3Dプリンターの使いこなし フィラメントやノズル、ネジやマグネット、レジンを駆使して世界に一つのおもちゃを作ろう
もうすぐ5歳になる息子のリクエストに答えつつ、オリジナル設計の飛行機のおもちゃが完成しました。誕生日前に無事完成して一安心です。製作したのはゼロ戦をデフォルメした感じのプロペラ飛行機。着色なしでフィラメントの色ごとに印刷し、接着して作った模型。半分は私の趣味ですが、フラップが動かせるのと、収納時マグネットで固定できる脚が自慢の一品になりました。
Snapmakerを購入しこのブログを作ってからもう2年、拙いながらも色々作成してきた経験が詰まってはいるので、どなたかの参考になればうれしいです。
脚が収納できる飛行機を作ろう
今回これを作ることになったのは末っ子長男4歳児の「あんよがしまえるひこうき」のリクエストでした。色々子供とネット画像とかを見てどんなのが良いかお話ししつつ、3Dプリンターで実現できそうな、子供が遊べそうなものと整合性をとっていくことに。動くものをFDMの3Dプリンターで小さく作るのって難しいですよね・・・。全体のサイズ感を考えると、レシプロ機のサイズ感なら作れそうかなと考えました。
最終的には私の個人的な趣味が入って、いくつかの色を使って組み立てるタイプのゼロ戦っぽい飛行機を作ることにしました。子供のおもちゃなのでフォルムは残しつつかわいい感じにすることにして、物騒な武装 (笑) はなしにすることになりました。3Dプリンターを使っていると「どうやったら作れるかな?」を考える機会が多くなっている自分に気づきますね。
構想と設計 収納時はダイソーマグネットで固定
設計はFusion360をいつもと同様利用しました。パーツ分割は後から考えることにして今回はフォームモデリングで全体の形を作っていきます。元々技術があまりないのでなるべく形状を単純にして、全体的なバランスを微調整してみました。こんなカクカクの形状がちゃんと飛行機の形になるのは何とも不思議ですね。
なお、素体が何となく出来上がったらとりあえずフォルム確認のため小さく造形するのがお勧めです。画面で見るのと、実際に出力するのでは印象が異なる場合があります。特に今回のように決まった型や3面図がない場合は大事だと思います。
今回は脚部分の造形を翼と同時に行うのは難しいので、ヒンジ部分とともに脚は別の形状として出力する方針にしました。ただ、実は今回の飛行機、難点があって、格納状態の維持はできるのですが、脚を出した状態での維持ができていません。マグネット等を入れるスペースがなくて・・・良いアイデアがあればぜひ教えてください。
色々作る前にある程度イメージが必要になるので、まず一番重要な「脚が格納できる」構造を考えます。基本は手に持って遊ぶので、パカパカせずに格納した状態で維持できるのがベターです。タイヤの固定には家にあるM3のネジを使うので、マグネットで止まる構造を考えました。
一番問題の脚部分は部分的にくりぬいて形状を作っています。この部分は別に試作を何回かしました。マグネットはコストがかからないダイソーの一番小さいネオジムマグネットにして、主翼根本の厚みがある部分に埋め込んでみました。脚部分のヒンジは一体形成も可能なすり鉢状にしましたが、マグネットを抑える部分も含めて枠として造形するため、組み立てるときは楽で中に入れてしまえば外れることがない形状にしています。
フラップも動かせるように 0.2mmノズルで製作
当初は動く部分は脚のみだったのですが、ある程度出来たところで長男から修正のオーダーが入ります。「翼を動かせるように」です。幼児ですしラダーやエルロンとの区別はあまりついていないし、ヒンジを作れる部分は正直フラップしかないと思ったので、フラップを動かせるようにしました。
ただ、当初からサイズは幼児でも遊びやすい大きさに決定しているため、どうしてもフラップのヒンジが極小になります。ということで0.2mmノズル(Kaika802使用)でギリギリ造形できる小さいヒンジを作ってみることにしました。設計と実際の動きは下をご覧ください。
0.2mmノズルは元々小さいパーツを造形するのにも必要でしたのでこの部品も作りましたが、前回テープカッターの記事でお伝えしたとおり、小径ノズルとしては使い勝手がよく、利用しやすいサイズです。樹脂の詰まりの心配も少なく、多くの樹脂を0.4mmに比較的近い使い勝手で利用できますので、FDMで小さい部品を作ろうと思われている方にはぜひおすすめしたいです。近日また0.2mmノズルの造形設定などはまとめようと思っていますのでよろしくお願いいたします。。
プロペラ部分は ネジ頭を埋め込み インサートナットで固定
実際は最後に作ったところになりますが、プロペラ部分はネジ頭が見えないようにヘッド部分をインサートナットと同じ要領でスピナー(先端部分)に埋め込みました。あらかじめ形状をやや小さめにくりぬいておいて、半田ごてで埋め込みます。意味があるかはわかりませんが六角部分もそのまま型にしました。熱容量?の問題でネジ全体を加熱するのは難しかったのでいろいろな方向からヘッド付近を半田ごてで加熱してなるべく垂直に埋め込みました。これ、別なもので持たないと火傷しますので注意してくださいね。
なお写真がないですがカウル部分にはインサートナットを埋め込んでプロペラが回るようにしています。
色と積層方向を考えたパーツの分割
