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CAD操作の統一が可能 SpaceMouse Pro Wireless レビュー アプリやシーンごとに異なる操作が可能なソフトウエアを含め素晴らしい

・・・機材提供を受けたから、とか関係なくほんとすごいですねコレ。ハードとしてだけでなくCADソフトと連携したソフトウエアを含め高いだけの価値があり間違いなく良いものです。CADソフトを頻用される方や、FreeCADへの移行を考えている方にも操作感の違いを埋めるデバイスとして有力だと思いました。

はじめに

今回は3DConnexionさんにお話をいただき、SpaceMouseシリーズの中で無線対応かつ多機能なSpaceMouse Pro Wireless BLUETOOTH EDITIONの機材提供を受けてこのブログを書いています。この場を借りて御礼申し上げます。

当ブログは基本的に私が使ってお勧めできるものしか記事にしないのでほとんどは自腹購入です。長く続けているせいかお陰様でたまにこういうお話を頂けるようになりありがたい限りである一方、忖度がないよう私自身も注意をしています。当ブログでは基本的なスタンスとして、私が興味を持った案件のみかつ機材の提供に限定してお受けし、実際にある程度の期間使い倒して、良い点のみならず改善点や課題も含めて正直にレビューすることを条件にさせていただいています。他の記事と同様、安心して読んでいただければ嬉しいです。ただ、今回については基本べた褒めになります。

最初に結論 素晴らしく良くできている

はじめに、からいきなりこの結論で申し訳ないのですが、めちゃくちゃ良く出来ています。機材提供だろうが何だろうが良いものは良いのです。これは仕方ない。下に描いているような課題や改善してほしい点もあるので担当の方にはフィードバックしていますが、少なくともCADソフト(私の場合はFusionとFreeCAD)をお使い方には間違いなく役立つデバイスです。

当ブログでは以前、自分で作る3Dマウスとしてarduinoを使ったORBION Space Mouseについての記事を書いています。作るのもすごく楽しかったですし、今年に入ってから落っことして壊したもののそれまでちゃんと使えていました。ただ、回転と拡大縮小がメインだったのであくまで補助デバイスであり、なくなってもさほど困らなかったんです。

今回のSpaceMouseはまだ使って1か月ちょっとですがもうないと困るデバイスになってしまいました。確かに私も興味はずっとあってそのうち買いたい機材リスト入りしてはいたけれど買っていなかった、高価な機材です。コンパクトな3Dマウス機能中心のものでも2万円台、今回のものは5万くらいします。3Dプリンターが買えちゃうんですよね・・・。

ただ当ブログで最近記事が多いFreeCADとFusionの操作感を近づけられて、一般的な設計でFusionの商用利用を避けられるなら、半年で元が取れるとも言えます。作業効率や短縮される時間を考えると費用対効果は高いので検討の価値は十二分にありそうかなと。では最後までよろしくお願いいたします。

SpaceMouseの歴史 始まりはドイツ、宇宙開発から

ブログを書くにあたって今回色々調べましたが、この3Dマウスの歴史は宇宙開発からスタートしているようです。技術の大本はドイツ航空宇宙研究機関(DLR)が開発したもので、最初のものは1980年代の「Dimension 6 / Geoball」というものです。同じものかはわかりませんがこれが船外アームを操作するための技術として1993年にスペースシャトルに載ったと書かれていました。一般向けにはLogiCad3Dという会社がMagellan(マゼラン)として製造しており、Logitech(Logicool)と共同販売されています(のちに吸収合併)。3DConnexion(現在はこちらもLogitechの子会社とのこと)も同年に設立されており、最後はこの製品がSpaceMouse classicとして販売されていたようです。意外と歴史が長いですね・・・!

