dプリンターの機種や設定によって変わると思いますので参考程度とお考えください。

  • 軸の部分は穴でくり抜くのでゼロに
  • クリアランスは0.3以上にする
  • 積層で干渉しないように歯は薄めに
  • 厚みは後でつけるので気にしなくてOK

次に出来上がったギアを利用したスケッチを描きます。ギア平面でスケッチを開始して軸方向に厚み分、3Dスケッチでパスを書いておき、ギアの平面をスイープします。スイープの際にひねりを加えられるので任意の角度でひねります。私は歯1つ分をひねるようにしたかったので、歯数10なら36度、歯数40なら9度にしました。なお、かみ合うギアはねじる角度をマイナスにすればOKです。新規形状として押し出せば完成です。

このパラメータでかなり噛み合わせが変わります。3Dプリンターで実際に作ると分かりますが、噛み合わせが硬ければさらに調整をお願いいたします。

また、3Dプリンターで造形する際にはスライサー設定で初期レイヤーのサイズ調整を行っておきましょう。これはElephant foot(象の足)と呼ばれる1層目の樹脂をビルドプレートに押し付けた際の広がりを補正するために行います。これがあると底面のギアが大きくなってしまい干渉が増えます。
形状として工夫するなら、Fusion360で底面側を面取りするのも手段の一つです。

寿命をそんなに考えなくてよければ材質は何でもいいですが、個人的には良く使うPolyterra PLAは柔らかすぎるので避けたほうがいいです。よくあるカチカチのPLAのほうが向いていると思います。

ダイソーモーターと組み合わせた実際の動き(音量に注意)

実際に作成して回してみました。非力なダイソーのUSBモーターを使用していますが、当然ながら歯車の抵抗ははすば歯車の方が大きく、回転数が若干遅くなっているように思います。これは複数の歯が同時に噛み合うという性質上仕方がないのかなという印象です。スラスト力については大きな問題にはなっていないようで一安心。

ちなみにこれは減速比1:4の歯車を複数重ねることで理論上1:256になっています。最終的にはターンテーブルのような感じにしたいのであと1ー2個くらい足すとゆっくりと回る、はず。

なお騒音も少なくなっていますが回転数の違いか、はすば歯車のおかげなのかは分かりませんでした。基本の平歯車と並べてみるとちょっと静かに思いますが、十分うるさいです(笑)下に動画を置きますが、音量大きいのでご注意ください。

はすば歯車の減速機構
平歯車による減速機構

歯車 楽しいですよね

うちの4歳児も歯車が好きです。普通の歯車でも楽しんでいますが、こういう変わった形の歯車も噛み合うところをみると色々思う所があるようで反応を見ていて父としてもも楽しいです。私は元々工業系?の人間ではないのではすば歯車、とても興味深く作ることができました。モーターもダイソーですぐ買えるものですし、Fusion360も趣味利用は費用がかからないので、興味のある方はぜひ作ってみてください。
個人的には以前ご紹介したTPU製のベルトと一緒に使ってみたいなとも考えています。

それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!