順番が前後しますが、大枠ができたところで色と分割について考えます。今回は未塗装、形成色でカラーのおもちゃを作りたかったので、色毎にパーツを分割して行きます。また、飛行機は形に流れがあるので形をスポイルしないように形状を分割したつもりです。主翼周辺のところはこんな感じの分割が一番しっくりきますよね・・・。また、翼の部分等単純な平面では上面と下面を上手に分割出来ないため、新たにサーフェスで分割用の平面形状を作って確認しながらスケッチを微調整しつつ分割しています。
また、接着面についてはクリアランスを0.2mmとしています。なおラダーやエルロンはアクセントとして形状を分けていますが動きません。エルロン部分はヒンジを嵌め込みにしたため形状をこんな感じにしないとフラップが取り付けられない、ということもあります。実際には嵌め込む時に細い枠の形状は折れました(笑)そんな時でも今回の作り方だと折れても問題ないんですよね、接着するので・・・。
実際の造形については積層方向も意識する必要があると思います。3Dプリンターが作りやすく、かつ見栄えが良い(積層が目立ちにくい)方向を考えます。1stレイヤーが小さく、接地面が少なすぎると失敗リスクが大きくなりますし、余計なサポートがつくと材料も時間も余計に必要です。サポート面も荒れるので注意が必要です。
基本的には長い曲面が続く部分が高さ方向に向くように造形するのがベターですが、0.2mmノズルで0.1mm積層で造形する場合はそこまで流れを意識しなくても荒れない印象があります。0.4mmノズルの部分は積層痕が結構気になるので意識する必要があると思います。今回はいわゆる後処理的なことは基本行っていません。
キャノピーはクリアレジンを使用 3Dプリンターで型を製作
最後にキャノピー部分です。今回はコクピット内も作っていませんし、上にかぶせるだけなのですが、ここは透明レジンを使用します。ここでも出てくるダイソーさん、100均UVレジンです。普段扱う機会はあまりなく全然上手には使えないのですが、3Dプリンターで作った型にレジンを流しつつ硬化させてキャノピーを作成します。この辺についてはぜひ下記ブログもご覧いただければうれしいです。
Polyterra PLAを使って型を作り、レジン硬化後に破壊して取り出します。ひっくり返して追いレジンするのですが、その際にちょっと窓枠部分をマジックで塗りました。ヘンテコになりました。もっと皆さんは上手にやってください!!最後に追いレジンで封入すればこすっても取れなくなります。
UVライトで硬化しただけでは不十分な場合、屋外に一日置いておけばしっかり硬化すると思います。私はへたくそでどうしても気泡が入ってしまい、何回もやり直しました・・・
遂に完成!!
全体が出来上がった状態がこちらです。個人的には全体として可愛くできたかなと思っています。なにより子供が喜んでくれたので満足(笑)。父からの手作りお誕生日プレゼントです。実際に造形しているのは3Dプリンターですが、手作りといっても許されるのではないでしょうか・・・!?
写真で見ていただければ造形方向はわかると思いますが、サポートが必要な部分が非常に少ないため、全体として非常にキレイに造形できているんじゃないかな・・・と思います。
造形には基本的には標準的な0.4mmノズルを使用しています。積層は0.15-0.2mmです。また前述のラダーやエルロン等小さい部品は0.2mmノズルを用いて0.1mm積層での造形です。ノズルは定評ある国産ノズルシリーズKaikaを使用しました。
また、材料は基本的にPLAです。緑、灰色、黄色の各フィラメントはSK本舗のマットPLA、プロペラ部分はPolyterra PLAになっています。ただ家に黒フィラメントがなかったため、本来の用途ではないですがPolymide CoPAが贅沢に?使われています(笑)
造形している3DプリンターはFDM方式ダイレクトエクストルーダー機でSnapmaker2.0というものです。正直高価な機械ですが、モノは確かだとおもっています。
もっとお求めやすい機種も含め色々あるのでご興味を持たれた方はぜひこちらの世界へ・・・
使用機材や材料のAmazonリンクも貼らせていただきますのでよかったらご確認ください。
幼稚園児なので遊んでるとすぐ壊されてしまうと思いますが、設計が終わっているため何回でも作れるのが3Dプリンターの素晴らしいところだと思います。とりあえず上面灰色、下面が白のバージョンも作りたいですね。そのうちまたブラッシュアップしたいなとも思います。なお、見てわかる通り、今回尾輪がないです。収納式が困難な大きさですし、持って遊ぶときはないほうがかっこいいと個人的に思うので。
最後に造形したパーツたちの接着ですが、瞬間接着剤だと酸化して白くなるので、これもダイソーで購入したプラスチック用ボンドを利用しました。べたべたするので扱いがやや面倒なのと固まるまでの時間もかかりますが、色への影響がないのは無塗装モデルにとっては大事かなと思います。。
それにしても物を作るって本当に難しいですね。ちょこちょこと生活の中でこれを作るのにもかなり時間がかかりました。個人的には2年間色々扱ってきた3Dプリンター関連の経験の成果ですが、2年もかかってこの程度、という話もあります。Twitterにはすごい人があふれていますからね・・・。色々作ってみようかな、という皆さんにちょっとでも役に立ったなら、背中を押せたならうれしいです。当ブログ内は3Dプリンター関連の記事が多いので興味を持っていただいたらぜひ色々見ていただければ嬉しく思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
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