ちょっとびっくりしたのはこの製品、最終のサポートは2006年までやってたことです。すごい長寿だ・・・。宇宙開発から入ったからSpaceMouseなのかな。。

外観とハード面の仕様

さて、この3Dマウスの核は6自由度です。6自由度とは、XYZ方向の移動とそれぞれを軸とした回転(傾き、ひねり)が可能ということで、3Dモデルの任意方向へのパン、シフト、ズーム、回転といったすべての作業が同時に行えます。3次元空間を自由に動ける感じですね。この6軸の検出には6個の光学センサーが使用されているとのことです。実際の可動範囲自体はそれほど大きくないのですが、非常になめらかです。外観はこんな感じ。箱も高級感ありますし、中身はパームレスト付きでボタン数も多いです。全体に大柄なつくりではあり、日本人の手だともう少しコンパクトでもいい気はします。

また、以前のバージョンだとマウス部分等がPUのような経年劣化で加水分解する問題があったようですが現行バージョンはさらっとマットな樹脂製で、加水分解の問題は消失していると思われます。プログラマブルボタンは全部で15個。Ctrl/Alt/Shift/Escといった修飾キーや、視点切り替えを素早く行うQuickViewボタンが含まれていますが、これも含めてカスタマイズが可能です。

メーカーのリンクとともにAmazonのリンクも貼っておきますのでもしよかったらこちらもどうぞ。この商品写真はBlutooth エディションのものではないのですが、商品説明と型番はあっているので大丈夫なはずです。公式もこの記載になっており写真を変更していないみたいですね。

接続はUSB-Cによる有線もしくは付属レシーバーもしくはBluetoothです。有線でも接続できるのは素晴らしいのですが、無線運用ではやや注意が必要となります。下記の課題がそれになります。

ワイヤレスの利便性と限界

ワイヤレスで使えるということは持ち運びが想定されている、ということで?本体には手触りのよいケースがセットになっています。まあ実際は本体が約550gと高機能な分重さがありますので持ち運びは手間にはなるサイズ感です。ただこのサイズ感のおかげで安定して使用できるという点もありバランスは悪くないです。

一方で、メインとサブでPCがあったり仕事で別の場所で使う等の場合に問題となるのが無線接続での問題です。SpaceMouse Pro Wirelessは、2.4GHz無線(USBレシーバー)とBluetooth Low Energyの2種類のワイヤレス接続に対応していて、バッテリー持続時間も非常に長いため置き場所やスタイルに関係なく使用できるのが美点なのですが、少なくとも現状ではBluetoothでのペアリングがマルチペアリングに対応しておらず、無線で扱えるのは1台に限定されます。またせっかくユニバーサルレシーバーが付属していますが、この場合はレシーバーとペアリングをすることになりBluetoothと併用もできません。無線で扱えるのが1台のみなのが残念で、Bletooth対応のメリットを活かせていません。この点はメーカーにフィードバックさせていただいています。

CAD間操作の統一を可能とするソフトウエアがすごい

SpaceMouse Pro Wirelessの大きな強みの一つは、複数のCADソフトウェアで操作感を統一できる点です。これはAPI連携により実現されているとのことでした。これによりFusion 360や私が使用しているFreeCADを含めた多くのソフトで統一した操作感を実現しています。ソフトウエアの「3DxWare 10」を常駐させておくことでウインドウが切り替わればそのソフトの操作が何も考えずに行えるようになっています。

ちなみに視点移動は各々やりやすい方向があると思いますし、すべてカスタマイズが可能です。

さらには、ソフトウエア内でも、ソリッドモデリングのショートカットとスケッチのショートカットなど、シーンごとに異なるパイメニュー(Radial Menus)を作成できる点が本当にすごいです。

パイメニューは4つ、もしくは8つの操作を割り当て出来て、操作を検索して登録すればアイコンアプリのものがそのまま使われます。もちろん一般的なキーボードのショートカットなども割り当てが可能です。自分の使いやすいパイメニューをどんどん作ってカスタマイズしていくと、もう元には戻れない快適性が手に入ります(笑)こうしたソフトウエアの作りこみも含め、完成度が高いと感じました。あまり使用しませんがスクロールなどChromeとかもできますし、もちろんスライサー(PrusaslicerやBambu,Orcaなど)も対応しています。大手ならではの万能感がすごい。

注意点としてはこのカスタマイズは本体側には保存されず、ソフトウエアに保存されるため、他のPCで使用する際には適用できません。私はWindowsなので、デスクトップ(Onedriveに常にバックアップされる)に設定を保存し、別PCではそれをインポートする方式にしました。以前のHHKB Studioのように本体側に保存されるとより便利だと思いますが、後から実装不可能なので今後に期待でしょうか。HHKB studioも入力デバイスとして素晴らしいのでよかったらこちらもぜひごらんください。

