映画やアニメとの相性が良い KZ carol レビュー 5000円以下クラスで映像と楽しむ「昔のBOSE風」サウンド

2024年10月5日

音モノのレビューって、難しいですよね。完全に主観ですし、好みがかなりあります。この商品は皆と同じじゃつまらないな、と比較的安価なTWSをお探しの方にお勧めできる商品だと思います。アクティブノイズキャンセリング付きですがアプリ等の機能を割り切った分コスパは高くなっている印象です。周波数とか測定しているわけではない感覚的なレビューとして参考になればと思います。

低価格ANCイヤホン戦国時代

KZは元々比較的個性のある音を出す中華イヤホンメーカーです。当ブログでは兄弟メーカーのCCAの有線イヤホンを以前ブログで紹介したりしています。楽しいんですよね、中華イヤホン。とはいえ基本的にバッテリーの切れ目が縁の切れ目になってしまう完全ワイヤレスイヤホン(TWS)にはもうお金をかけないことにしているのですが、今回運動時に使っていたイヤホンのバッテリーがダメになってしまったため、ちょうど見かけたこのイヤホンを発売記念の25ドルで購入しました。

なお、アクティブノイズキャンセリング(ANC)搭載で5000円以下クラスはいわゆるエントリーになります。電子回路やバッテリー、充電ケース等コミコミなため、音以外の部分にコストがかかってしまう分、価格が安くなればなるほど音にかけるコストを削減せざるを得ない苦しい立ち位置です(笑)。

とはいえ、何せ今の世の中、AnkerやXiaomiが低価格なANCをバンバン出してきて、所謂老舗?中華イヤホンのこうしたメーカーはかなり厳しくなっているのではないかと思います。Xiaomiの Redmi buds 6 Liteなんて3000円以下ですからね・・・。アプリ対応とか進んでいるところも多いです。Xiaomi恐るべし。

ただどうやらRedmi buds 6 Liteはアプリ必須でDAPとの接続が厳しかったりとか、マルチポイントどころかペアリングが1台しかできないという話も耳にしました。Xiaomiはそっちでコスト削減を目指しているわけですね。低遅延モードもないようです。

一方でKZはというと、まずは応援という意味と、見た目です!このイヤホン、カッコいいんですよ。当初はブログで紹介するか迷ったのですが、ノイズキャンセリングの話も含め、これだけカッコいいので紹介することにしました。後述しますが、アニメや映画、YOASOBIなんかと相性良いと思います。これで見るフリーレン、なかなか良いですよ!そしてこの価格帯でマルチポイント(PCとスマホ等2台と同時にBluetoothで接続できる)に対応しているので立派です。メディア向けなこともあり、ちゃんと低遅延モードも装備されていて抜かりがありません。

アクティブノイズキャンセリングについて

さて、最近のトレンドであるアクティブノイズキャンセリング(周囲の音をマイクで拾って、逆位相の音をスピーカーから出して相殺する技術)についてです。この技術は本当に素晴らしくて、今はこんな小さなTWSにも搭載されていますが、昔はヘッドホンでないと搭載が出来ませんでした。初めてこの技術をヘッドホンに搭載したメーカーが、皆さんご存じBOSEです。一般販売は2000年。20年以上の歴史がある技術になります。飛行機の騒音を軽減しようと思ったのが始まりとの事です。

私がアクティブノイズキャンセリングのヘッドホンを初めて使ったのはQuietComfort2という2世代目(2003年発売)ですが、滅茶苦茶感動した覚えがあります。スイッチを入れて、周囲が急に静かになる感覚・・・今は当たり前ですが当時は本当に魔法のようでした。当時は単4電池1本で35時間使用可能、という感じでした。AVウォッチの記事があったので貼っておきます。

今存在する全ての原点がここ、と考えると中々感慨深いですし、20年以上を経て耳に入れるワイヤレスイヤホンにまで、しかも超低価格でこの技術が搭載されていることを思うと進歩を感じます。ノイズキャンセリングがしやすいのは飛行機や電車、車など低周波数帯ですが技術の進歩で周波数帯は広がっていると感じます。ただ、今回紹介するCarolを含め、低価格帯のイヤホンにそれを求めるのは酷です。

