値段はすごいが実力もスゴイ!一体型3D スキャナー EINSTAR VEGA レビュー マルチに活躍できます

今回は前回のFreeCADブログでも利用しているオールインワン型の3Dスキャナ EINSTAR VEGAのレビューになります。最近購入したガジェットの中でも群を抜いてお高い、お財布にキビシイ機材ですが、実力もすごかったです。小物から実車まで実用的な懐の深さが素晴らしい。

EINSTARはSHINING 3Dのコンシューマー向けブランド

今回のEINSTAR VEGAはEINSTARとしては2台目、初めてのオールインワンタイプの3Dスキャナです。先行してPCと接続するタイプのEINSTARというハンディスキャナがあり、今回はPCレスで小物~大物まで一つでスキャン出来ることを売りにVEGAが発売されました。私はEINSTARはこれまで使ったことがなく、あまり知らなかったのですが、色々見るとトラッキング性能が高く、かなり高性能との事でした。

EINSTARはSHINING 3Dという中国の3Dスキャナメーカーのコンシューマー向けブランドで、会社自体は2004年に設立され昨年20周年を迎えています。メーカーページを見るとかなり専門性の高い製品(きっと価格もスゴイ)が沢山あり、歯科領域の製品もありますので、興味がある方はこちらもぜひ。日本語がある本家HPはこちらです。東京にも拠点があるほか、ドイツ、アメリカ、イタリアに拠点があるとの事です。

当ブログでは今までもREVOPOINT社の3Dスキャナを使った記事もありますし3Dスキャナは利用していますが、他社製、コンシューマー向けとして高価格帯のものも使ってみたいと考え今回VEGAの購入に踏み切りました。機種選定にあたってはTwitter(X)でもお世話になっているCapboltさんのお話が大変参考になりました。VEGAについても紹介されていますし、3Dスキャナの比較レビューがありますのでこちらもぜひご確認ください。

EINSTAR VEGAについて

ということで今回のVEGAについてです。私も実はオールインワンの3Dスキャナは今回が初経験です。値段のこともありこのVEGAは滅茶苦茶楽しみにしていました。レビューがこのタイミングになったのも色々遊んでいたからです。下にスペック表を入れましたが、2025年の今現在として基礎スペックが非常に高く長く利用できそうな印象を受けます。届いた実機はこんな感じです。黒い板状のものがキャリブレーションボードを斜めに保持する板なのですが、これ、バッグに入りません。マスコットは宇宙飛行士の鳥。

小さく細かいものから実車サイズの大きなものまでスキャンできるよう、2つの種類のスキャナが搭載されており、テクスチャ用の高解像度カメラと処理用のプロセッサ類、androidベースと思われるOSに大容量のメモリやストレージが組み合わされています。表面に見える小さいものは補助LEDライトです。実測で本体は544gで公称値よりやや重めでした。付属しているACアダプタは65WのPD充電器でUSB-C 2口のもので悪くありません。また私は早期購入であったため3脚が付属していました。こちらも金属製で以外にしっかりしたものです。付属品がしっかりしているのは嬉しいところです。まあ、価格が価格ではあるのですが。。

届いたパッケージには一通り必要な物品が入っており、ファブリック製のケースに収納されています。本体はシリコングリップ付きでその状態で収納できます。私の場合は三脚がついていますが、内容物は時期などでも変わるかもしれません。ただ、後述しますがキャリブレーションボードを固定する台はケースに収まらず使い勝手が悪い為私は自作しました。

項目仕様
光源HDモード 赤外線MEMS Fastモード 赤外線VCSEL
精度HDモード 0.05-3mm Fastモード 0.5-10mm
スキャンスピードHDモード 最大15FPS Fastモード 最大20FPS
アライメントモードフィーチャ、テクスチャ、マーカー、ハイブリッド
スキャン範囲HDモード: 100~350mm(バージョンアップで増加)
ファストモード: 350~1500mm
カラーカメラ48MP
ディスプレイ6.4インチ 2K OLEDタッチスクリーン
プロセッサ8コア 2.4GHz 詳細は不明
メモリ32GB
ストレージOS用32GB eMMC + データ用512GB SSD
サイズ・重量180x95x26.5mm 通常版: 535g
充電・バッテリー容量65W PD/PPS対応 5000mAh
インターフェースWi-Fi6 USB type-C(恐らく5Gbps)
ミラーリング機能アップデートで搭載
出力形式STL, OBJ, PLYなど
PCソフトウエアStarVision(i7、Appleシリコン推奨 32GBメモリ推奨)
VEGAのスペック メモリやストレージが大きいチップは何だろう??

