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3Dプリンター用の穴形状を簡単に作成! FreeCADのアドオン、FusedFilamentDesign紹介 Fastenersワークベンチとセットで使いやすい

3Dプリンターに優しい形状、比較的簡単に作れます。今回は積層と平行なねじ頭用のカウンターボアやねじ切作成用のリブ形状、穴の一部を鋭角に逃がす作業や結束バンド用の穴あけがワンタッチでできる、FreeCAD用のアドオンのご紹介です。3Dプリンターで印刷している方の日々の設計にかなり便利だと思います!!

はじめに これが自動で出来ます!!

まずは結論を見ていただきましょう、はい、こういう穴の形状を簡単に作るためのアドオンが今回ご紹介するFusedFilamentDesignになります。3Dプリンターで色々作っている方にはこれで十分興味を持っていただけるはず・・・!!前回ブログのポポポ師匠の教えnoteにもテクニックがありますが、これも同じ流れの中にあるモデリングテクニックですね。どの手法もメジャーではありますが、自動でぱっと作ってくれるのは強いです。

これはPart designワークベンチ内で使用可能な、今年リリースされた比較的新しいアドオン(FreeCAD内ではワークベンチのカテゴリ)である、FusedFilamentDesignです。元々Part DesignワークベンチはFreeCADの中でも比較的とっつきやすく、このワークベンチ内で設計が完結するものに関しては、FreeCAD Ver1.0以降かなり扱いやすくなったと私は考えています。当ブログだとこのあたりも参考にしていただければとてもうれしいです。もっと以前の入門編もありますよ。

今回はこのアドオンの使い方を通して、Part designワークベンチのおさらいを兼ね、穴のあけ方をやっていきましょう。これを機にちょっと便利さも知っていただき、FreeCADを始めるきっかけになれば嬉しいです。

ワークベンチのインストールについて

FreeCADを起動したら、上部のツールからアドオンマネージャを起動しましょう。ネットワーク接続を忘れずに。色々リストが出てきますが、右上の検索から今回のアドオン、FusedFilamentDesignを入力すると出てきますので、クリックしてインストールを選びます(画像ではインストール済み)。

ネジ等を含めたいときはFastenersワークベンチも同様に入れておくとよいでしょう。ワークベンチを入れると使う前に再起動するように言われますので再起動してください。

Part designワークベンチでボディを作成 穴は中心点のみスケッチ

なお、私が使用しているのはここにある比較的最近のWeeklyのDevバージョンです。まだ実験的な機能があったりしますので不具合が生じる可能性は常にあります。このバージョンですと、穴を開ける際、閉じたスケッチではなく、中心点を書くだけで穴を作ることが出来ます

まずFreeCADを起動し新規ファイルのパラメトリックパーツを選びます。これでPart designワークベンチからスタートできます。今回はココから離れることはありませんのでご安心を。そして、アイコンが並んだ右上に今回インストールしたFusedFilamentDesignがあることを確認しておいてください。

では、まず適当な直方体を作ります。スケッチで適当なサイズの長方形を作ってpadするだけです。作ったら下から見上げて下面に新たなスケッチを描きます。今回は長方形の中央、原点に点を一つ作りました。ここに3Dプリンターで下方向からネジ止めする穴を作る、という想定です。

FreeCADにおけるネジ用の穴のあけ方 結構簡単です

FreeCADでもFusionと同様に基本的なネジ穴はホールで開けます。スケッチで点を書いた状態で上部に並ぶアイコンからホールを押すとパラメーターが出てきます。機能的にも問題はなく、ちゃんと寸法指定のカウンターボア等のみならず、ネジ用の穴を一発で開けることが出来ます。意外とやるでしょ??

今回はうちにあるおそらくプリンター界隈でもよく使われている、M3の穴付きボルト用にしましょう。まずはなし、になっている標準のところをISO メートル標準に変更します。そうすると細かい変更が出来ますのでサイズをM3に、ヘッドをISO 4762にしましょう。穴の種類はクリアランス・パススルー、クリアランスは標準で良いんじゃないかと思います。

そうすると一発でカウンターボア付きのM3用ネジ穴があきました。この設定で、ボアを無しにしたり、ワッシャー付き用のボア穴を開けることも出来ます。また、穴の種類でスレッドを実際にモデル化することも出来ます。穴開け時にスレッドをモデル化する機能はFusionにもなかったと思うのでなかなか良いと思います。

底面側のカウンターボアの処理

では本題、3Dプリンターで印刷できるようのカウンターボアの処理をFusedFilamentDesignアドオンで行います。穴が開いた状態のボディが選択された状態で、先ほどのアイコンを押すと、アドオンのHole Wizardが出てきます。この一番上のものがカウンターボアのブリッジ作成です。これをすると、一発でこれが出来上がります!!これにより印刷時に両端がブリッジになり、サポートなしで穴の印刷が可能になるわけです。

左側の履歴を見ると、元々のHoleの下に新たにHole_BridesYとXが自動的に作成されたことがわかります。ちなみにこれも編集が可能なので、データタブで選ぶと例えばブリッジの角度を45度回転させる、等の事も出来ます。

この機能がないと、3Dプリンターではカウンターボアをサポート無しで作ることが出来ないのですが、手動でやるのって結構面倒なのでこうして一発で出来ると大変助かります。1つのスケッチに対して実行できるものなので、底面からのネジ穴は一気にスケッチして同時に穴を開けるのがおススメです。

