好みのIEMやリケーブルイヤホンを完全ワイヤレスにしてみよう! 高コスパで音質面でも及第点のTRN BT30 レビュー

2022年4月26日

せっかくの音が良い完全ワイヤレスイヤホンも、バッテリーの寿命が来たらドライバーごと破棄もったいないですよね。良いイヤホンやスピーカーって、カメラのレンズと同じで時が経っても良いものです。この製品はデジタルの部分のみを分離して、好きなリケーブルイヤホンを完全ワイヤレス化できる優れものです。こういった製品は今までもあったのですが、この製品で一つの完成形となっていると感じましたのでレビューします。

ほぼ全ての完全ワイヤレスイヤホンが抱える2つの欠点

商品の価値を決めるのは消費者自身ではありますが、個人的には完全ワイヤレスイヤホンには非常に大きな欠点が2つあると感じています。まずバッテリー周り。ほとんどの商品はバッテリー交換することを想定しておらず、よく使う人ほど製品寿命が短いのです。充電ケースのバッテリーも含め基本的に交換出来ない仕様です。良い製品は数万円するのにも関わらず、数年で使えなくなってしまいます。メーカー側でバッテリー交換が出来るものもあるのでしょうが、もう一つの欠点の都合上、初期不良ならともかく数年後に対応してくれる可能性は高くないでしょう。

そのもう一つの欠点はコーデックやBluetooth周りです。最近ようやく落ち着いた感じはありますが完全ワイヤレスイヤホンの電気的仕様はどんどん進化しています。一昔前のものと比較して最近の製品は接続性の向上や最新コーデックへの対応、遅延の減少など改善しています。ノイズキャンセリングは今回の商品は対象外ですが、デジタル周りは日進月歩なのはご存知の通りです。転送速度の向上やチップの進化により今後もより良くなっていくのは間違いありません。

本来イヤホンに搭載されている振動板の製品寿命はもっともっと長いはずで、せっかく高性能な原価の高いドライバーも、バッテリーと共に破棄されてしまうのは非常にもったい無いと感じます。すごく良いスピーカー買って、数年で捨てちゃう人なんてそうそう居ないですよね。我が家にある707S2なんて、ずっと使うつもりです(笑)。すごく良いスピーカーなので興味ある方はぜひこちらもどうぞ。

BT30の特徴 低価格かつQCC3040搭載でツボを抑えた仕様

今回購入したBT30はこの問題を本質的に解決してくれる商品です。欠点の元凶であるデジタル周りを分離して、お手持ちのイヤホンと接続する商品になります。有線イヤホンをButooth対応にするレシーバーと同じ考え方で、リケーブル対応のイヤホンと接続して、メガネのように耳に引っ掛けて使います。所謂完全ワイヤレスとしてのスマートさには欠けますが、耳に合わせて作ったようなカスタムIEMもこの商品につなぐことで完全ワイヤレス化出来ます。

このシリーズは今までもあったのですがチップの進化と共に製品も進化しており、この商品のは2021年発売のQCC3040を搭載しています。個人的にはこのチップは現状一つの完成形と考えており、左右に分離した完全ワイヤレスイヤホンのマネジメントが遂にイヤホン側で行えるようになった点がトピックです。この機能は「Qualcomm TrueWireless Mirroring」という名前で、左右分かれたイヤホンを同一機器として扱い、必要に応じて左右を切り替えて使うことができます。接続する機器を問わず利用でき、安定した接続とバッテリー利用の最適化、さらには片耳利用でも問題なく使えるという特徴を有しています。

他にもアクティブノイズキャンセリングへの対応とかAptX adaptiveへの対応なんかも機能としてはあるのですが、個人的にはこのQualcomm TrueWireless Mirroringこそが画期的な機能です。なお、この商品はノイズキャンセリングは非対応、コーデックはAptXまでとなっています。そのほかのスペックとしてはBluetooth 5.2、再生可能時間は6.5時間、ケース込みで20時間とされています。本体サイズを考えると意外と短いと感じるかも知れませんが、多ドライバーを搭載している大きなイヤホンを駆動するためアンプが別に搭載されており、一般的な完全ワイヤレスイヤホンと比較して消費電力が多いのが理由です。

価格は2022年4月現在で7000円程度、(クーポンもたまにあるみたいです)上記のような特殊な仕様ではありますが割高感はありません。アマゾンではもうひとつ出品元がありましたが、そちらだと1万円くらいしていたので、私も安い方で買いました。良かったらリンクもご利用いただければと思います。

購入時に注意するべきは接続部分の仕様で、お持ちのものに合わせて選択する必要があります。日本でメジャーなMMCX、0.75mm,0.78mm,2PINSという4種類があります。私が購入したものは手元のCCA C16対応の0.75mmです。

製品外観 ケースは最小限の機能

さて、実際の製品です。商品の性質上、ケースも含め大きいです。その代わり、イヤーピースを接続した状態で収納ができました。ただこれはイヤホンの形状によると思います。ケース中央部分をもっとへこませてもらえればと思いましたが、分解していないので下にバッテリーが入っているのかも知れません。充電はUSB-Cで行えます。Amazonレビューには充電口が奥まっていて通常のケーブルが使用できないと言う話もありましたが、当方では問題ありませんでした。ケースはシボ付きの合皮ですが、高級感は皆無で、ジッパーの動作もちょっと引っ掛かります。充電時に赤く光るLEDは内側にあるので、外から充電の状態を見ることもできませんし、残量がどの程度あるのかもわからない最低限の仕様になっています。割り切りが必要な仕様ですね。