私は本国の発売キャンペーンで購入しましたが現在はamazonでも購入が出来ます。正直値段を見てしまうと引かれてしまうと思いますが、30万円強もします。私もPCやプリンター以外でここまで高価な買い物をする機会はあまりなく、ただ色々やってみたいこともあったため清水の舞台から飛び降りるつもりで購入しました(笑)良かったら、Amazonリンクも見てみてください。

今回記事でお伝えしたいのは「こんなことが出来るよ!」なので基本操作などは当ブログでは割愛しますが、基本的にスキャン専用機であり、迷うところはあまりありません。スマホ等普通に使われている方であればすぐ使えるのではないかと思います。スワイプでメニューが出せますし、設定等についてはAndroidベースなのでそのあたりも使いやすさにつながっていると思います。

基本性能が高い! 最近のアップデートでかなり強力に

ということでまあ、とても万人にお勧めするものではないのですが、少なくともこの3Dスキャナーという分野に限って言えば「安くて性能が高い」ということはそうないのが現実です。技術が一般化して市場が成熟すればそういうモノも出てくるとは思いますが(昨今の3Dプリンターなんかはそうだと思う)3Dスキャナーについては難しいです。比較的お求めやすい当ブログでも紹介したREVOPOINTでも数万円はします。一体型のMIRACO(使用経験はないです)だと20万くらい。。

色々使っていますが、やはり性能は高いです。上の表を見ていただいても分かる通り、メモリは32GB、ストレージ512GBですからね・・・。スキャナ部分除いてもかなりの高性能です(笑)。個人的にはOS用ストレージとデータストレージを分けているのも地味にアツい。

また後述しますがなによりトラッキングが強いです。ちょっとぐらっとしても見失わないし、復帰も早い。アライメントモードにテクスチャとハイブリッドがあるのも大きくて、スキャン対象によってちゃんと選ぶとかなりトラッキングに強くなります。テクスチャでアライメント取れる個人向けスキャナ、結構珍しいのでは??

また、発売当初と比較してファームウエアが更新されておりかなり色々出来るようになっています。詳細は下記ブログにありますが、記事作成時点でのバージョンは1.3です。

当初よりHDモードの撮像範囲がかなり拡張し、前述の表通りHDモードとFASTモードのギャップがなくなりました。勿論精度との引き換えにはなるのですが、より幅広い範囲でスキャンが可能となり見える範囲の大きさ分トラッキングも強化されています。また、スキャンエラー時に特定のスキャンまで戻って再開する機能エディット後にもスキャンを再開する機能、マーカー使用時の柔軟性や撮像モデルのXYZ軸調整、別端末へのミラーリングなどの機能が追加されかなり便利になりました。

発売がやや見切り発車だったとは思うのですが、機器にポテンシャルがあるからこそ機能の追加や調整が出来るわけで、基本性能の高さはこれからも効いてくると思います。

実際のスキャン性能 オールマイティにすごい

ということで実際にスキャンしたものをいくつか紹介していきましょう。一部は旧バージョンのファームウエアのものとなります。基本的に全方面に高性能なのですが、特に大型のスキャンについては本当にすごくて、野外でも日向でなければかなり良好なスキャンが行えます。撮像範囲もそうですが、おそらくVCSELの性能だと思います。大きな範囲をガバッとスキャンできるほか、スキャン結果に歪みがありません。クルマをスキャンしたのがコレですが、3回のスキャンを合わせて作っても破綻がないのが見事です。これ、プラモじゃなくて実車なんですよ・・・。ボンネットなど中心に流石にマーカーは置いたりしているのですが、非常に少ないマーカーでスキャンされています。素晴らしさが伝わると思います。通常3Dスキャナはのっぺりした平面は上手にスキャンできないのですが、これだけちゃんとスキャンできるのは撮像範囲が広いからです。車であれば特徴となるタイヤを視野のどこかに入れることでスキャンがしやすくなります。

これはモデリングの素材として使っているのですが、左右対称のモデリングを行っても違和感がない3Dスキャン結果です。すごい。そしてなによりこれくらいのものを撮りなおせずスキャンできるトラッキングの強さが本当にすごいです。これは実家にVEGAを持って行って3回一発で撮っているのですが、あとでPC処理するとちゃんとこれが出来上がりました。きわめて実用的といえるでしょう。

では次に小物を。こちらも個人的には驚愕の缶やペットボトルです。こういうものは凹凸がないので形状(フィーチャー)でのアライメントができません。通常はもうそれで終わりなのですが、このVEGAですとテクスチャアライメントがあるため、缶に印刷されたテクスチャをもとにスキャンが行えます。これは今まで私が使用したどのスキャナより優れています。単純に強いです。そうそう、缶は技術チェックのためですが、おーいお茶はうちの子が新俳句で佳作特別賞貰った記念ボトルなので、プライスレスなのですよ。

黒っぽいものにもそれなりに強いです。特にVCSELを使用するFastモードでは強いのですが、アップデートによりHDモードでもかなりスキャンできるようになりました。必要に応じてマーカーは必要だと思いますが、黒いものがスプレーなしである程度スキャンできるのは嬉しい限りです。ちょっとした部品、意外と黒いこと多いのですよね。。

ひとつ前のFreeCADブログで紹介した自転車の泥除けもVEGAのFastモードでスキャンしています。興味ある方はぜひこちらもどうぞ。こんなざっくりのスキャンなら本当にすぐです。この場合、あくまで行いたいのはモデリングなのでスキャンがさっと失敗なく行えるのが実用的な証です。スキャンに時間かかったら本末転倒ですからね・・・

ではHDモードで細かいものはどうかというと、先の通り当初は撮像範囲が狭いという苦しさがあったのですがアップデートにより距離が延長することでかなり勝手が良くなりました。最新ファームではありませんが、我が家のマクロスのプラモ、HGで比較的最近発売されたVF-19ファイヤーバルキリーをスキャンしたものがコレです。スキャンは4回、色々な方向から行い、合成してメッシュ化したものになります。・・・どうですか?

