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3Dスキャンのお供にも最適、高価格ならではの価値があるBlenderアドオン Retopoflowシリーズ

今回はBlenderの有料アドオンという、当ブログではあまり取り上げたことのないジャンルの紹介です。以前から存在するのは知っていたのですが、ポリゴンはCADソフトだとどうしても制約が出やすいので今回購入しました。3Dスキャンや生成AIによるメッシュのクリーニング、必要があればローポリでCADに持ち込むなど色々用途があると思います。

はじめに CADソフトはメッシュ(ポリゴン)が苦手

CADソフトは基本的にメッシュを用いません。CADからSTLや3MFといったメッシュに変換して3Dプリンターで印刷は行いますが、メッシュからCADに戻すのはかなり手間がかかる作業です。工業用のリバースエンジニアリングではFusionの有料プラン、また使ったことは無いのですがRhinocerosのQuadRemeshなどでsubD化するなどの機能が提供されています。3Dスキャンの世界でも複雑なメッシュが生成されるため、CADに持ち込むための専用ソフトも存在しています。REVOPOINTさんもQUICKSURFACEを販売していますが、基本的に高いです。

個人レベルで3Dスキャンを色々CADでも扱おうとする制約を色々な方法で(安く)回避するためには工夫が必要なんですよね。

というわけで今回のRetpoflowの話の前に、以前当ブログで紹介したメッシュをCADで使うための下のブログを合わせて是非ご覧ください。このブログ内にExport IGESというBlenderのsubDメッシュをCADに持っていくアドオンの紹介もしています。これは本当に強力なツールで今回のリトポロジーの後処理として必須になります。ぜひご検討ください。

Retopoflowの魅力

さて、そんなわけでこのRetpoflowなんですが、元々はBlender用のリトポツールです。非常に強力でメッシュを直感的かつ効率的に整形・再構成できるアドオンとなっています。スケッチのように線をひくツールがあり、Blenderが上手に使えない自分でも現時点で3Dスキャンモデルのリトポがある程度出来てしまいます。

しばらく前まではVer3系列が一番新しいもので、このバージョンは非商用、基本的に学生用にGithubで公開されています。悪用は厳禁です。現在かなり使い勝手が向上したVer4のベータ版が最新となっています。Ver3までは専用の作業スペースでリトポロジーを行うツールでしたが、Ver4からBlenderの標準ツール群に並んで使えるようになっておりBlender使いの方にも扱いやすくなっている印象です。まあ、僕はつかえないんですけど。

このリトポの作業、以前当ブログで紹介したような3Dスキャナや動画1つから3Dメッシュが作れてしまうKIRI EngineからのCADデータ作成や後述のAI利用にも役立つと思いますし。まあ将来的にはこのリトポロジーも自動化していくとは思うのですが、調整等考えるとオートのみだと難しい部分もあるでしょうし、リトポロジーを通じて面を貼る作業はモデリングスキルの向上にも一役買ってくれると思います、多分。

実際の使い勝手は?

というわけでどう使うのかですが、Ver3で行っていたリトポが右のような感じになります。ポリゴンにダイレクトに面を貼っていく感じです。

このアドオンを購入して最初にやってみたリトポになりますが、使い方があまりまだ分かっておらずporypenを使ってメッシュを作成しています。スキャン元はKIRI Engineの3DGS to Meshです。そのままだと流石にガタガタしたり実物とちょっと異なる点が産まれてしまうためこのソフトでリトポしました。動画からこのメッシュが作られるのもスゴイですけれどね・・・。

Blenderの使い方をろくにわかっていない自分でもそれなりに単品で使えてしまうのがこのアドオンのすごいところです。3Dモデルを普段扱っていればおそらくそう躓かずに使えてしまいます。

こちらのKIRI Engineのブログもぜひどうぞ。

お次はこちら、たぬきさんの貯金箱です。これは嫁様が購入して末っ子長男に使ってもらおうと思ったのですが、陶器製で素敵なのにすぐ落として割っちゃいそう(な性格)なのであらかじめレプリカを作ることにしたときのものです。

EINSTAR VEGAでスキャンして取り込み、このツールでリトポしました。Contoursという輪郭ツールで円筒形を作って、そこからメッシュを起こしました。

EINSTAR VEGAについては以前のこちらのブログもぜひどうぞ。このスキャナは正直個人で買うにはかなりのお値段なのですが、非常に高機能で個人をターゲットとしたオールインワンスキャナのベンチマーク的存在になっていると思います。

Retpoflow3のインターフェースは2枚目のような感じです。Blender標準の状態とは異なり、既存メッシュがダークグレーでその上にリトポのサーフェスが乗る感じになります。左側に各ツールが並んでいてCrtlを押しながらツールを実行する感じです。ストリップ等の数はマウスホイールで、半径はFキーを押しながら変更できます。主な操作感は3も4も変わりません。4はベータなのもあってか、既存のループカットなどの機能を使った後の挙動がちょっと不安定だったりしますが、クラッシュはしませんでした。

今回は下側はきれいな円柱にしたかったので、リトポロジー時にメッシュの下側はカットして、リトポした部分から下方向にメッシュを伸ばして形状を作っています。外側を作ってソリッド化し中空にしたうえで、そこにサブディビジョンモディファイアを使って完成です。

なおGithubに現時点でVer3のアドオンは公開されており、教育目的、非商用に限って利用できるようです。

Retpoflow 4ベータについて

そして今回新たにリリースされたのがRetpoflow4のベータ版です。メジャーバージョンアップに伴い現在は特別価格で販売されています。詳細は冒頭でもお示ししたsuperhivemarket(旧Blender Market)のページも参照ください。どうでもいいけど私はBlenderマーケットのままが良かったなぁ(笑)