ネジを直接打ち込める タップ用のリブ作成

では次にこのままもう一つ穴を開けましょう。今度は上面側に同じように点をスケッチしてホールを選択し、タップドリルにしてみます。やや細めの穴が出来ました。これはスケッチする方向が大事で、スケッチ点がネジの挿入部になります。

ここで先ほどのアドオンを同じように使用して、先ほどの一つ下、Thread Forming Ribsを選びます。これを押すと、穴の形状が変わります。これがタップ用のリブです。下から見ると元の穴より3か所狭まったちょっと複雑な穴が、ねじ刺入部からテーパー状に広がっています。

もうお分かりかと思いますが、ここにM3のネジを入れると、ちょうど子の膨らんだ部分がネジにがっちり噛んで、セルフタップのような感じでねじを挿入することができます。

インサートナットを入れることも多いとは思いますが、こうしてネジ穴を色々作れるのは非常に便利です。

今度は穴をタップドリルにしてみます

側面の穴の処理方法 角作成かブリッジかを選べる

では、次に側面の穴をあけましょう。積層方向なので円の始まりと終わりがブリッジになるのですが、そのままスライスすると結果として円の寸法がちょっと小さくなります。

ということで今回のアドオンです。同様に側面になる部分を選択してスケッチで点を書いて穴をあけます。今回もM3用ですが、ヘッドはなしのスルーホールにしてみます。今度はTeardropを選択します。角度が120度と90度の2つありますが、積層方向に処理するならオーバーハング的に90度が無難です。120度は主に水平方向の穴で、シーム位置を指定したいとき(シーム部の寸法誤差が大きくなることが問題な場合)に使用するみたいです。これで積層の角が作成できました。これで印刷時の穴径の縮小や不要なオーバーハングが防げます

また、Roof Bridgeを選択することで上部をブリッジにもできます。この場合はクリアランスとブリッジを作るオーバーハングの角度(60度か45度か)を選ぶと同様に加工が一瞬で出来ます。本当にすばらしい・・・!!

ちなみに、側面のカウンターボアに関してはTeardropでは形状が作成できませんでしたがブリッジなら問題なく作成できました。側面でもちゃんと機能するのは素晴らしいと思います。

結束バンド用のU字穴作成も可

もう一つ役立ち機能が、結束バンド固定用のU字穴あけです。スケッチ点を中心に溝を作ってくれます。作りたい点をスケッチで描いて、アドオンの中のzip tie channelsを選択するとダイアログが出てきます。幅等大きさを指定すると穴が作られます。

同時に履歴を見るとsetting用の{}こういうアイコンのものがあります。ここで角度や幅を後から変更することもできます。結束バンドの溝、便利ですよね!!

実際に印刷してみるとこんな感じ。結束バンドは今回の設定だと曲がりがきつくてあらかじめ癖をつける必要がありましたがちゃんと通りました。また、ねじ径もすべての部分で問題なく、タップ部分の強度も十分です。全周が細いわけではなくメリハリがある形状で強度も問題なさそうでした。

カウンターボアの部分もねじの飛び出しなどなく、非常にきれいで本当に素晴らしいです。また、今後も機能の追加が計画されているとのことで楽しみしかありませんね・・・!!

Fasteners workbenchと一緒につかっていけそう

今回はこのアドオン紹介と同時にFasteners workbenchも使ってみましょう。これはねじそのものを作成したり、アセンブリ等でも便利なワークベンチです。任意のネジ形状やインサートナットをモデルに追加することができます。

便利に使うには設定を行っておいたほうがいいと思います。一度でもFasteners workbenchを有効にすると、編集の設定内にFasteners の設定が出現します。私はスクショのようにセパレート型にして、スレッド作成は3Dプリンターコンパチブル設定にしました。下部にスケーリングとオフセット設定がありこれを変えることでプリンター固有の条件にもマッチできます。数字は私は変更していません。

また、私は基本ISO規格しか使いませんのでそれ以外はツールバーに表示されないようにしています。(それでも上のスクショのようにかなりの量があります)

あとは穴の円をクリックしてから使いたいねじを選ぶとねじが挿入されます。この際、ねじを挿入する前にあらかじめ選択した円に対してねじ径を指定することができます。スルーホール用のネジを入れるか、タップ用のネジを入れるか、という選択です。今回はホール用にして、6角キャップボルトを入れてみました。

するとそこにスクリューがこのような形で一発で入ります。データタブを用いて長さの変更もできますし、オフセット等も可能です。一般的に使用するなっとやワッシャー、インサートナットも用意されていて素晴らしいです。下の写真ではオフセットして、スレッドにチェックを入れています。こうするとねじのモデル化が可能です。このモデルは設定で行ったプリンター用のモデルになります。これでナットとねじを作れれば理論上はちゃんと締まるはず・・・試していませんが。

便利になってきていることが実感できるFreeCAD 今後も期待!

というわけで今回は3Dプリンター用のアドオンの紹介でしたが、いや、本当にすごくないですか?個人的にはかなり衝撃でした。こういう素晴らしいアドオンを、しかも無償で使えるなんてすごいですよね・・・。Fastnersも寸法や干渉などのミスを防ぐためにもかなり使い勝手がいいのではないかと思いました。

個人的にはこういう機能から、FreeCAD試してみようかな、という形で仲間が増えると嬉しいです。Fusion以外で無償で使えるCAD、一つ手の内にあるといいのではないでしょうか??入門編から、お越しをお待ちしています。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!