医学や健康についての最新の知識を調べる方法 3Dプリンター由来の UFPやVOCなどについて調べてみよう

新型コロナウイルスの情報等にも応用できる、私たち一般人がコストをかけずに、インターネットを用いて最新の知見にアクセスする方法の紹介です。今回はpubmedを用いて3DプリンターのUPFやVOCに関わる知見を収集するプロセスを通して、最新の知識(論文など)を入手する方法をブログにしました。意外と知られていないようですし、使える範囲は非常に広いのでぜひ使ってみてください

はじめに

病気や薬、日進月歩の世界では日々知見がアップデートされています。最近だと新型コロナウイルスが良く取り上げられますが、3Dプリンターも最先端の機械であり、まだ不明な点が沢山あります。私が使用しているSnapmakerを含むFDM方式の3Dプリンターでは、熱でプラスチックを溶かしながら造形する際に発生する超微小粒子 UFP(Ultrafine particles)や揮発性有機化合物 VOC(Volatile Organic Compounds)が人体に健康被害を起こす可能性が指摘されています。とはいえ、どんな空間で、どの材質や温度で、どの程度の濃度、どの程度の時間暴露されたらどんな影響があるかはまだまだわかっていません。また、これらの情報を日本語で調べようと思ってもほとんど出てきません。ちょっと見た中だとNature3Dさんのページのとある論文の解説が一番読みやすいと思いますので見てみてください。

そもそも健康被害を起こす可能性は日常至る所にあり、タバコやアルコール、バーベキューの煙は勿論、ちょっと焦げた食べ物だって健康被害を起こす可能性があるわけで、正確な知識を身に着けて自身で判断する必要があります。一方的な決めつけは論外ですし、批判も弁護も科学的であるべきですよね。

また、「知識は古くなります」。今この時点で正しい情報が、未来に正しいとは限らないんです。昔懐かしいものがよいというのは、科学の世界では通用しません。必要な時に必要な情報を調べる能力がとても大切だと思います。ということで今回は最新の知見を調べる方法の解説です。

用意するものは特になし IDや登録も不要

素晴らしいことに、概要を見るだけであれば、何も必要ありません。ネットに接続できれば無料で、登録も不要で検索ができます。調べる内容は英語になってしまいますが、今は無料で精度の良い翻訳ができるので言語の壁もほとんどありません。今回ご紹介するwebサイトは下記の3つだけです。最初のものはGoogle Scholarも有用だと思いますし、翻訳はGoogle翻訳でもOKです。
下のリンク開くとそれぞれタブが開きます。

2つ目の出元確認は意外に重要です。簡単に言えば調べた記事がどの程度有名なのかを確認します。今回は無料でインパクトファクター(IF)を確認するために使います。インパクトファクター??という方も多いと思いますが、これは文献が載った本の影響力を示す数字です。優劣を示すわけではないですし、個々の文献の質や価値を必ずしも反映しませんが、ざっくり調べるなら数字が高い本の文献を参照するのがいいと思います。

3は日本語で読むためのツールです。方言も訳してくれると話題になったDeepLを記載しました。英語がそのまま読める方でも、専門用語は難しいですよね。DeepLは自分が確認した中では現時点で最強の翻訳機能を有していると思います。最近はChrome用のアドオンもありこちらも簡便です。

PubMedで検索 キーワードを入れてみよう

まずは検索です。サイトを開くと1枚目スクショのような画面が出てきます。シンプルな検索ならボックスにキーワードを入れればOKです。複雑な検索(and or 除外等含む詳細検索)はAdvancedを選ぶとできますが、今回は割愛します。

英語なので半角英数にして、スペルを間違えないようにしましょう。3Dプリンターについては「3D printing」がいいと思います。ただこれだけだと製品や3Dプリンターを使った病気の治療等色々出てくるので、「Ultrafine particles」や「Volatile Organic Compounds」といったキーワードや、放出という意味の「emission」、エアロゾル「Aerosol」や汚染「pollution」なんかを入れてみてください。

2枚目のスクショでは試しに2つ、3D printingとemissionを入れてみました。検索数が多い組み合わせでしたが、それでも219件しかヒットしませんでした。関係ありそうなタイトルが多くあり、まだまだこれから伸びそうですね。さて検索結果のスクショのみかたですが、1.2.3のところが比較的よく見るところです。

1が年毎の文件数で、スライダで古い文献をはじいたり、文献の種類を限定したりできます。3Dプリンター関連だと現時点であまり役立ちませんが、「Article type」を限定することでよりエビデンスレベルの高い文献を選ぶことができます。2がソート順です。標準ではキーワードにマッチすると判断されたもの順に並んでます。右のオプションで順序を変えられます。画像を参照くださいね。3は乗っている学術雑誌のタイトルの略と発行年が示されています。いくつか見ていると「Environ Sci Technol」や「Indoor Air」あたりは後述のIFが高く、3Dプリンター関連の文献が多くありそうです。