薄い尾翼とかも含めてめちゃしっかりスキャンされています。個人の範囲だから良いですが、悪用厳禁ですね。ということで何よりプラモサイズの細かい造形から実車まで誇張なく1台でスキャンできてしまう懐の深さと、その確実性がVEGAの何よりの強みだと私は思います。撮り直しがほとんどないです。これが価格差か。。。

無料の5GBクラウドストレージに直接アップロードもできます

オールインワン機器の強みを生かしてSHININGのクラウドへのスキャン結果のアップロードも本機から直接行えます。アカウント作成は無料で、無料ストレージは5GBです。一時的なモデルの運搬には何の問題もないサイズで嬉しいところです。ブラウザからアクセス、ダウンロードが出来るので素体として扱う際には非常に扱いやすいですし、iPadのNomad sculpt等OSの垣根を超えたモデル共有が簡単に行えます。

なお、このbebってフォーマットがSHININGのフォーマットのようです。聞いたことないけれど何の略なんだろう??ひとまずobjでエクスポートすればほとんどのソフトで対応できると思います。この共有は非常に簡便で使い勝手が良いです。

キャリブレーションボード立てはケースに入るものを自作

最初の写真にある黒い樹脂の板は不便なので、ケースの三脚入れ部分に入るキャリブレーションボードホルダーは自作しました。Printablesにもありますのでユーザーの方、良かったらぜひ。開く角度を限定するために6角のパーツを別にしていますが、支柱側に接着しても使えます。

ちなみにこれはFusionで作っています。Fusion、作るの楽なんですよね。今回はモデリング等割愛させていただきますね。

思い出はプライスレス

さて、我が家でマルチに活躍しだしたこのVEGAですが、一部仕事にも使用していますし、これからも使用予定です。ではモデリング等以外にどんな使い方があるかというと、その一つの回答がこちらになります。子供の工作。3Dスキャンを行い、モデル修正して3Dプリンターで出力。色を塗っています。

うちの小学1年生が学校で張り切って作ったボックスです。これ、このサイズだとずっと保管出来ないですよね。おそらく皆さんの子供のころの工作も写真を撮って破棄、が精一杯じゃないかと思います。そのうちスマホを使った3DGSのブログも書きますが、こういった3Dスキャンの醍醐味の一つは「思い出の保存」です。子供本人だって、3Dスキャンしておけばセルフ身長比べが出来ます。VRで自分の過去のサイズを見たりとか、楽しくないですか?

先に挙げた実車もそうですが、スキャンしておくことで取っておくことが出来る、あとから見ることが出来るのは正真正銘プライスレスです。とても楽しいので皆さんも何らかの機材で是非3Dの思い出を残しましょう!身近な例としてはそのうちKIRI Engineというアプリも紹介したいと思っています。有料アプリですが、びっくりするほど強力です。お楽しみに。

唯一の欠点は本体内処理時間とバッテリー消費

さて、超強力なオールインワン3DスキャナであるVEGAですが、欠点というか限界もあります。その一つが本体内処理。オールインワンなのでテクスチャ付きメッシュも作れるのですが、しょせんは電力が限られたSoCで動いているため本体内でのメッシュ処理やテクスチャ処理には分単位、場合によっては10分単位で時間を取られます。直ぐ行う必要がなければ(ちゃんとしたGPUを装備した)PCで扱うべきです。これはスキャン対象のサイズというよりはメッシュの密度の問題です。比較的短時間でスキャンしたモデルなどはそれなりのスピードなのでチュエーションによりけりで検討してください。

もう一つはバッテリー。スキャンと処理、どちらにも結構電気を食います。モバイルバッテリーを接続し充電しながら使うことも出来ますので色々スキャンしたい場合には予備電源を用意しておきましょう。発熱は心配だけれど・・・。

そうそう、バッテリーのスリープ時消費の多さにはちょっとびっくりでした。スリープでもガンガン減っていきます。ここの制御は何とかして欲しい。スリープの意味があまりないため、私はこまめに電源切っています。

予算があるならこれが良い

ということで今回はEINSTAR VEGAのレビューでした。正直なところ、予算があるならこれは間違いなく良いものです。私の印象にはなりますが、2025年3月時点で一番汎用性が高いと言っていいと思います。小さくても、大きくても、シチュエーション変化にも強く、テクスチャも含め死角はありません。それと引き換えのオーバー30万。逆に現時点ではこれくらいの値段を出さないとこの性能は得られない、という指標でもあります。これが数年でどう変わっていくのか、楽しみではありますが、どうなっていくのでしょうね。

私はせっかく買った以上、これからも色々楽しく使おうと思います。ということで今回も最後までお読みいただきありがとうございました!