本体も同様に簡易な感じですが、基本は抑えられており、物理スイッチ、赤と青に光るLEDインジケーター、マイクとイヤーピース接続部からなります。本体充電用の端子は2個。なお、電気的仕様として技適マークがついています。イヤホンのバッテリー残量はスマホなど接続機器から確認することができます。なお、便利アプリのようなものはありません。また箱には技適の番号もちゃんと書かれているのですが、検索ではまだ引っかかってきませんでした。

イヤホンとの接続部分はしっかりしていて、簡単に外れるようなことはなく、ケーブルはコシがありフックのような形状になっています。物理的な重量はそこそこありますが、耳にかけて使用するため重さを感じることはないと思います。通常時はケースから取り出すと最後に接続していたデバイスに自動的に接続されます。この辺は一般的な完全ワイヤレスイヤホンと同様の仕様です。注意が必要なのはアナウンス時の音量です。英語で「Power on」とか「Connected」とアナウンスされるんですが、その音がすごくうるさいです。機器の電源が入ったら音を確認してから装着するのがお勧めです。

パワーは十分 用途を考えると十分満足できる音質

汎用品のイヤホンを駆動するためにはある程度のアンプ能力が必要です。この記事で利用しているコスパお化け中華イヤホンの一つ、CCA C16は片耳8BA(バランスドアーマチュア)です。簡単にいえば小さいスピーカーが8個付いているわけでQCC3040単品ではパワー不足になると思われます。そこでこのBT30にはQCC3040の他に小さなヘッドフォンアンプが入っています。メーカー仕様によればマキシム社のMAX97220Aというチップのようです。

MAX 97220Aはフレキシブルゲインのアナログアンプなので、QCC 3040が最終的に出力するアナログ信号を一定の割合で増幅するだけの簡単な仕組みになります。デジタルアンプと比較するとS/Nが悪化しやすいですし消費電力が増えそうな印象ですが、Blutooth周りの仕様を考えるとこの方法しかないのでは無いかと思います。

さて、これを踏まえた実際の使用感ですが、これが中々良いんです。デジタル部分はQCC3040ということもあり母艦との接続性は良好で途切れることもあまりありません。電波状況によっては乱れることはありますが、一瞬で復帰するので「切れる」という感覚では無いです。前述のアンプのおかげもありCCA C16で使用してもパワー不足は全く感じません。アンプの増幅についても変な癖はなく、イヤホンが持つ本来のバランスが崩れる印象は受けませんでした。CCA C16は結構パワフルで華やかな音の個人的にお気に入りのイヤホンですが、エネルギッシュな音はそのままです。キャラクターがちゃんと出ていて、お持ちのリケーブル対応イヤホンを楽しむのに十分と感じました。大柄ですが耳にかけてしまうため装着感も問題なく、重さが気になることもありません。

ペアリングも一度しておけば迅速に再接続されますし、マルチペアリングにももちろん対応しているため複数機器でも扱いやすいです。ただし、マルチポイント(2台同時接続)へは対応していません。ボタンは左右はなくシンプルな機能で超長押しで電源、長押しでアシスタント起動、普通に押すと再生や応答のコントロールになります。AptXやAACに対応しており、お手持ちのリケーブルイヤホンで完全ワイヤレスイヤホンライフを楽しむことができます。

ただ、静かなところで使用するとやはりS/Nには限界があり、バックグラウンドのホワイトノイズを感じます。ただ、耳障りになるようなものではなく個人的には特に問題ありませんでした。音質についてはDAPとアナログ接続してハイレゾ鳴らした時と比較すれば明瞭度が落ちる感じは否めませんが、外で聴くことなどを考えれば十分満足できると思います。接続性もすこぶる良好です。

以前からの私のスタンスですが、大事なのはアンプよりもスピーカーです。今回で言えば鳴らすイヤホンがおそらくずっと良いものになるため、そこらの完全ワイヤレスイヤホンよりずっと満足感が高い音質が簡単に得られると思います。

今後もぜひ続いてほしいシリーズ おすすめです

私が現在利用しているのは今回のBT30とEarin A-3の2つになります。IEM的なC16とオープンイヤー型のA-3では性質が全然違うため、使い分けは十分に出来ています。一般にカナル型イヤホンは外音取り込みモードがない場合、歩きながら利用するのは周囲の音が聞こえないため危険です。BT30を利用した場合、基本はカナル型になるかと思いますので、乗り物内や外音をシャットアウトしても問題ない店内などでの利用が主となるでしょう。

A-3はその点、最近発売されたソニーのLinkBudsと同様、外耳道をあまり塞がないので音量に注意は必要ですが野外でも扱いやすいです。環境音と共にサラッと音楽を楽しむ用途ではEarin Aー3は依然として非常に楽しいです。ただ競合することはまずないと思いますが、接続性などはやはり最新チップを搭載した本製品に軍配が上がります。

おそらく今後もBluetoothの規格や音声フォーマットは進化していきます。この商品であれば使い倒してダメになっても、買い換えるのはデジタル部分だけとなり無駄がありません。その時点での最先端のデジタル技術をお持ちのイヤホンで楽しむことが出来てしまいます。省けたコストはリケーブルイヤホンやカスタムIEMなどに注ぎ込めます。音質を重視しながら完全ワイヤレスイヤホンを探されている方がいたら、ぜひご検討ください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!