とりあえず冒頭1つめの文献を選んでみましょう。下のスクショ、Indoor Airの2020年の論文「Effect of nozzle temperature on the emission rate of ultrafine particles during 3D printing」が出てきました。1のところをクリックするとどこが出したものかがわかります。これは韓国ソウル大学校のものですね。ちなみに2のところで次の文献がみられます。また、ページをスクロールしていくと「Similar articles」「Cited by」のところに文献が並んでます。これにより近い文献や、この文献を参照にした別の文献を孫引きすることができます。目的に近いものがあったら確認すると手っ取り早いです。

なお、多くの文献では概要(Abstract)しか見られませんので簡単な内容しかわかりません。でもエッセンスがわかるのでちょっと調べる目的では十分だと思います。また、Freeで見られるものは3のところから読むことが出来る場合もあります。

学術雑誌のIFを確認

さて、IF(Impact Factor)ですが、先の通り、学術雑誌の一つの物差しと思ってください。IF何点、という感じで点数として呼ばれます。論文が引用された回数を掲載数で割ることで、学術雑誌の影響度がわかります。Twitterでいえばそのアカウントにリツイートが多いつぶやきが沢山あるかどうかって感じです。Twitterと同様、論文や雑誌の優劣がこれで決まる訳ではないですが、点数が多ければ質の高い論文が多い傾向にあるはずで、検索結果で興味を持った文献がどの程度の影響力のある雑誌の物なのかは見ておいたほうがいいと思います。

元々はWeb of ScienceのデータをもとにJCR(Journal Citation Reports)が出している値なのですが、普通の人がアクセスできません。今回は代替としてacademic acceleratorで見ることにします。まずは学術雑誌の名前が必要です。先ほどの文献だと略語ではないのですが雑誌の名前は長いことも多く、略称が使われています。略称表示の文献を選んで正式名称を見てみましょう。どの文献でもいいですが、下のスクショのように雑誌名をクリックすると出てくる真ん中を選んでください。正式名称がわかります。このスクショでは「Environmental science & technology」です。これをコピーして上記の academic accelerator で検索しましょう。

検索したスクショが下の物になります。Explore Moreを選んでください。ちなみに、ここでOpen Accessが「Yes」になっている雑誌は無料で全文読める雑誌になります。詳細画面になると、左側、もしくは右上のボタンを押すことでスクショ2枚目のような詳細が出てきます。すごく高機能なのですが、今回見るのは赤丸のところです。ここでIFがわかります。最近の物で評価するなら2 Year IFでいいかと思います。

3枚目のスクショ画面になりましたでしょうか?この雑誌はIFが9です。私の感覚だとかなり高いです。これは完全に主観なのですが、IF5点っていうと良い感じ、2点だとこんなもんかなって感じで、10点超えるとすごい雑誌です。なお、よく耳にする「Nature」だと、ここ2年のIFが50点とかいう化け物です。

英語が無理でも今はOK! 日本語に変換

ある意味一番大事なところかもしれません。読めないと困りますよね。上に挙げたDeepLはここ数年で認知されためちゃ頭のいい翻訳ツールです。深層学習を使って世界中の言語を読ませているとのことで、日本語だと方言でもある程度対応するほどのやつです。特に英語から多言語への翻訳は精度が高く、かなりの精度で自然な日本語にしてくれます。

最近は公式のChrome拡張機能で選択した部分をすぐ日本語にしてくれたり、テキストボックスだと入力した文章を英語に変換してくれたりします。英語変換はかなりいい感じで、わかりやすい日本語を書いたら、ほぼ手直しなしでいい感じのニュアンスの英語にしてくれます。正直怖いくらいの本当にすごいツールです。Chrome拡張を入れると下のスクショのように選択部分を翻訳できるようになります。もちろん、翻訳をしている以上、その情報がDeepLに渡っているはずなので読み取られるリスクはありますので自己責任ですが・・・。

調べるスキルを身に着けて、知識を身につけましょう

こんなこと書いといてなんですが、大事なことが一つだけあります。これら文献はインターネットでよく言われるところの「ソース」の一つですが、必ずしも正しいわけではありません。後から見たら間違っている場合も多々あります。ですが、ある程度数を見れば少なくとも傾向はつかめます。身の回りのこと、ちょっと気になったことをこうした手段で調べて知識を得るのはとても大事です。多くの物はある側面で見たものですが、それを集めることで大きな力になります。

なお、今回ちょっと調べた限りでは3Dプリンターの使用と健康被害をシッカリ明らかにしたものはなさそうでした。ですが、多くの文献ではUFPやVOCの量について言及しており、濃度を減らし、暴露量を少なくするのがベターだとは思います。今後どんどん知見が蓄積されて、わかってくることも多いと思います。

丸投げで申し訳ありませんが、この記事をもとに何を調べて手に入れるかは皆さん次第です。今回のようなスキルがなにかのお役に立てば幸いです。質問があれば教えてくださいね。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!