FusionとFreeCADにおける私の設定 もうこれなしでは・・・

参考までになりますが、私の現在の主要な設定(ソリッドとスケッチ)を出しておきます。基本はメニューキーとfitキーをDeleteとEnterに、また、ALTキーはtabキーに変更しています。

まずはFusion。ソリッドでのパイメニューはこんな感じ。作る系を1に、修飾系を2に、分割とかブーリアン他頻度高いのを3に、基準面よく使うのを4です。オフセット平面はかぶってますね(笑)。

スケッチはこんな感じです。プロジェクトや直線系を1に、曲線系を2に、拘束を頻度多い順に並べています。寸法は3,4でかぶってますね。4はオフセットや移動も入れてあります。

この設定にたどり着くまでいろいろやってみましたが、日常使いではかなりの部分をカバーできていると感じます。では次はFreeCAD。Ver1.1devです。API連携のおかげでVer1.1で搭載された新機能もそのままのアイコンで使用できます。すごい!!こちらも併せてPart Designワークベンチから。

機能が違うので完全ではありませんがなるべく上のFusionのものに近づけてあるのがわかると思います。作る系を1、修飾系を2、配置や移動、ブーリアンを3、基準作成を4としています。

スケッチも同様です。Ver1.1からのプロジェクションを含む直線系を1、曲線系を2、拘束は3、その他修飾系を4にしています。おおむね2つのCAD間で混乱しにくくなっているのが伝われば幸いです。

もちろん視点移動などの操作も基本同一になっています。FreeCADだとCurvesワークベンチのパイメニューなんかも作ると便利です。(使用するなら)こっちになれるともう、元の生活に戻れなくなります。例えば今作ってみているこの車。メッシュの上にCurve on meshであたりの線を引いて、それを元にCurvesワークベンチ等を使って車のボディを作ってみています。

FreeCADブログをお読みいただいている方には伝わると思うのですが、結構(かなり)大変なんですよ、これ。
これをやってみようと思ったのはこのSpacemouseがあったからです。単純に強すぎる。・・・今回の記事はPR案件ではあるんですよ、でもいいものはいいんです。そしておそらく競合もほとんどないと思います。もっと低価格で競合できるものに心当たりがあったら教えてほしいです。

Blenderでは難あり パイメニュー階層化を希望したい

一方、Blenderでの利用はちょっと限定的かもしれません。具体的には液タブとかあってスカルプトするにはすごく良いと思う(視点変更は他のソフトと同様に行えます)のですが、なにせBlenderはショートカットが多いです。また、たとえばBlenderだと、例えばGを押して移動、その後にX、Y、Zを押して移動軸を固定したりしますよね。これが出来ないんですよ。やるならパイメニューには移動や拡大縮小などといった基本コマンドを入れておいて視点固定のボタンとかにXYZを入れておくことになるかなぁと思うのですが、使いにくいです。

結局キーボードを行ったり来たりするのでBlenderメインならボタン少なく小型軽量のSpacemouseが良いんじゃないかなと思います。

Plasticityがどうなのか、ちょっと気になりますね・・・Blenderと似たスタイルなので適応させるのは難しそうですが。

考慮すべきは価格だけ

結論は最初に書いてしまったのでもう書くことはないのですが、モノはもう確かなので考慮すべきは価格だけになります。価格がニーズにあう、もしくはその価値を感じるなら買うと幸せになれます。例え私が自腹購入していたとしてもこのブログの内容はそう変わらないと思います。

視点移動主体であればシンプルで扱いやすい小型のものを、CADソフトでグリグリ使うなら本品かなと。Enterpriseは使用していませんが本品のさらに発展形なので、プロフェッショナルの持ち運ばない職場用でしょうか・・・?

一方、Bluetooth接続のマルチペアリング問題とパイメニュー階層化はもし可能なら実現してほしいなぁ。完成されている分、息の長い製品群だと思いますしソフトウエア面での進歩には期待したいですね。なおこの製品、保証は3年です。これからももちろん使うので、私のブログやXにもちょくちょく登場してもらおうと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!