大きな違いとして、今回のバージョンアップで一般的なBlenderの編集モードにRetpoflowが統合されています。今までBlender使っていた方にはより扱いやすくなっていますし、統合されても今までの勝手の良さは変わっていないのでBlender使いでなくても大丈夫です。各ツールもバージョンアップされていて、一部ツールはプロポーショナル編集に対応するなど、ハードサーフェス系から人物等まで幅広く利用しやすいです。

まだ完全ではないでしょうが、編集モードから直接使えるため、一般的なポリゴンモデリングの使い方がそのままできるのも良い点です。3Dプリンター用だと角部分などをクリースで済ませることも多いと思いますがそういった操作も同時に行えてしまいます。なお4面図だと斜め上のカメラビュー以外の3面はpenしか使用できませんでした。

これはKIRI Engineで撮影したスバルのLEVORGのモデルにRetpoflow4を用いてメッシュを作成している途中です。モディファイアを使用し鏡面コピーとサブディビジョンモディファイアにしています。技術がなくまだ全然上手に使えていないのですが、モディファイアのおかげでワイヤーフレーム上はこんな感じの滑らかな面構成になります。これを上手に扱うためだけでもBlenderもう少し勉強したいなと思いました。60ドルのモデリング講座を本気で検討しています(笑)。

なおお値段はベータ版ということで60ドルで購入可能です。ただ、この期間が過ぎたら86ドルに上がるらしい・・・。とはいっても約1万円かかるというのはそれなりに負担なので有用性との天秤になるんじゃないかと思いますね。

CADとの組み合わせ

Retopoflowで作ったきれいなメッシュを使って、改めてCADで利用することも可能です。たぬき貯金箱は中をくりぬいたメッシュのまま、うちねじを作るためにFreeCADに持ってきました。最終的にはCADで作ったねじ部分としたのふたを組み合わせて貯金箱として利用しています。

以前お話ししたExport IGESとともに使うとメッシュをFusionに持って行ってステッチし、滑らかな形状にすることもできます。最近よくブログでも出しているFreeCADでも行えますが、その後のブーリアン等の処理がかなり重いのであまりお勧めはしません。パートワークベンチでソリッドに変換を行うとFusionと異なり一瞬でソリッドになるのですが、雰囲気としては一つ動作を追加するたびに今までの動作をもう一回やっている感じがします。遅いけど出来なくはない、という感じでFreeCADでは使いにくいです。

ただ、サーフェスの数が多すぎなければ実用性はぐっと高まります。なるべくローポリ形状にしてFreeCADに持ってくることでFusionのフォームモデリングの代替としても使えるのではないかと思います!

というわけでFusionにこのリトポロジーしたたぬき貯金箱を持って行ったのが下のものになります。リトポロジーによってスキャンしたメッシュがこれほどきれいになるの、非常にうれしいです。もちろん形状によって工夫や細部を端折る必要は出てくるとは思いますが、多くの方が3Dスキャンでやりたかったことの一つがこれなんじゃないでしょうか?もちろん、スカルプトしたポリゴンデータ等をCADデータにする場合にも使えます。

Export IGESで出力した場合、ステッチはされていないためFusionのサーフェス内にあるステッチを使って面をソリッド化する必要があります。ステッチにそれなりに時間はかかってしまいますが、ソリッドにしっかりなっているのがお分かりいただけると思います。当然ブーリアンもできますしレンダリングしても表面がきれいになっていることがよくわかると思います。最後の1枚は先ほどのLEVORGです。サーフェスなのであとは分割して自由に弄れます(笑)

AIを利用する方にも役立ちそう

最近盛り上がっているAI。イラスト用途だけではなく、最近は3Dモデルもかなり色々作れるようになっています。生成AIで2D画像を作成して別の3D生成AIでモデル作成、というフローも非常に強力なようです。

とはいえ自分の欲しいものを全くその形にするのは当然難しいですし、CADをMCPで操作するAIの使い方もまだまだです。もちろんAIが作ってくれるのはメッシュなので、それをベースとしてこうやってリトポ、CADで利用できるようにして作りこむのにも役立つのではないかと思います。今後はこのリトポ自体をオートでやるAIもどんどんできてくるかもしれませんが、面の貼り方など自分で慣れていればこのソフトが無駄になることはないでしょう。

欠点は値段だけ!でもBlenderがタダなんだからいいのでは?

じゃあこのソフトの欠点はなんだ、と考えてみるとあまり思いつきません。これに頼るからBlenderのウデが上がらないとか努力しないとか・・・?現状は価格だけになると思います。ドルベースで正規のお値段が80ドルを超えるかなり高価なアドオンです。欠点は値段だけ、でも今は60ドルでハードル下がっていますしもともとBlenderのような超高機能で即戦力になるソフトが無料なのが本来異常なので、有用なツールを作ってくださる開発者の方に多少お金を払うのは全然「あり」じゃないかと思うんですよね・・・。

Fusionだって個人、非商用で無料なのが不思議なツールですし、逆に個人で商用利用しようと思ったらよっぽど副業として稼ぐ人でないとペイ出来ないお値段(1年で10万くらい)です。Blenderのアドオンに多少お金払っても良い気がしませんか?(笑)

価格以上の価値がある有料アドオンでした!

ということで、私個人としてはRetopoflowは、3Dスキャンデータの整形やCAD連携が行いたい3Dプリンターユーザーにとっては非常にコスパが高い価値あるアドオンだと思いました。リバースエンジニアリング用途には向かないと思いますが、手札の一つとしてあるととても強力なツールです。

今回メジャーバージョンアップがなされたので、これを購入しておけば無償アップデートの範囲内は使い放題になります。これからも末永くお世話になれると感じました。役立つツールでBlenderを楽しく使っていきましょう!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!