ということで?今回のCarol、昔ながらのBOSEノイズキャンセリングヘッドホンを彷彿とさせる感じでした。

KZ carol 名前も見た目もカッコいい

このイヤホン、まず名前と外観がかっこいいです。Carol、中国語表記だと颂歌っていうらしいです。漢字表記だと祝歌とかとのこと。讃美歌の一種ですね。スマホ等ではBluetoothで接続すると標準では製品名が表示されます。そこがCarolになります。また、外観も良いです。素材は正直本体もケースも安さが出ているのですが、シースルーになっていて基板等が見えるデザインになっています。そこに見えるLEDがKZのロゴで青く接続状態等をお知らせしてくれるというかっこよさ。ただ予算の都合でしょう、基板の向きは左右で同じで対称にはなっていませんでした。

充電ケースも表側の制御部分は見えるようになっていて、こちらはバッテリー残量の目安を教えてくれます。まあ、ケース自体は大柄で傷もつきやすい感じですが、これらを気にする価格帯ではないと思います。メーカーHPより転載した模式図(実装とは結構異なっています)にある通り、3つのマイクでノイズキャンセリングは行っているようです。

パッケージはめちゃシンプルで、届いてすぐ使えるようになっています。蓋を開けると接続が始まります。初回はペアリングモードに入るので初期設定もそのまま行えます。マルチポイントは最後に接続した2台が自動認識されました。接続性は少なくとも私の個体は非常に良好です。ペアリングモードは電源を切ってから、長押しし続けると入ることが出来ます。KZのロゴがブルーに点滅するのが良いです。

なお、取り出しにくいという意見を見ましたが、取り出しはふたの根元側からめくる感じで持ち上げるのがオススメです。個人的には困っていません。

機能面は割りきった必要最小限 音量調整は出来ない

Xiaomiのようにアプリ対応がなされていたり、機能を割り振る、等の機能は総じて省略されているのが特徴です。購入後に何かをカスタマイズする設計にはなっていません。この辺も低価格TWSといった感じでそこに兼ねかけられるXiaomiやankerがスゴイだけです(笑)。ただまあ、絶対必要かと言われればそうでもないですよね。おそらくですがしょっちゅうイヤホンのアプリ開いている人、あまりいないと思います。最初は面白くていじるかもしれませんが・・・。一応スペック表も載せておきます。対応コーデックは当然SBC、AACです。

項目詳細
ドライバーダイナミック(N52 NdFeBマグネット) 意外と悪くない
Bluetoothバージョン5.3
対応コーデックSBC、AAC   aptxやLDACは勿論なし!
連続再生時間イヤホン単体:約6時間 (40mAh) ケース(400mAh)
ノイズキャンセリング公称は55dBとのことだがまあ、置いておきましょう
重量(実測)イヤホン片側 約5g、ケース 約43g
充電ポートUSB-C (5V)
動作モードTransparencyモード、ノイズキャンセリングON,OFF(長押しで順番に切り替え
遅延軽減モードあり(High Performanceモード 右イヤホン3回連続で触れるとON)
マルチペアリングあり(最大ペアリング数は不明)
マルチポイント機能2台のデバイスと同時接続可能
アプリ対応など一切なし!
一部独断に基づいたスペック

なお、再生の停止など操作はタップか長押しで行うのですが、物理ボタンではないため、耳との位置関係が微妙に難しくてうまく触れないことがあります音量調整が出来ない点は注意です。 

再生時間はそこまで連続でこのイヤホンを使わない為実測はしておりません。少なくとも私の使い方では電池で困ることは無さそうでした。

ノイズキャンセリングのマイクは上下についていて、筐体のマイク穴から音を拾っているようです。ここで発生すると思われる風切り音が外出時風が強いと聞こえてきます。ANCを使わない場合は当然風切り音はありませんでした。また、耳側にはフィードフォワードのマイクがあります。イヤーピースは市販のものも使えますが、元々は楕円です。斜めに装着する際に縦向きになるようになっていますが、互換性を重視してくれた方が個人的には嬉しいかなぁ・・・。

音とノイズキャンセリングは?

さて、では本命、音とノイズキャンセリングについてです。音については一言で言えば低音よりのドンシャリ。ただ中音域が極端に落ちているわけではなく癖は強くない印象です。CCAの低音強化版みたいな感じ。バスブーストがかかっている感じなので印象は悪くないですし、音量を上げない状態でもバランスが良いです。逆に音量上げすぎるとブーミーです。ANCを効かせながら音量を上げすぎずに楽しむ方に向いている気がします。

一般的な音楽も普通に鳴らせますが音の分離や精細感はあまり良くない(価格なりという意味です)ですし、雰囲気重視の音作りなのは否めませんし「ふーん、こんな感じか」くらいなのですが、個人的にはAmazon Prime videoとかを見ると評価が上がります。盛り上げるのが上手なイヤホンなんですよ、コレ。音場の広さは十分ありますし、出張らない分効果音とか含めアニメのSEやセリフなんかが自然に聴こえます。すごく良いイヤなホンとかだと、セリフがマイクを通した感じとか、作ったサウンド等「音の嘘くささ」がばれるんですけど、このイヤホンは雰囲気でいい感じに胡麻化されて臨場感が増します。音楽もメリハリがある曲、YOASOBIさん等が好印象です。例えばこれで「葬送のフリーレン」とかを見るとかなり満足感が高いです。

なお、映像と共に見る場合(今回はPCで視聴)は右イヤホンを三回トトトンとタップしてハイパフォーマンスモードにしましょう。遅延が軽減できます。PC上ではこれをオンにしないとamazonプライムの口の動きに対する遅延を感じました。

ノイズキャンセリング性能は悪くないです。55dBと言われてしまうとうーんと思いますが、低音域のキャンセル性能は結構イイ線行ってると思います。中高音は素通しでたとえば車や換気扇の音は消せても、秋の虫の音なんかは全くキャンセルされません。ただ、トランスパレンシーは結構良好で、自然な感じで外音が入ってきます。またモード間での音質や音量の変化が少ないのも良いところだと思います。なお、外利用については風が強いと前述の通り、ANCオンとトランスパレンシーでは風切り音がそれなりにあります。うるさいほどではないですが、気になる場合はANCをオフにする必要があります。モード切替が順番にしかできないのは場合によっては少し不便かもしれません。

総合的に見て私が思ったのは表題の通りで、エコノミーな「昔のBOSE風」の音だと思います。昔の、なのは私が今のQuietComfortを知らないからです。(使ったBOSEのイヤホンは有線のQC20が最後)昔のBOSEってラウドネスが効いた映画等に適した雰囲気重視の音作りが特徴で、近いものを感じました。

総評 良い点、イマイチな点がこちら

ということで、個人的にはお安く味わえる往年のBOSE風サウンド、というのが私の考えるこのイヤホンの総評になります。それこそXiaomiと聴き比べたりはしていないのであちらがどんなものかは分かりませんが、人とかぶらない個性とかっこよさという点で十分に楽しめるTWSだと感じました。対して変わらないなら個性的な方がいいよね・・・?

個人的には皆がXiaomiやAnkerじゃ面白くないので、KZにも是非頑張ってもらいたいところです。まとめとして良い点、イマイチな点を箇条書きしてみます。あ、私の個体では技適マークそのものは確認できないのですが、取得は済んでいるとのことです。こちらについてはノーコメントで。

良い点

  • カッコいいデザイン
  • 音量を上げなくても出る低音域(ドンシャリ系)
  • 途切れない良好な接続性
  • マルチポイント、ペアリング対応
  • 低音域で十分なノイズキャンセリング
  • モード間での音質差が少ない
  • 5000円以下で楽しめるBOSE風サウンド!

イマイチな点

  • 大柄なケース
  • 楕円のイヤーピース
  • 音は繊細さや分離など価格相応
  • 音量を上げるとむしろバランスが崩れる
  • 風切り音はそれなりにあり
  • ハイパフォーマンスモードでもやや遅延あり
  • 音量調整は出来ない

こういうイヤホンに興味があったら、是非一度ご検討ください。それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!